6月中旬、アメリカンフットボール部シュライクスFacebookページにて、「アメリカのキャントンで行われる第5回IFAFアメリカンフット ボール世界選手権の日本代表45名に、府大OBの野田 健仁さん(アサヒ飲料クラブチャレンジャーズOL#77)が選出!」という、喜ばしい卒業生ニュースが発信されました。

アメリカンフットボール部シュライクスFacebookページ

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おそらく府大初のアメフト日本代表。しかも経歴を拝見すると2011年に博士前期課程 電子・数物系専攻を修了され、技術者として最大手の建設機械メーカーに就職して仕事とアメフトを両立されている文武両道な方。「ぜひお話をお聞きした い!」と思い、取材をご相談したところ、嬉しいことに代表合宿出発前の貴重なお時間を割いていただきました。

この日は直々の後輩にあたるシュライクス前主将の福永 卓真さん(工学研究科)も取材に参加してくれまして、フットボール好きが集まる梅田のアメリカンな雰囲気のハンバーガー店にてインタビュー。府大時代の 話、アメフトや挑戦することについてなどなど、たくさんのお話をお伺いしました。

(取材場所:大阪市北区「タモンズカフェ」)

 

<OBプロフィール>
◆野田 健仁(のだ たけひと)

SONY DSC第5回IFAFアメリカンフットボール世界選手権(2015)日本代表。
1986年生まれ、大阪府立大学 工学研究科 博士前期課程 電子・数物系専攻 2011年修了。大学からアメリカンフットボールを始め、4年生の時にはシュライクスの主将を務める。
現在はキャタピラージャパン株式会社で実験研究部に所属し、技術者として勤務しながら勤務外の時間を使ってアサヒ飲料クラブチャレンジャーズに所属。オフェンシブライン(OL・#77)として活躍中。

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(写真提供:アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ)

<Theme1:府大入学&在学中の思い出 編>

-受験の際、なぜ府大を選ばれましたか?-

府大に来たのは正直なところ、日本中でいくつかの大学しか実施していない中期日程という縁があってのことですね。大学に入る前から「アメフトをやっ てみよう」という思いはあって、できれば京都大学アメフト部でプレイがしたかったのですが、残念ながらそこまでは届かず府大を選びました。
実は小中高とスポーツは何もしていなく、京都の進学校で勉強ばっかりしながらピアノを弾いたりしていました。受験で失敗して浪人時代を送っている時に、姉 に「それじゃダメだろう」と怒られて、これまで「自分の手の届く範囲」しかやってこなかった自分に気づきました。「方向性をガラッと変えてスポーツしてみ たら?」そんな姉の声に気持ちが動いて、スポーツをやろう、しかも極端に立ち位置を変えてめちゃくちゃ激しいスポーツであるアメフトをやってみようと思い ました。大学から始める人も多いですしね。
ただし1~2年経ったら辞めようと思っていましたので、今ここまで続いているのは不思議な感覚です。

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-アメフト部での一番の思い出を教えてください-

良い思い出ではないのですが、シュライクスのキャプテンをやらせてもらっていた4年生のとき、その1年間で1勝しかできませんでした。苦い思い出です。

 

-ほか、府大で過ごした学生生活で、印象に残っていることを教えてくだい-

ほかの工学部生にも多いと思うんですけど、第一志望が別の大学だったこともあって入学したときの精神状態はあまり良くありませんでした。ですがシュ ライクスに入って仲間やアメフトにその精神状態を良い方に変えてもらったこともあるし、学部の友だちも増えていって実験や息抜きで彼らと過ごした時間は今 でもとてもいい思い出です。また、自分が所属していた研究室は学内で研究活動するよりも、たとえば筑波にある研究施設に1ヶ月ほど滞在し、学外で長期の試 験を行なうことが多い領域だったんで、それもいい経験になりました。

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-学内で好きだった場所ってありますか?-

今もあるのか分からないですけど(広報課注:今でもあります!)、学食の横にある喫茶店「セリーゼ」ですね。人が多すぎるところが苦手だったんで、 1人でしょっちゅう行っていました。お気に入りだったのは「セリーゼ弁当の大盛り」でしたね。ボリュームもあるし美味かったし、ほんとに助かりました。

 

-「府大で学生生活を送って良かったなあ」と思う点は何かありますか?-

人それぞれ、その時々で選択肢があると思うんですけど、受験に失敗した当時の自分に取っては「府大に進む」というのが唯一の選択肢でした。ですが実 際に府大で学ぶ中で、その瞬間・その場所でないと出会えない人と会うべきして会って、共に研究したり部活したり生活したりと、今に生きる出会いがたくさん ありました。そういった人たちとの出会いすべてが良かったなあと感じています。

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-アメフトと研究の両立で、苦労した点はありますか?-

工学部での研究活動とシュライクスでの課外活動、どちらも手を抜けるものではありませんでしたので、単純に「いかに多くの時間をそれぞれに捻出でき るか」ということだけを意識していました。そうなるとどうしても夜が遅くなりますが、両立すべき事の片方がスポーツだけに身体のためにも夜は休んで、休息 の時間は取って、ということも意識しないといけなかったのが難しかったですね。
具体的に留意した点は、いま出来ること・すべきことを明日に回さずにすぐやるか、限られた時間の中でどれだけ効率を上げられるか、というようなことです。もともと1人で黙々とやるのは得意だったので、そこはプラスに働きましたね。

 

