本日はミチテイク・プラスの取材として、中百舌鳥キャンパスがある堺市の竹山修身市長にお時間を頂きました。お忙しい公務の間を縫って、学生時代のお話、府大との意外な接点、府大生へ期待することなど、たくさんのお話を伺いました。

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【プロフィール】

竹山 修身(たけやま おさみ)氏

昭和49年 静岡大学人文学部卒業。昭和50年 大阪府庁に就職。大阪府総務部人事課長、商工労働部長などを歴任。平成21年 堺市長就任。平成25年 二期目就任。趣味は読書、アメフト観戦、スポーツ全般(講道館柔道六段)。座右の銘は「念ずれば通ず」「一以貫之」。

 

ー市長はどのような少年時代・学生時代を過ごされていましたか?ー

堺で生まれて堺で育ち、非常にやんちゃな子どもでした。一人暮らしがしたくて大学は静岡に行きました。一人で大学生活を送ったことが、いまの自分にとってプラスになっていると感じます。公務員として長らく大阪府庁で勤めていたのですが、堺がやっぱり好きで堺市長になりたいと思い退職しました。学生時代に静岡から堺を見るということを経験し、さらに堺大好き人間になっていきました。

 

ー静岡から堺を見たときに感じたことはありますか?ー

堺は歴史文化が盛りだくさんです。例えば、私の実家の裏には利休さんの先生の武野紹鴎(たけのじょうおう)の屋敷跡がありますし、曾呂利新左衛門(そろりしんざえもん)の屋敷跡(伝)や南宗寺など、文化財や歴史的な遺産がそこらじゅうにありました。それは誇るべきものだと思います。それから“人がおせっかいやな”と思いました。「こういうことしたらアカンで」とか「早いこと帰ってくるんやで」など、隣近所のおっちゃんやおばちゃんに言われる環境で育ったせいか、人と人との繋がりが強いところだと思います。また大阪府庁に勤めたことで堺を客観的に見ることができたと思います。大阪市にある大阪府庁から堺市を見るということは、近いけれど少し距離を置いて見ることができます。自由・自治都市という堺の成り立ちや、仁徳天皇陵古墳などの古墳群に代表される歴史の重厚さが際立っていると感じました。皆さんは今後さまざまな土地に行かれることがあると思いますが、土地ごとの特色・魅力があると思うので、それぞれの良さを知ってもらいたいです。大阪だけではなくて世界の土地に愛着を持ち、世界に向けて発信・チャレンジしてもらいたいと思います。

 

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ー今の若者、特に学生の印象はいかがですか?ー

私たちの学生時代は学生運動の真っ只中でした。私はどちらかと言うとノンポリ(ノンポリティカル:non‐political=政治運動に関心が無いこと)でしたが、それでも自ずと政治に対する関心を持ち、さまざまなことを勉強しました。今の学生の皆さんは政治に対しての関心が薄れているように感じます。投票率を見ても20代で20%、30代で30%とよく言われますが、普通はやはり50~60%なければならないところで、若い人の投票率が低いですね。政治、特に皆さんの生活に密着する地方自治体の政治に関心を持ってもらいたいと思います。

それから現代社会の中でSNSは切っても切り離せない大きな位置を占めていると思います。SNSをうまく使うことは大事ですが、同時に活字文化にも十分に触れてほしいです。最近堺市の新規採用職員と話をする機会があり「市長と話をして新聞を取る気になりました。」と聞いて「今まで新聞取ってなかったのか!?」と驚きました。ネットで全てわかりますよ、という話なのでしょうが、やはり読むことや読んで考えることはネットと違う思考力や想像力を生み出すと思います。新聞や雑誌もSNSと並行して読んでいただきたい。さまざまな角度から「これはどういうことを書いているのか」ということを考えていただきたいです。

 

ー市長もSNSをされていますよね。ー

ツイッターとフェイスブックをやっています。市長という仕事は考えを発信することが大事ですので、堺について、社会で起こっていることについてどう考えているのかを発信する責務があると思います。ネットも紙媒体もどちらもほどよく使うのが良いですね。

 

ー府大の印象を教えてください。ー

私と府大は非常に関わりが深いんです。私の父は府大の前身校を卒業していますし、私の長女とその夫も府大の卒業生です。そういうこともあり私にとっては非常に身近な大学で、公私共にお世話になっています。また学生のころも夏休みに府大の生協や図書館に行かせてもらっていましたし、現在はイベントなどでたびたび行かせてもらっています。

 

ー市長は今後どのような取り組みに力を入れていこうとお考えでしょうか?ー

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堺市マスタープラン(10年間のまちづくりの基本戦略となるもの)を5年前に作りました。そこでは「子育てをしっかりやっていく」、「歴史文化を大事にする」、「ものづくりを支援していく」という「3つの挑戦」を10年間かけて追及していきます、と申し上げました。それを作り上げたときに東日本大震 災が起こったんです。その時にもう1つ大事なこと、安心・安全なまちづくりというのは全ての政策に優先すると思いました。ですので3つの挑戦プラスワンという形でその4つを掲げています。そして、地域の活動をよりきめ細かくしていくことが必要だと思っています。都市は無名性というのか人の顔が見えない、隣の人は何する人ぞ、という雰囲気があります。しかし人間は一人では生きられないから、地域の皆さんと連帯力とか繋がりを持って生きることが必要だと、私は子どものころにおせっかいなおっちゃんやおばちゃんに育てられたからこそ、そう思うんです。だから地域で決められることは地域で決めていこうとする・決められるシステム「都市内分権」(=堺市内の7つの区で決めれることは区で決めていこう)を重点的に打ち出しています。私は「堺ビジョン1・3・1」(イチサンイチ)として、「都市内分権」、「3つの挑戦」、プラスワンの「安全・安心」を重点的にやりたいと考えています。

