本日はミチテイク・プラスのOB取材として、音楽のメジャーシーンで活躍する経済学部の先輩 PAKshinさんにお時間を頂きました。PAKshinさんはカルメラというインストゥルメンタル・ジャズバンドで活動されているプロミュージシャンで、keyboardを担当されています。
カルメラ official website

この日は、学生広報誌「ミチテイク」メンバーになりたての府大1年生 西 茜さんと、PAKshinさん直々の後輩にあたる軽音楽部の久保さん、山下さん、竹迫さんとともに、府大時代の話、音楽の話、学びに対するお話などなど、たくさんのお話をお伺いしました。
(取材場所:I-siteなんば まちライブラリー@大阪府立大学)

◆PAKshin(パクシン)

SONY DSC【プロフィール】
1988年生まれ、大阪府立大学経済学部経営学科2010年卒業。軽音楽部に所属し、担当はkeyboardで作詞作曲もこなす。在学中より関西の音楽シーンで活躍し、2005年よりカルメラに参加。この日の取材時のBGMはカルメラ2ndアルバム「KNACK IS THE KETCHUP」♪

<府大入学&在学中の思い出 編>

1.受験の際、なぜ府大を選ばれましたか?

実はもともと府大が第一志望だったわけではなく、別の国立大学を目指して勉強していたんですけど、運悪くセンター試験の前々日くらいに39度の熱が出てしまいまして。追試も意識したんですけど、センター試験の傾向が変わって「追試は難しくなる」と言われていた年でもあって、周りからは何とか行けるんやったら本試を受けたほうが良いと言われてました。そんなわけでセンター当日の朝、37.5度くらいまで熱は下がったので本試を受けたんですけど、なんとめちゃくちゃミスってしまって。第一志望は絶望的でしたが府大には合格できました。浪人しようかとも思ったんですけど、それこそ音楽など、大学生になってやりたいことはたくさんありましたし、将来のビジョンはきっといろいろ変わっていくはずだから第一志望に固執しなくてもいいかなと思えて、「府大に入って府大でできることをやろう」と思って入学を決めました。

2.軽音楽部での一番の思い出を教えてください

「あんなこともあったな」「こんなこともあったな」ってたくさん溢れてくるんですけど、「何が一番か」というとけっこう難しくって。やっぱり、あの中百舌鳥のキャンパスで過ごした4年間そのものが一番の思い出かなと思います。
軽音って人数も多く、やりたい音楽に合わせてその時々で仲間が変わって活動するシステムだったので、その1つ1つにドラマがあって。時々で大きな行事もあったし、練習、合宿、飲み会、喧嘩…、それぞれが大切な思い出です。卒業してしばらく経って感じられた事なんですけど、それらのトータルが一番の思い出 だったと思います。

3.府大で過ごした学生生活で、印象に残っていることを教えてください

SONY DSC

しょっぱなの経験としてすごく印象に残っていることは「大学の講義」そのものです。入ったところが経済学部経営学科だったので、「さあ、経営の勉強が始まる」と 思って夢を持って教室に入ったんですが、その一発目の講義の担当教授の声がめちゃくちゃ小さくて(笑)いま考えると高度ですごく実のある内容だったとは思うんですけど、小さな声で専門書をひたすら読んでいて、90分講義は長く感じるし、すごく眠くなるし。これまで5教科中心を、しかも暗記中心で勉強してき た新1年生とってはそのギャップに「すごいな!」と思いまして、その時の衝撃は今でも忘れません。
また、府大は「良い意味で大きくもあり、小さくもある」大学だなと思っています。在学中はなかなかの劣等生で、授業とうまくお付き合いできない苦悩の時期もあったんですけど、府大はいろんな専攻やタイプの学生がいる一方で、距離がとても近い。そういう意味で良い意味で大きく、良い意味で小さな素敵な大学だと思っています。特に自分がいた経済学部はそうでした。
「府大にいる」おかげで、いろんな考え方の人と話す機会があって、心配してくれる人もいたりして、僕にとってすごく貴重な場所になっていました。みんなで助け合いながら過ごした日々がとても印象に残っています。

4.学内で好きだった場所ってありますか?

