大阪府立大学で日夜進められている様々な研究を世の中にお届けしたい!
その研究がどのように世の中に役立っていくのかを出来る限り分かりやすく伝えたい!
現在広報課では、そういった想いで大学内に点在するさまざまな研究ニュースを取材しています。

今回お届けするのは、工学研究科マテリアル工学分野。こちらでは金属、セラミックスなどの材料に関する様々な研究が行われています。

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先日、この分野の研究室と東大阪・石切にあるシャフト棒などを製造販売する金属加工メーカー「木ノ本伸線」さんが共同して、次世代をより良くする可能性に満ちた、世界初の画期的なワイヤーを開発しました。

それがこちら。「難燃性マグネシウム合金製MIG溶接ワイヤー」です。

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このワイヤーがどのように次世代をより良くしていくのか?
研究に関わった、工学研究科の瀧川 順庸(よりのぶ)准教授に伺ってみました。

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<瀧川先生>
輸送分野の世界では次世代に向け、鉄道や自動車などの車輌のさらなる軽量化が一つの目標となっています。
「車体が軽くなること」は走行速度を上げたり、その際の周りへの影響を軽くすることにつながります。

車輌を軽くするために、素材の金属を軽くて硬いマグネシウム合金に変えることが注目されています。
本来マグネシウムは、軽いのですが加工しづらくかつ燃えやすく、車輌素材などにはなかなか使えなかったのですが、ここ30年ほどの研究成果で、加工しやすく燃えにくいマグネシウム合金を作れるようになってきました。

しかし、ひとつ大きな課題がありました。
実はそのマグネシウムの金属板を、生産効率よく溶接できる金属材料や溶接法がまだ無かったのです。

そこで、府大と木ノ本伸線さんとで共同研究を進めて、今回開発したのがこのワイヤーです。
この素材を使い、要はマグネシウムでマグネシウムを溶接することで、最も生産的に軽量素材が作れます。
MIGというのは溶接方法の種類で、その方法用の材料ということです。

実際に、現在アルミニウムで製造している新幹線車輌をマグネシウム製に変更をしていこうという国のプロジェクトも進んでおり、我々もこのプロジェクトに参加し、研究を進めております。

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主として研究に関わった瀧川先生に、研究の内容をお聞きしました。

この世界初の線材の開発にあたっては、経済産業省の「サポイン事業(サポーティング・インダストリー、「戦略的基盤技術高度化支援事業」の略称)」として採択され、2007年より、木ノ本伸線さんと共に研究を進めてきたそうです。
府大も組織的に対応し、URAセンター(※)や産業界での経験を持って府大に採用されている産学官連携コーディネーターたちがプロジェクト支援を行いながら、「ものづくり中小企業後継者育成プログラム」の一つとして進められていきました。

<URA(リサーチ・アドミニストレーション)センター>(※)
産学連携機能の強化を目指し、複合・融合型の研究プログラムの戦略や企画を推進するとともに、研究者個々人の支援強化、負担軽減等を目的として地域連携研究機構内に設置されています。
http://www.iao.osakafu-u.ac.jp/urahp/

<参考リンク>
ものづくり中小企業後継者育成プログラム
http://www.i-portal-yao.jp/photo/News/File1/20141010141559.pdf

この技術が世の中に広まっていけば、今300km/hくらいで走れる新幹線がもっともっと早く走れるようになるかもしれない。まさに次世代を創る研究・開発だなと思いました。

最後に、研究や開発に関わってきたみなさんから、エピソードや開発段階で苦労した事などをお伺いしました!

◆工学研究科瀧川 順庸 准教授
-組み合わせや仮説は無限。難しいけど奥深い分野。-
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◆博士前期課程1年 松下遼さん
-実際に試験をしてみて分かるという事の難しさ-
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◆木ノ本伸線株式会社 木ノ本 裕 社長
-大阪の企業の、たくさんの「きっかけづくり」を-
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それでは、次回の府大研究レポート、どうぞお楽しみに!

【取材:皆藤 昌利(広報課)】
【取材日:2014年12月12日】