全固体電池の開発で、人と環境に優しい未来へ

電池に不可欠とされる電解質には現在液体物質が用いられており、これは固体物質よりも電気を通しやすい働きがあります。このため、液漏れや発火などの危険がありました。固体であっても電気を通しやすくする物質を開発することで、すべて固体の物質でできた安全な電池の開発が可能に!今回、そんな「夢の電池」と呼ばれる全固体電池の研究で有名な、大学院工学研究科応用化学分野の林晃敏准教授にインタビューさせて頂きました!

IMG_0028-300x200

 

 

◆林 晃敏 准教授

大学院工学研究科 物質・化学系専攻 応用化学分野

 

―研究について、わかりやすく説明してください

蓄電池の全固体化を目指した研究を行っています。
一般に乾電池と呼ばれる電池は「乾」という字を使ってはいますが、中には電解液と呼ばれる液体が入っており、すべてが固体ではありません。そのため液漏れが起こり腐食する事があります。また、最近注目されている充電可能電池の一つにリチウムイオン電池があります。主に携帯電話やパソコンに用いられていますが、電気自動車用となると大きなエネルギーが必要となるため多量の電池を使用することになります。このリチウムイオン電池は、可燃性の有機溶媒を使用しているため、自動車で用いる場合は事故時に大きな危険が伴います。一方で、再生可能エネルギーが注目され、家庭用蓄電池の需要も増えるなど、安全で環境にも優しい蓄電池開発の必要性は、年々高まっています。そこで、危険を伴う液体を難燃性の固体の無機物質で代用するために、様々な物質を合成し、電気が流れやすくなる性質や構造について日々研究しています。

IMG_0045-300x193


―さらに、どのように研究を発展させたいですか?

蓄電池技術は実は日本発なのですが、例えばリチウムイオン電池の世界における日本メーカーのシェアは残念ながら首位から転落してしまいました。全固体電池の実用化に向けて研究をさらに発展させ、日本のお家芸でもある蓄電池を世界で花咲かせるようにしたいですね!また、「ナトリウム電池」の研究は古くから行われてきましたが、1990年代にリチウムイオン電池が開発され、研究頻度が減りました。リチウムはとても希少な原料ですが、ナトリウムは資源に乏しい日本でも手に入れることができる豊富な資源ですので、この研究を日本で行う意味は十分にあります。私達の研究室でも細々と続けていた基礎研究を応用研究として発展させ、先日「全固体ナトリウム蓄電池」の室温作動に世界で初めて成功しました。基礎研究の段階では自分の研究の位置が見えなくても、時がたてばいつか見える日が来る。世界の科学者や学生の一人一人が日々頑張っている研究は、小さなことでもきっといつか実を結ぶ種であるはずです。私も、ナトリウム電池の研究をさらに応用し、人の役に立つ研究を行っていきたいです。


【インタビューを終えて】

研究が世界的に有名であるのはもちろんですが、温かく見守ってくれる先生がいることは、学生にとってとても幸せですね。たくさんの人に励みになるようなメッセージもいただき、ありがとうございました。これからも先生の更なる活躍に期待です!

 

IMG_0023-150x150
【取材:雨堤 彩 (MICHITAKERs/大学院工学研究科  修士2年)】
【取材日:2013年9月】 ※所属・学年は取材当時