軽音楽部的にテッパンの場所で「木の下」っていう場所があって。B1棟と学生会館の間のでかいクスノキ、その下にあるベンチが軽音楽部のたまり場でした。時間がちょっと空いてとりあえずその前を通れば誰かは部員がいたり、電話して「とりあえず木の下行くわー」みたいな感じでゆるやかに集まったり。集まったら長い、そこでご飯も食べる、そして気づいたら日が暮れている。そんなたくさんの時間をみんなと過ごした素敵な場所です。

IMG_9729-300x200
あと、息抜きに散歩するのが好きだったんですけど、府大の中百舌鳥キャンパスはすごく広く、4年いてても知らない場所がまだまだあったなーというのが印象に残っています。
予想外の出会いも。テスト前に図書館にこもって勉強していて、閉館時間になったので外に出た時に背後から「パカッパカッ」という音が聞こえてきて。振り向いたら馬(馬術部のお馬さんが散歩している)がいました(笑)「おおっ、大都市・大阪にこんな場所が!」という衝撃の出会いでした。

5.「府大で良かったなあ」と思う点は何かありますか?

ものすごくあります。いま自分が「音楽」という場所に立つことができている事には日々感謝していて、もっと上を目指して頑張っています。もしあの時、センター試験で大成功して第一志望の国立大学に通っていたら、いい会社に入ろうとか、高給取りになれる仕事に就こうとか、今とは違う場所をいろいろと考えていたかもしれません。
幸か不幸かその瞬間は失敗してしまったけど、府大に来て本当に良かったなと思います。入学後いろいろ考えながら、しばらく経ってから思ったのは「本腰入れて音楽をやってみよう」ということでした。それは府大に入ったからこそ「やろう」と思えたし、それを許容してくれる府大の学びの環境と、あとキャンパスの場所ものどかなあの場所だったことも良かったなと思います。府大だったからこそ、いまの立ち位置、いまの考え方がある。それについて大阪府立大学にとても感謝しています。

<ミュージシャン 編>

6.プロになることを意識したのは、いつごろ、どんなきっかけがあってですか?

プロになろうと思ってプロになったわけではなくて、気づいたらそうなりつつあったっていう所が正直なところです。特に音楽はプロとアマチュアの境目があいまいだと僕は思っています。観に行く人にお金を払わせるという意味では「みんなプロ」ですし。大学生の時には軽音楽部の学内つながりだけじゃなく、外のミュージシャンともだんだんとつながりが出来ていって、ライブやレコーディングのお声掛けが増えていきました。大学2年の時に、演奏してお客さんがお金を払って見に来てくれて、それに加えて「あなたのギャラです」といってまとまったお金を初めていただきました。そういう意味で、大学生でもあるんだけど気づいたら「自分はプロミュージシャンです」と言えるようになっていたという感じですね。もちろん今は「自分はプロです」と胸を張って言えますけど、そこに至るには結構時間がかかりましたね。

7.音楽を仕事にしていて良かったなと思うことはなんですか?

「好きなことを仕事にできている」こと自体が良かったなと思うことです。好きなことを仕事にできる人なんてきっと一握りの中で、その一握りに入れたのが幸せです。人と話をしたりすると、仕事しんどい、ストレスたまる、会ったら仕事の愚痴がポンポン出てくるって場合も多いんですけど、僕はどんだけしんどくても(昨日も曲起こしや練習で数時間しか寝ていなかったそうです)「好きなこと」ゆえにめっちゃ楽しく感じられるっていう気持ちがあります。
あと、華やかな仕事には見えますが、この華やかな仕事が成り立つためには、その下に数多くの「しんどい」仕事があるわけで。そこに立たせてもらっている者の端くれとして、この立ち位置で仕事をさせていただけていることにもうれしく思います。

