本学中百舌鳥キャンパスの敷地内に広がる、生命環境科学域付属教育研究フィールド。学生の実践教育・研究開発の支援はもちろん、府大ブランド産品 の開発、資源植物の収集と展示、地域児童の体験教育の場としても活用されています。約5haの農地で、ぶどうなどの果物や野菜、200種類以上のイネなど を栽培しており、地域の方向けに、収穫した果物、野菜、お米などの産品の販売も行っています。敷地面積としてはあまり大きくありませんが、キャンパスの中 にあり、学生たちが日常的に利用できることが特徴です。

フィールドでは、毎日3名の技師、4名の専門役、4名の非常勤技師が働いています。今回、「土壌医」という珍しい資格を持っているという吉村専門役に、自身のお仕事について、教育研究フィールドの役割について、お話を伺いました。

IMG_1061-300x200【プロフィール】

2011年4月より大阪府立大学 教育研究フィールドに勤務
2012年12月、農業技術検定2級合格
2014年1月、土壌医検定1級合格

―土壌医とはどういうお仕事ですか?

私は植物栽培の管理を基本的な仕事としています。その中で、植物のことに特化しがちですが、植物のことだけではどうしても解決できない問題が生じる ことがあります。土の問題は植物に大きな影響を与えることが多く、土壌医という資格は土の問題を解決、改善するために役立っています。

具体的には例えばモモ栽培においては好適な土壌を作り出すために、植える前の土壌状態を調査し、改善方法を検討し、実際にその土壌を作っていきました。モモは砂地を好む傾向にあり、また甘い果実を収穫するためにphの調整なども重要となります。

プライベートの話になりますが、仕事好きが高じて、近隣の果樹園の土に関する相談に乗ったりすることもあります。

―土壌医という資格を取ろうと思ったきっかけは?

自分の上司である西田技師長に一度受験してみないかと声をかけられました。土壌医とは、一般財団法人 日本土壌協会が主催する土壌医検定の1級に合 格した人に与えられる称号です。私は土壌医検定が始まった年に3級に合格し、翌年1級にチャレンジし、資格を取得しました。土壌医は、現在でもまだ100 名くらいしかいないと思います。特に大学の技師としては他にいないかもしれません。体系だった知識があると、理論に基づいて学生たちや子どもたちを指導す ることができます。人を指導していくことがこの資格のミッションだと思っています。

―現在の仕事内容、一日の大体のスケジュールについて教えてください。

私は教育研究フィールドでは果樹資源部門のリーダーをしています。栽培管理を中心としていますが、学生実習の技術指導、見学者の対応、一般企業との 打ち合わせ、教員の研究補助など仕事は多岐にわたります。果樹が気になって早朝から出勤してしまうこともありますし、水やりや圃場の巡回、班としての一日 の作業計画の検討、スケジュール調整、実際の栽培管理などを行うと一日が48時間くらいほしいと思うこともしばしばです。

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―この仕事に就いた経緯を教えてください。

私自身は、ずっと農業に携わりたいと考えていて、大学院でも農学を学びました。大阪府立大学で農業経験者を募集しているということで、登録していた 派遣会社から連絡があったのかきっかけです。登録している人はたくさんいたと思いますが、農業経験者を探してみると私しかいなかったということらしいで す。

個人的にも、ちょうど、これまで自分のためだけに生きてきたこれまでの人生に飽き、生き方を見直したいと思っているタイミングでした。

―仕事をする上で大切にしていることは何ですか?

私は人とコミュニケーションをとることが得意ではありません。それ故か一人の力を過信して仕事をすることが多かったように思えます。

今の自分の仕事は一緒に苦労してくれるスタッフのみんな、学生たち、地域の方々など多くの人が見ていてくれるから歯を食いしばって取り組めています。仕事を通じて誰かに感謝されるとしみじみ生まれてきてよかったなぁと感じますし、私は「人」が好きなんだなぁと思います。

また、毎年違うファクターを仕事へ盛り込むことを意識しています。自分の今年の仕事の反省点を来年の仕事へ活かすようにしています。

―仕事の上での楽しみを教えてください。

ここに赴任してきた当初からしばらくは良い作物を作ることが大きな楽しみでした。形の良い果実、おいしい果実などを手に取る瞬間は栽培者でしか味わ うことのないすばらしい体験です。現在はそれも楽しみではあるのですが、教育研究フィールドの栽培物が外部へ発信されたり、大きな百貨店に並んだりするこ とが大きな関心ごとです。経済学研究科の森田教授の企画で、フィールド産品を使用したジャムや和菓子を本学の生協で販売する取り組みなども行っています。 供給できる量に限りはありますが、これからも企業との連携を進めていきたいです。

また、子ども好きなので、地域の子どもたちと触れ合う機会があるのも楽しいですね。大学生と触れ合うことも楽しんでいます。今、現代システム学域の 学生が3名、自主的にフィールドの作業などを手伝ってくれています。自分達の専門とは異なる活動に参加することで、彼らの経験を広げることにもなると思い ます。人の強みは多様性にあると思いますので、どんどん専門以外の活動に飛び込んでいって欲しいです。

フィールドは大学の資源ですし、学生たちの学びの場所でもあります。それを意識していきたいですね。

―仕事で苦労することはありますか?

