きっかけはI-siteなんばのスタッフの方からの連絡でした。

「●月●日に、観光・地域創造専攻の植田幹浩さんが新聞社からの取材をお受けになります。植田さんはご当地モノポリーの監修をなさっており、昨年12月には「大阪環状線版」モノポリーが発売。今回はその開発秘話などについての取材とのことです。」

お恥ずかしながら、広報課ではこれまでそのような素敵な経歴を持たれる院生さんがいらっしゃるのを存じませんでした。

 

調べてみると、監修だけではなくモノポリー大会の2001年日本チャンピオン・2004年世界選手権日本代表に輝いた実績を持たれる植田さん。糸井重里さんが会長という縁で、Web「ほぼ日刊イトイ新聞」に間借りしている「日本モノポリー協会」のサイトでも、度々にわたって登場されている著名人です。https://www.1101.com/monopoly/2005-03-27.html

 

冒頭にもあった、2015年末発売「大阪環状線版モノポリー」の監修にも関わられていたり、http://osakaloopline-monopoly.jp/index.html

 

その取り組みが大阪日日新聞にも掲載されております。
http://www.pressnet.co.jp/osaka/kiji/160213_16.shtml

 

ぜひこちらも話をお聞きしたい!

さっそく植田さんに連絡を取らせてもらい、修士論文提出直後のタイミングでお話を聞かせていただきました。

 

<プロフィール>

◆植田 幹浩(うえだ みきひろ)植田さんプロフィール

大阪府立大学 大学院経済学研究科 観光・地域創造専攻 博士前期課程(修士課程)2年。

1968年生まれ。コンテンツプロデュース企業「WAshu企画」代表。コンテンツや企画によって「人をつなぐ」ことをビジネスに展開し、大学院ではボードゲームを活用した地域内コミュニケーションと地域プロモーションに関する研究を行っている。

ひょんな縁で出会った「モノポリー」において比類なき才能を発揮し、2001年に日本チャンピオン、2004年に世界選手権日本代表。ご当地版モノポリーの監修やプロデュースに力を入れている。国際ビジネスコミュニケーション学会・日本観光研究学会所属。

 

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◆大学院ではどのような研究を?

学部では社会心理学を学び、その後は企業で働きながら、前述の通りボードゲームである「モノポリー」を軸に様々な活動を続け、今にいたりました。そういったバックボーンを活かし、「ボードゲームを活用した地域プロモーションと地域内コミュニケーション」というテーマで修士論文を書き上げました。修士(学術)※1の学位取得を目指しています。

ご当地モノポリー

指導教員は橋爪紳也先生です。研究テーマのうち、「地域プロモーション」については地域資源を選定する面で橋爪ゼミとぴったりです。また、モノポリーは「交渉」が必要なゲームで、これまでもモノポリーをツールにした「交渉学」の指導やビジネスコミュニケーションの研究についても同志社の先生と共同で研究してきました。そこで社会心理学のバックボーンを生かして交渉に適切な「アサーティブなコミュニケーション」※2についての研究を2つめのテーマにしました。

外向けの「地域プロモーション」と、内向けの「地域内コミュニケーション」の両方を並行して論じる研究となっています。

※1 学際的分野の学問を専攻・修了した者に授与される学位
※2 アサーティブとは、自分の表現する権利と相手の表現する権利を大切にしたコミュニケーションの方法論

植田 幹浩さん

 

◆なぜ、橋爪ゼミを選んだのですか?

もともと日本モノポリー協会として活動していたとき、観光局などと地域プロモーションのお仕事をする機会がよくあって、そこで橋爪先生のお名前は非常に良く耳にしていました。講演会でもお会いする機会もありましたが、実際に指導や講義を受けたりしたのはこの機会が初めてです。ですが、思っていた以上に気さくに熱心に指導してくれたのでとても良かったです。

 

橋爪先生が領域とするテーマは非常に広く、新聞記事でも様々なジャンルでコメントが掲載されています。その幅広さが、コンテンツプロモーションと社会心理学という、私の異色な組み合わせの研究も許容してくれたのだと思います。

また、先生のアドバイスや人脈で、世界がぐんとひろがりました。これまでも観光学会などには参加しておりましたが、在籍中に、橋爪先生の勧めで初めてゲーム系の学会にも参加してみました。そのタイミングがたまたま京都で世界大会があった年で、私は幸運にもオープニングセッションで「ご当地モノポリーについて」発表する事ができました。先生には本当に感謝しています。

 

◆モノポリーとの出会いのきっかけは?

大学卒業後はIBMに入社しました。SEとして、企業内技術者としてだけでなく、顧客の技術者に対する指導なども行っていました。

配属は東京でしたが、当時東京ではモノポリーイベントが華やかに広げられていた時期で、会長の糸井重里がタレントを連れて遊びに来ていたり、TVで「今度モノポリー大会があるよ」と言って大賑わいしていたような時代でした。そんな情報に触れて、流れで始めたのがきっかけです。

ご当地モノポリー

そしてたまたま通っていたところが、歴代のチャンピオンを何人も輩出している、いわゆる名門クラブでして、行ったらコツとかノウハウをチャンピオンたちが熱心に教えてくれました。そのおかげもあってか、2001年には日本チャンピオン 2004年には六本木ヒルズで世界大会があり、そこで日本代表になることができました。世界大会はオリンピックと一緒で数年に一度。歴代日本チャンピオンの中でさらに勝ち上がり、グランドチャンピオンにならないと日本代表になれないので、非常に意義深い大会となりました。

そんなことがあっての現在の私ですので、今はモノポリー協会の理事として、普及活動を兼ねて熱心に教えるようにしています。恩返しです。

 

◆ご当地モノポリーに関わるようになったのは?