SONY DSC

8.なってみる前となった後の「プロミュージシャン」の印象をそれぞれ教えてください

アマチュア時代にはそこまで気づきもしなかったんですが、プロミュージシャンの仕事とは「自分の感性で表現したもので、だれかに何かを伝える」仕事だと思っています。
アマチュアの時はただただ「演奏すること」自体や、それを誰かの前で披露して「記憶を作ること」に楽しさを感じてしまいがちですが、その先にある「これを表現することで、聴いてくれるこの人たちに、こういうことを伝えたい」という視点を意識しているかいないかが、プロとプロじゃない人の境目じゃないかと最近思っています。
世の中には色々な表現があるけど、音楽にはライブがあって、目の前にお客さんがいるという環境が大きいですね。日本中にも世界にもその「何か」を伝えていきたいなと思います。

p01

9.弦と鍵盤の構成とは違い、ホーン隊がいるからこそ出来る音楽的表現や特徴・強みなどを教えてください

まず、うち(カルメラ)はインストロメンタルなんで、「言葉」がないぶん国と国の壁も無く、世界中で同じように受け止めてもらえるという強みがあります。
その上でホーン隊がいる事を考えてみると、音楽的には一層難しく、複雑になってきます。うちはホーンが4管いてますので、ホーンごとの音程や音域、ハーモニーなどをどう紡ぐか、それを土台的パートの音楽構成の上にどう乗せていくか。理論的なことをわかっていないと成立しないことがたくさんありますので、そういう意味で難しく複雑です。その代わり、先ほど出た「何か」を世界に伝える力はと格段に増すと自負しています。

10.気持ちが折れそうな時は、どう乗り越えたり、リフレッシュされていますか?

昔から「行きつけの喫茶店に行って漫画を読む」そして「銭湯にいってサウナにはいる」
の2つで決めています。実家がある街も喫茶店と銭湯がとても多かったのも影響していますし、学生時代は白鷺門の前にある喫茶「アラジン」がまさにその場所でした。朝イチ行ってモーニング食べて、大学行って授業受けて、調子よかったら夜もアラジンで食べて、また大学戻って朝まで作業して、またモーニング食べて。みたいな感じで(笑)。軽音楽部は代々あそこに溜まっています。あとアメフト部員とかもよくお茶飲んでましたね。
そんなアラジンが好きで、なんとアラジンのテーマソングを作っちゃいました。下地は学生時代に作っていて、卒業後に仕上げました。当時、カルメラの活動と 並行して「奇妙礼太郎トラベルスイング楽団」というバンドにも参加していたんですが、そのバンドから「喫茶アラジン」という曲を発表しました。
<歌詞はこちら>http://goo.gl/jOkv5z

作詞作曲して、プロとして発表して、初めて印税をもらったのがこの曲です。アラジンに感謝、ひいては府大に感謝ですね。

SONY DSC

11.日常生活の中で「職業病だなー」と感じた時はありますか?

人と飲みに行ったときに音楽が耳に入ってくると、音楽に気が行っちゃって相手をほったらかしにしちゃう時がよくあります。あと最近ご飯屋さんでもよくジャズがかかってるんですけど、曲名とか誰が演奏してるとかがちょいちょい解ってしまって、やっぱり気が行っちゃいます。ご飯屋さんは聞き流しやすいようにジャズをチョイスしてくれてるんやと思うけど、こっちはかえって聞き流せなくって。ギョーザ食べながら「あ~~っ!ここのピックアップ、もう最強!」みたいなことを考えてちっとも食事に集中できなかったりします(笑)。車を運転しているときも一緒で、BGMが気になって会話よりも「待って、次のサビだけ聞かせて」ってなっちゃう。これ職業病です。

<~最後に~ 人生哲学や、後輩へのメッセージ!>

12.学生の時と今とで、「学ぶこと」への意識に何か違いは出ましたか?

出ましたね。一番思うことは、知識を学ぶには自ら望んでそういう環境を作らないといけないという事です。
プロになって3年くらい経った時に、はたと「俺バカになったな」と感じたんです。
学生時代は映画や展示会や本や漫画も意識してたくさん触れたし、考古学、特に古代エジプト文明が好きだったんでそういった知識を探求したりと、いろいろ吸収していました。ところがプロになり、ライブをやったり音楽を作ったり人に会ったりする日々の中で、それ自身は充実した毎日だったんですけど、音楽以外の 知識に触れる事が本当に少なくなりました。必要に迫られて得る技術的な知識はさておき、音楽に特化した才能があればまずはやっていける世界でもあるので、たとえば言語や歴史や文化など、音楽と直接関係のない知識を学ぶ機会は、自ら望まないとありません。「表現する」という仕事をしているからこそ、学生時代と同じかそれ以上に、自らそういった環境を作って学ぼうと思っています。