<Theme2:選手 編>

-クラブチームに進むことは、いつごろ、どんなきっかけで意識されましたか?-

私がいた当時のシュライクスは関西の3部リーグに所属していました。大学のチームとしての位置そのものはそう簡単には変わらないので、チームの序列や実力差は本当にはっきりしていますが、社会人になったら個々のプレーヤーとしての勝負になり、一回土俵がゼロになります。
私の場合は夏に関西リーグ1部から3部の大学から選手が集まってのオールスター戦がありまして、3部の選手にとっては1部の、たとえば関西学院や立命館の 選手と接すること自体が新鮮でいろいろと勉強になることも多かったのですが、それと同時に自分のポジションで一緒に試合に出ている選手をくまなく見てみる と、体格や身体能力などもそれほど差はないなと思えました。その思いが社会人チームで勝負しよう、できる、と思えたきっかけです。

 

-今回、代表に選ばれての意気込みを教えてください!-

まず、アメフトの試合を国外でする機会自体が私にとって初めてなんです。しかもフットボール発祥の地のアメリカで、それもオハイオ州のキャントンで。
私も最初は知らなかったんですが、キャントンにあるこのスタジアム(トム・ベンソン・ホール・オブ・フェイム・スタジアム。旧ファウセットスタジアム) は、日本の野球プレーヤーにたとえると、まさに甲子園のような特別なスタジアムなんです。その地で、アメリカチームをはじめとする各国と勝負する大会に参 加できるというのは正直興奮しますし、自分が今できる事をしっかりやっておかないといけないなと思っています。

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-気持ちが折れそうな時は、どう乗り越えたり、リフレッシュされていますか?-

小さい時に映画監督になるのが夢だったので、ふさぐことがあると1人で映画を見に行きます。映画館の雰囲気自体が好きなのでジャンルは特に問いませ んが、時間的には深夜のレイトショーが多く、毎週のように行っています。最近見た映画ではディズニーの「トゥモローランド」が面白かったですね。

 

-日常生活の中で「職業病だなー」と感じた時はありますか?-

職業病というよりは摂取頻度の話なんですが、体作りが必要なので3食では足らず、いろいろなタイミングで栄養素を摂っているのが普通とちょっと違う 点です。勤務中の机の上にプロテインやリンゴが丸ごと置いてあったりすると、同僚や上司からは「おっ、またやってるな!」みたいな視線を頂きますね。

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<Theme3:人生哲学や、後輩へのメッセージ>

-学生の時と今とで、「学ぶこと」「挑戦すること」への意識に何か違いは出ましたか?-

いま、社会人になってアメフトを続けている理由はたった1つで、私がフットボールに向き合っていることで、1人でもいいので誰かに影響を与えることができたり、何かの動機付けになってくれたら幸せだなと思っています。
学生のときはそんな事はまったく考えてなくて、ただアメフトが好きで、活躍したいなという思いだけでしたが、いまは仕事との両立もあるし、好き嫌いだけで は続けていけません。3部リーグの大学出身でコンプレックスもありましたが、社会人になって挑戦してみたら、勝負できるところはたくさんありました。フッ トボールが強い大学出身の人は一握りで、大半は同じような環境の選手です。ひと握りじゃない多くの人にも「あの人ができるんであれば俺も」と思ってもらえ るように頑張ろうと思っています。

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-大学在学中に、ぜひやっておいた方が良いことはありますか?-

まずは「親孝行しろ」ですかね。あと、それとは逆行しますが、親のすねをかじってでもいいので1人で海外に行くべきだと思います。文化、視野、言葉 など、様々なことを感じておくことが後に生きる。私も親に頼み込んで卒業前に1ヶ月ほどアメリカに行きましたが、今の勤務先が外資系の会社なのでいろいろ な国の人と出会う事が多く、もっと貪欲にそれらを感じておけばよかったと会社に入った後で思いますし、その大切さを痛感しています。

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-最後に、大阪府立大学の学生、特にシュライクスの後輩に、エールをお願いします!-

大層な人間ではないので偉そうにはいえないんですが、勉強でもスポーツでも親孝行でも料理が上手いでもどんなことでもいいから、やるからには一流になれるように、これだけは誰にも負けないと、必死に打ち込んでもらえたらなと思います。
社会人に出ると、周りや日常に埋没する感覚のほうが強く、自分の強みや目立っている点なんか無くっていく気持ちになっていくと思うので、学生のうちに個性あふれる人間と思えるために、「これだけは一流だ」というものをぜひ作って欲しいですね。

 

<取材を終えて>SONY DSC

野田さんと私の出会いは夏合宿でした。噂には聞いていましたが、実際にお会いしたときの印象は正に「デカい!」でした。しかし、外見とは裏腹にとても気さくでアメフト以外のことも話して下さり、野田さんの魅力にひかれていきました。

シュライクスに関わった者として、野田さんの日本代表選出をとても嬉しく誇りに思います。取材中、終始「自分は大した人間ではない」とお話しされていましたが、日本代表にまで上りつめられても、ここまで謙虚な姿勢であるのは向上心の塊とお人柄の良さにあると感じました。

身近な存在であった野田さんの代表選出は学生である自分にとってとても刺激的で、残された学生生活の過ごし方を考えさせられるものとなりました。

野田さん、本当にありがとうございました。(福永)

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【取材:福永 卓真(アメリカンフットボール部シュライクス前主将/工学研究科 博士前期課程1年)、
皆藤 昌利(広報課)】

【取材日:2015年6月26日】※所属・学年は取材当時

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