人間社会学研究科 村田右富実(みぎふみ)先生のお部屋に広報部長・今井理事が訪問。万葉集に関する書籍の執筆・監修も行い、毎回多くの参加者が集まる人気講座「万葉の道を歩く」の講師としても活躍されている先生に、ご自身の研究などについてお話を伺いました。

 

IMG_3420-e1430981391628-300x292 ■村田右富実教授

人間社会学研究科 言語文化専攻 日本言語文化分野

地域連携研究機構 地域文化学研究センター長

 

 

 

―先生の「右富実」という珍しいお名前について、由来を教えてください。―

両親が「二十四の瞳」の著者「壺井栄」のファンで、壺井栄が親代わりとなって育てた甥の「右文」にちなんで名付けられました。父が市役所に氏名を届け出たときに何故か漢字が「右富実」に変わったそうです。

 

―先生の専門である日本上代文学について、具体的にはどのような研究なのでしょうか。― 

この時代は初めて日本語が「書ける」ようになった時代。「話す」という形で存在していた日本語を、初めて文字として「書く」ようになりました。文字 を覚えると、思考の方法やあらゆるものが変わります。その時代に、何がどう変わったのかが面白いところです。大宝律令によって「日本」という国家の概念が 出来たのも、この頃(701年)です。

 

―その研究の難しいところ、志したきっかけなどを教えてください。―

資料に限りがあるため、周辺諸学との交わりが深く、そこが難しいところです。文学を研究していると思われていますが、僕の場合、全体の1/3が文学、1/3が語学、残りの1/6ずつが考古学と日本史といった感じです。

この分野を研究しようと思ったのは、今となってはおかしな話ですが、恩師に反抗したかったからです。それまで先生にはたてつくものだと思っていたの に、「僕の説を疑うところからから始めなさい」とお話しなさり、こりゃどうしたものかと考えてしまいました。そして、論文を読んでも全然たちうちできず、 悔しかったことを覚えています。

 

○IMG_3441-300x200―最近はどのような研究に取り組んでいますか。― 

現在は共同研究として統計学に取り組んでいます。短歌の最初の1音に多い音は何か、2音目に多い音は何か、音の分布を調べ、どのような響きがわれわ れの心の琴線に触れそうかということを研究しています。この研究で統計学を取り入れているのは僕ぐらいかもしれません。文理融合の研究なので、学会発表の 時などは難しいところがあります。

 

 

ー先生が監修なさった『よみたい万葉集』(※)が2月に発売されました。美しい装丁・わかりやすい解説で女性の心をぐっと掴む内容ですが、反響や苦労された点、裏話はありますか。―

この本は、若い女性をターゲットにして作成しました。近年軽視されがちな文系基礎学ですが、非常に重要な学問です。若い方々に読んで頂いて、やがて子供たちに伝えてもらえると嬉しいなと。

完成まで1年を越える期間、約1ヶ月に1回ペースで4時間くらいの打ち合わせを続けました。終盤はスケジュールが押してきて、飛行機の中で校正することもありました。

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ー「よみたい万葉集」で先生の助手を務めた人間社会学研究科の阪上望さんにもお話を聞きました。最初にこの本の著者3名と出版社の方が来られたときに、研究室に居合わせたのがきっかけで、書類のコピーから文章のチェックまで先生と二人三脚で取り組んだそうです。ー

編集作業に係わることで、一般の方が万葉集のどこに興味があるのかなどを、知ることが出来て勉強になりました。普段は万葉集の発話表現を専門にして います。例えば「言ふ」「語る」「問ふ」「のる(名乗る)」「つぐ(告げる)」という言葉がどのように万葉集で使われているかを研究しています。万葉集は すべて漢字で書かれていますから、読み方がわからなかったり、読み方が安定していなかったりする箇所があります。万葉集の発話表現を研究することで、発話 表現に関する部分の読み方が安定し、時には歌全体の解釈まで変わることがあります。

 

―先生は「万葉の道を歩く」を主催する大阪府立大学の地域貢献組織、地域文化学研究センター長も務められていますが、講座の今後の展開について教えてください。―

多いときでは300名の方に参加いただいている講座なので、今後も続けていく予定です。回収したアンケートを解析し、戦略的に分析するなどして、講座の充実に努めています。

 

「学生への指導はとても厳しいですよ」と仰っていた村田先生ですが、わかりやすく答えいただきありがとうございました。先生のお話が聞ける次回の「万葉の道を歩く」は2015年7月25日(土)に開催されます。詳細は今後の大学Webサイトをご確認ください。

【取材:玉城 舞 (広報課)】
【取材日:2015年4月24日】

<※書籍詳細情報>

「よみたい万葉集」(西日本出版社) 2015年2月発行

監修  村田右富実
助手  阪上望(本学院生)
絵・文 まつしたゆうり
文   松岡文・森花絵