 

ー具体的なことを紹介していただけますか?ー

「都市内分権」の具体策として、地域の人たちが自分たちで物事を決められるように各区に区民評議会というものを置きました。議会は堺市に1つあり堺市全体のことを決め予算や計画を作るのですが、地域に密着した例えば防災や歴史文化の保存などは権限とお金を地域に下ろして独自に決めてもらう、そのような区民評議会を作りました。

私は、地域の繋がりの強い社会作りがこれから求められていくのではないかと思います。昔は大家族制で地域の中で事業をやっていたけれど、勤労世帯が多くなり地域の外に働きに行くようになり、ますます繋がりが薄くなってきています。住むだけではなく、そこに仕事があるまちづくりをしていきたいです。だからこそものづくりを推進していきたい。例えば府大の植物工場のようなものを地域に作れないかと思っています。泉北ニュータウンはだんだん人口が減ってオールドタウン化していて、周辺部分は空き家が目立ってきています。植物工場のようなクリーンなものづくりの拠点を興せないかと思っています。

 

ー堺の元気な所や取り組みを教えてください。ー

ものづくりでは、堺市は製造品出荷額が大阪市・神戸市・京都市を超えて全国6位になりました。「ものづくりのまち」という実績がだんだん定着してきたと感じます。いま大阪からの企業流出が言われていますが、堺には逆に企業の本社機能が来てくれていて、そのために生産年齢人口が増加傾向にあります。企業誘致とともに子育てのしやすいまちづくりをめざしていかなければなりません。住んで良かったと思うためには「シビックプライド」(=市民の誇り)が大事なんです。市民の誇りは、堺が歴史・文化の面で国の内外から一目置かれているところから生まれるのではないかと思います。そのような歴史や文化を誇りに思う市民の感情を育み、国の内外から観光客が訪れるまちにしたいです。

 

ー市長には、これまで府大のさまざまな取組みや催しにご出席いただいていますが、大学や府大生に期待することはありますか?ー

nakaue-300x200地域に根ざした大学として地域の皆さまのものづくりを支援したり、地域の皆さまと一緒にこれからの諸課題(社会的な課題)を解決する大学であってほしいですし、現にそうされていると思います。実際に国際的な視野を持ち、ベトナムにあるハロン湾の環境浄化のために先生方と学生の皆さんが一緒になって取り組まれています。私もハロン湾に行ったことがあるんですよ。そのような活躍をされていて、まさに「シンク・グローバル、アクト・ローカル」(=グローバル(地球的)な視野で考え、ローカル(地域)で行動せよ)な大学ですので、地元・堺と府大がこれからもしっかりと連携していきたいと思います。

 

ー市長から学生への質問はありますか?ー

なぜもっと堺東に来てもらえないのか?と思っています(笑)。どうも堺を通過して大阪市内にスッと行っているんじゃないかと思っているのでね。学生の皆さんに来てもらうことが堺の街の活性化につながります。例えば市役所の広場でイベントをしたり、堺東で学生の活動をもっとしていただきたい。また堺市としても学生の皆さんのニーズを汲み取り、場合によってはサテライト的に堺東で勉強できる場・交流できる場を作るなど考えていきたいと思います。「中百舌鳥から堺東に」という流れを作り、府大生がたくさん集まるようなまちづくりをしていきたいです。

 

ー最後に大学生の世代に向けて激励メッセージをお願いします。ー

これからは人と人との繋がりが薄くなる時代となり、少子高齢化で若い人たちの活躍する場面が多くなると思います。そこでは皆さんの「人間性」が試されてくるのではないでしょうか。人は一人で生きることはできない、社会の中の存在であるから、自分の心と身体を磨いて社会にどれだけ貢献できるかということを常に考えながら仕事をしてもらいたいです。そのような府大生がこれからドンドン出てきてくれて、堺に住んで働いてくれることを期待しています。

 

堺市 竹山修身市長から大阪府立大学と府大生に向けてメッセージをいただきました!

ぜひご覧ください。

▼堺市長から大阪府立大学と府大生へのメッセージ

 

<取材を終えて>

堺をこよなく愛する竹山市長の気持ち、堺を良くしたい!という思いを感じ、楽しく取材に臨めました。もっと地方自治体の政治のことに関心を持とうと思う良いきっかけとなりました。(奥嶋)

竹山市長は私たちに気さくにお話していただき終始楽しい取材でした。もう少し堺のことを知ろう!地域に参加してみたい!と思いました。(中植)

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前列:右から竹山市長、広報渉外担当の今井理事、後列:右から中植、奥嶋

 

【取材:奥嶋駿介(大学院 工学研究科 物質・化学系専攻 応用化学分野 修士2年)/中植貴之(大学院 工学研究科 物質・化学系専攻 応用化学分野 修士1年)】

【取材日:2015年7月10日】※所属・学年は取材当時