2/11、大阪市内の西梅田にて、全学同窓会「校友会」と経済学部同窓会「陵友会」の合同講演会が行われ、本学工学部1969年ご卒業、島津製作所の中本 晃社長が講師を務められました。
「140年にわたる『科学技術で社会貢献する』を目指した事業活動」をテーマに、今年で創業140年を迎える島津製作所の歴史や、事業の捉え方、技術投資、人材育成など、とても濃厚なお話をいただきました。

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普段なかなかお目にかかれない偉大な先輩のお話を直接伺えるこの機会に、同窓会取材レポートを兼ねましてミチテイク取材班&工学部後輩でもある松 田・長野が参加しました。本日は中本先輩のお言葉をお借りし、ご講演の中で特に印象に残ったお話を中心にご紹介させて頂きたいと思います。

<OBプロフィール>
◆中本 晃(なかもと あきら)
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株式会社島津製作所 代表取締役社長

1969年(昭44年)大阪府立大学工学部を卒業後、島津製作所入社。品質保証部長、分析機器事業部長などを経て2001年取締役。2009年から現職。在学時は柔道部に所属、鳥取県出身。

 

<講演録>
140年にわたる「科学技術で社会貢献する」を目指した事業活動

○ベンチャー企業だった島津製作所
企業は長く存続して、社会に役に立つことをして貢献し続けることを目的にしていると思います。
弊社・島津製作所は、140年前に「学理(学問上の理論や原理)は実地に応用することができて、初めて価値がある(実地への応用こそが社会貢献、社会に役立つのだ)」という信念を胸に理化学器械の製造を始めたベンチャー企業でした。

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○京都に集積する長寿企業も初めはベンチャー
いわゆる長寿企業(100年以上続いている企業)というのは日本でも数が限られていますが、その中でも製造業の割合が高く、特に京都に多い。私自身も、確 かに京都の製造業には長寿企業が多いと感じています。例えばイシダさん、SCREENさん「旧:大日本スクリーン製造」、宝ホールディングスさん、任天堂 さんなどが挙げられます。
では、なぜそれは京都に多いのでしょうか?理由は大きく分けて3つあると私は分析しています。
1)他人と違う領域で生き残る、ニッチな市場で勝負しオンリーワンを目指す
2)伝統の上に、新しいものをどん欲に取り入れ、チャレンジする風土、新分野に挑戦するベンチャー精神がある
3)大学、研究機関、企業が狭い地域に集積している

当社を初めとする京都の長寿企業の多くは今でこそ大規模にビジネスを展開していますが、みな初めはベンチャー企業でした。そしてその精神は今でも受け継がれていると感じます。

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○「技術の島津」を目指して
当社は技術開発において、独創性とユニークな発想を大切にしています。当社は過去にある選択をしました。市場規模が大きい汎用品や大量生産品の開発・生産 には向かわず、市場規模は小さくても、その市場で存在価値の高い企業になるという思いで、リソースを先端技術やオンリーワン製品の開発に振り向け、「技術 の島津」というブランドを確立できるように努力してきました。

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○レントゲンの撮影に初めて成功
創業者の島津源蔵は元々仏具の職人でした。しかし明治維新とその後の京都での教育の充実、産業の近代化への大きな動きを目の当たりにし、日本は科学立国を目指すしかない、これからは科学技術の時代と感じて、一大決心をして、教育用理化学器械の製造に乗り出しました。
舎密局(現在でいう理化学研究所のようなものでしょうか)の近くに居(仕事場)を構え、毎日のように通っていたそうです。これが当社の起源です。1895 年11月にレントゲン博士がX線を発見してからわずか11カ月後に二代目島津源蔵が村岡教授(三高)と共同でX線写真の撮影に成功したことは、当時の情報 が船便で伝わったことを考えると大変なスピードでX線撮影に成功したといえます。

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○革新的技術を生みだしていくために重要なこと
2代目島津源蔵は鉛蓄電池において、「亜酸化鉛製造法」という全く新しい製造法を発明し、高性能の鉛蓄電池の大量生産ができるようにし、会社をさらに飛躍 させました。この2代目の「亜酸化鉛大量製造法の発明」と、2002年(平成14年)にノーベル化学賞を受賞した田中耕一シニアフェローの「ソフトレー ザー脱離イオン化法の発明」この両者には共通点がありました。
1)好奇心が人並み外れて強い
2)あきらめない(工夫の限りを尽くす)
3)すぐれた観察眼(見逃さない)
あきらめない心、優れた観察眼はどうやったら身につくのか?それは研究、開発など仕事について、強い興味を持ち続けることだと思います。

 

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<参加した学生の感想>
現代システム科学域 知識情報システム学類3年 関口 優子
中本社長のお話を聞くことができ、大変有意義な時間となりました。京都にはオンリーワンの商品を作っている長寿企業が多いということで、長寿の秘訣には土地柄も関係あるということを初めて知り、大変興味深かったです。ありがとうございました。

現代システム科学域 マネジメント学類3年 西村 直人
社内での社員のモチベーションの高め方や会社に対するコミットメントの高め方を島津製作所の取り組みの中から学ぶことができました。 またOBの方々とも様々なお話しをさせていただいたことで私自身の職業観に関しての視野が広がったように思えます。 このような貴重な機会をいただいたことを心から感謝しております。

 

 

以上、講演録と参加した学生からの声をご紹介しました。
「校友会」は主に、卒業生と入会している現役生を対象としている事から、この講演会には現役の学生も多数参加していました。中本社長の後輩でもある工学系 の学生や、経済学部にルーツを持つ、現代システム科学域マネジメント学類の学生が多く、科学技術を探求するその姿勢やリーダー論のくだりでは、特に熱心に メモをとる姿が見受けられました。

中本先輩、お忙しい中貴重な機会を作っていただきまして本当にありがとうございました!

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【取材:
松田 景太(MICHITAKERs/大学院工学研究科 物質・化学系専攻 博士前期課程 1年)
長野 将吾(MICHITAKERs/工学部機械工学科4年)

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【取材日:2015年2月11日】
※所属・学年は取材当時