前述の、日本での世界大会開催のとき、現代美術家の村上隆さんとコラボして「六本木ヒルズ版」モノポリーが企画されました。この時私はチャンピオンとして企画に参画し、これがきっかけになりました。その後2008年に大阪版モノポリーに関わることになり、地域の団体や企業さんとのお付き合いが広がりました。その後に独立し、コンテンツプロデューサーとして各種ご当地版モノポリーに関わってきています。

ご当地版モノポリーではそれぞれの地域と関わりながら、Webやイベントなども並行して地域プロモーション的な活動につなげています。

 

◆ほか、ビジネスではどのような活動をされていますか?

また、学童向けや大人向けに、モノポリーを教材とした「交渉学」を学ぶ取り組みを続けています。学童向けでは長岡京の小学校で、放課後子ども教室として体験授業を行っています。最初は言いたいけど交渉できない子どもや、強引で攻撃的なコミュニケーションが目立つ子どもも、半年のカリキュラムの中で徐々に改善が見られます。

続けているうちに、強引に無理なことを言っても誰も言う事を聞いてくれない、黙っていても自分の意図は伝わらず、ゲームで優位に立てない。そんな経験から「交渉学」を学ぶきっかけとしてもらっています。

植田 幹浩さん

大人向けには、グランフロント大阪で、モノポリーの1シーンの解説にハーバード式交渉術の理論を用いて理論分析をしています。相手が交渉条件として言ってきたことの妥当性分析や勘違い、また条件を下げて妥結するなど、実際にある交渉のシーンに社会心理学の理論を絡めて、「交渉学」を説明しています。

 

4人プレイが基本のモノポリーですが、場面によって「協調相手と競争相手が入れ変わる」というゲームは珍しいので、題材としてもぴったりです。

 

◆府大での学びを踏まえて、視点が変わったことは?

研究では、アニメの聖地巡礼現象などをゲームによる地域プロモーションと比較して考察したりしてきました。どうやったら成功に向かうか?という点においては、ゲームの世界観は決して壊さず、かつ地域の人には協力いただいて、地域とコンテンツがうまく結びつたいときに成功する。強力なコンテンツを作って地域に当てはめたら成功するわけではないということが分かってきました。

アニメが地域のプロモーションに使われはじめた時は賛否両論ありましたが、今はとても普通になってきました。このように、ゲームも観光プロモーションに使われるのが今後増えていくでしょう。その時、モノポリー以外のゲームや、ケースによってはゲーム以外のコンテンツでも、その地域のプロモーションにマッチするのであれば、積極的に仕掛けていきたいなと思います。

また、映画祭への関与や、学会に参加したりなどで広がったつながりから、コンテンツプロデューサーとして地域向けとは違うプロモーションもお手伝いさせていただいています。そういった機会は今後も大事にして、少しでも橋爪先生に近づけるようにありたいですね。

 

◆大学院生活全体の印象は?

中百舌鳥に行くことも多いのかな?と思っていましたがそれはほとんどなく、なんばでの学びがほとんどでした。そのかわり、なんばパークスで開講していた経済学専攻や経営学専攻の講義を取ることができたのは非常に良かったです。私の学びは社会心理学がベースとしてあったので、観光に限らず色々な講義を受けたのですが、マーケティングなど、これまでのキャリアで実体験として知っていても、学問として体系的に学び直せたことが多々あったことは非常に役に立ちました。

ぜひこれからうちの専攻に進む人も、観光に限らず、履修できるものについてはどんどん履修してほしいなと思います。

 

◆最後に、これから府大で学ぶ人にひとこと

他の人を見ていて感じたことですが、入学時に確固たるテーマが定まっている人は、研究を進めるにしても論文を書くにしても、ゴールが近かった気がします。私のまわりは、いま自分がやっている仕事や活動の中から自分がやりたいテーマを決めている人が多かったのですが、テーマを探るところから入ってしまうと2年間はあっという間です。

ですので、たとえば受験相談会の機会がありますので、そこで「こういうことをテーマに研究できますか?」など、ぜひ具体的に聞いてほしいなと思います。テーマになり得るというものが決まっている人は、大学院生としての生活が始まってもステップが早いし、強いです。

あとは社会人大学院としての多様性。観光・地域創造専攻には教員・学生を含めていろいろな経歴を持つ人が多いので、ぜひ融合して欲しいなと思います。私も教育系大学の院と比較して、最終的に大阪府立大学の観光・地域創造専攻を選びましたが、多様性の意味では非常に恵まれた大学院生活となりました。多様性を自分のテーマに取り込みたい人にはうちはお勧めです。

植田 幹浩さんとモノポリー

 

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植田さん、さまざまなお話をありがとうございました。これまでの経験を活かした研究のお話し、また経済学研究科や観光・地域創造専攻の多様性、とても聞きごたえのあるお話でした。お忙しい中本当にありがとうございました!

<参考リンク>
経済学研究科 観光・地域創造専攻の紹介
http://www.osakafu-u.ac.jp/academics/graduate/economics/department_2/

 

【取材:皆藤 昌利(広報課)】
【取材日:2016年2月2日】※所属・学年は取材当時