基本的にこの仕事が大好きなので、あまり辛いと思うことはありません。ただ、自然を相手に仕事をすることが多いので、気候や天候に悩まされます。一 年たりとて同じ気候の年はないので毎年同じように栽培することはできません。その中で授業日や納期が決まっている学生実習の準備、企業との連携を果たして いかなければいけないので、苦労しています。でも、その苦労も慣れれば楽しみに変わっていくものです。

またこれは職業病なのですが、長年の作業を通じてイネと果物類のアレルギーになってしまい、せっかくできた果物も味わうことができません。周りの人に試食してもらって、反応を見て出来を確かめています。

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―府大や府大生の好きなところを教えてください。

この大学は堺市の真ん中にあり、また色々な人が自由に行き来できるようになっているので大学然としておらず、町の一部として存在しているようなとこ ろが好きです。色々な人が声をかけてくれたり、植物の相談をしていったり、小学生がザリガニを探しに来たり、他の大学ではなかなか見かけることのない風景 が気に入っています。地域と一体になっていますよね。

学生たちを見ると自分が同じ年代だった頃を思い出します。勉学に励む学生、課外活動に励む学生、あるいは遊びに励む学生、彼らを見ると昔の自分の姿 が重なり何か手助けしてあげたくなります。フィールドを訪れる学生たちはみんな真面目で一生懸命で、我々も頭が下がります。指導する立場になって、我々も また教えられているのだと判りました。

―今後の目標を教えてください。

フィールドで働く技師たちの勉強会でも、フィールドの5年後10年後を見据えて、企画を考えようといつも話をしています。我々は営利的な団体ではな いので、地域貢献や社会貢献、教育貢献ということを果たしていかなければならないと思います。これらの言葉は曖昧模糊としていて、数字など目に見えること ばかりではありません。その中で、教育研究フィールドは街中にありながら植物や自然が比較的豊かな場所だと言えます。植物や動物を見たり愛でたりできる場 所、自分たちの食糧が作られる様を観察できる場所、植物資源を栽培保存する場所、数々の役割があるかと思います。

私が特に目標としたいのがフィールドの地域利用です。このように農作物や自然に触れることのできる場所は街中にはほとんどありません。アクセスが良 いので本学の学生だけではなく、他大学、小中高生、社会人、デイサービスなどを通じてシニアの方まで幅広くフィールドを利用いただけるようにしたいです。

そうして、このフィールドを訪れた人が優しい気持ちになり、フィールドが地域の方にとっても心安らぐ場所になることができれば最高の社会貢献になるだろうと思います。そのためなら努力は厭いません。

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日焼けがすごいので真夏でも常に長袖という吉村専門役。「力仕事にも暑さにもすっかり慣れました」と笑顔で話してくださいました。今回、作物の育成 だけでなく、学生支援や地域貢献など、さまざまなミッションを意識しながら取り組んでいる技師の皆さんの奮闘を具体的に知ることができ、ますます教育研究 フィールドの重要性を実感しました。これからもフィールドから素敵なニュースが収穫できそうです!

【取材:玉城 舞(広報課)】

【取材日:2015年8月18日】


 

『4%の底ヂカラ!』とは

平成17年度の法人化以後、大阪府立大学では、新卒採用だけではなく社会人採用を行っており、国公私立大学や民間の様々な業界を経験してきた非常に多様な人材が働いています。
また、大学の中には直接教育・研究に関わるもの以外にも、様々な仕事があります。「雑然としていた自転車がいつの間にか整頓されている」「学内で無線LANが利用できる」・・・普段何気なく過ごしている大学の裏側には“人”が関わっています。

多様なキャリアを持つ“人”が府大でどのような仕事をしているのか?

学生のみなさんに府大職員の仕事を知ってもらい、これまでの経験と今の姿を学生それぞれが自分のキャリアを考えるうえで活用してほしい。人を知ることは組織を知ること・・・大学を支える人を知り、仕事を知り、大阪府立大学をもっと知って好きになってほしい。
そのような思いから生まれた「職員としごと」紹介企画です。

平成27年現在、大阪府立大学の学生・教員・職員をあわせた構成員は約9200人。その4%を占める職員たちの、パーセンテージでは測れない知られざる「底力」を紹介します。