SONY DSC

13.大学生におススメの本、おススメの曲があれば、ぜひ教えてください。

音楽は個々人の感性の世界でもあるし、ジャンルがかなり多様化していますので一概に「おススメの曲」というと考えてしまうのですが、たとえば好きなアーティストの曲を書いている人が好んで聞いている曲は何か、みたいな「ルーツをたどる」ことは大事かなーと思います。また、本当に音楽は多様化していてそれぞれに発展していますので、その発展を突き詰めたければそのルーツとなるジャンルを聞いたほうが良いかなと思います。大学生時代の感性的には、そんな探求的なアプローチでいろいろなものに触れたり聴いたりするのも楽しい時期やと思いますので。
本について僕が後悔しているのは、大学生時代の時間があるうちに「文豪」と言われている大作家たちの代表作をそれぞれ1冊ずつでも良いので読んでおいたらよかったと思っています。その後の人生の中で、話の幅が拡がったりいろんな話の土台になっただろうなと痛感する瞬間がたくさんあって。もし、学生時代に何して良いのかわからないのなら、青空文庫とかを片っ端から読んでみるとかも良いと思います。

14.大学在学中に、ぜひやっておいた方が良いことはありますか?

府大生のいいところは「はじけすぎないところ」だと僕は思っています。
府大生は大きく枠をそれることのない人間が多く集まっている。それは良いところでもあり、同時にもったいないところでもあるなと。たとえば彼(山下さん)も現役生でありながらミュージシャンとして活動して精力的にやっていているかわいい後輩なんですが、風貌があまりにも音楽家らしくなく(笑)、話す言葉や振る舞いも落ち着きすぎていて、すごい真面目だなと。それがちょっともったいないなーと思います。
人が人に与える印象って、やっぱり話すことや見た目などの「人となり」に関わってくるもんだと思います。府大生って、内に秘めている想いやスキルはすごい熱いんだけど、どこかおとなしく感じるのは、そういった表面的な面でのアピールが少ないからだと。
ちょっと乱暴な表現なんですけど、そういった部分を払拭するにはいろんな世界を知っている、良い意味で「冒険しているひと」「遊んでいるひと」になって欲しいなと思います。大学生時代はあえてキャラじゃない事をやってみる時期でもあると思いますし、そういった面がプラスされることによって府大生は女子も男子もさらに完成すると思います。

SONY DSC

15.最後に、大阪府立大学の学生、特に軽音の後輩に、エールをお願いします!

これは府大生というよりも軽音楽部の後輩たちに届けたいと思います。いま東京で音楽活動していて、トップミュージシャンやTVで見る人たちとも一緒に活動をやっていて思うことは、ある種、府大軽音学部は名門だと思っています。特に関西では府大軽音楽部は音楽的に名門といわれていて、プロに近いシーンで活動している人もたくさんいるし、まじめで、音楽に対する探究心もすごい。メンバーもたくさんいるし、音楽的スキルも高い。僕がいた時も、そして今も、府大軽音楽部のポテンシャルは相当高いと思っています。
だから後輩のみんなも、卒業後は固い道に進むのももちろん良い選択肢だと思うけど、そういった名門たる環境を最大限に活かして音楽の道に思い切って挑戦してもいいと思うし、そこまで行かなくても在学中の4年間なり6年間は音楽にどっぷりと、そして思いっきり向き合ってほしいなと思います!

SONY DSC

 

PAKshinさんから受験生の皆さんへ、メッセージをいただきました!
ぜひご覧ください。

▼卒業生からのメッセージ<カルメラ・PAKshinさん>

パクシンさん動画リンク画像

 

<取材を終えて>

今回の取材を通して、自主性を重んじつつも、周りの人によって支えられている府大という環境の大切さを認識し、勉強だけに限らず、音楽も遊びも全力で取り組み自分の世界観の幅を広げていきたいと感じました。パクシンさん本当にありがとうございました!(西)

DSC06235-300x101

【取材:西 茜(MICHITAKERs/ミュージックサークル たんぽぽ(担当:key)/現代システム科学域マネジメント学類1年)】
【guest:軽音学部:久保 輝さん(key)、山下 敬史さん(sax)、竹迫 淳平さん(key)】
【取材日:2015年6月26日】※所属・学年は取材当時