現代システム科学域 環境システム学類の竹中 規訓 教授(環境共生科学課程)が、研究室の大学院生とともに研究調査で南極に行かれました。
帰国後の懇話の中で、滞在中の様子を辻洋学長がレポートしています。誰もが行ける場所ではない、この貴重なご経験の一部をぜひともご共有ください。そして府大在学生は、機会があればぜひとも竹中先生から色々なお話をぜひ伺ってみてください。
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【報告:辻 洋(理事長・学長)】
現代システム科学域の竹中教授。以前から夢にされていた南極に行き、(昭和基地ではなく)雪上車で生活をしながら、エアロゾルの研究をされていたが、先月末無事帰国された。私は早速、制服と制帽を拝借。気分だけでも極地研究者。
砕氷艦「しらせ」には女性10名を含む180名の自衛官が乗り、女性9名を含む64名の観測隊員が極地に向かうそうだ。往路だけで約20日間も乗船期間があり、しらせ大学というのが開講され、竹中先生は学長に就任。多少は私の苦労も理解頂いただろうか。
今回、竹中先生に出発前にお願いをして、南極にOPUと記した即席の旗を立てていただいた。
また、南極の夏は白夜。太陽は沈まず空を回るそうだ。形も四角くなったり三つになったり。
360度地平線という景色もびっくり。蜃気楼もオーロラも空を覆う雲もなにもかもみたことがないものだ。そして南極には新しいウィルスがいないので風邪をひく心配もないらしい。雪風呂というのに入るらしい。
本当に不思議なことがいっぱい。きっと竹中先生の講義を受ければいろいろなことを知ることができるだろう。
【竹中教授、同行した大学院生・野呂さんからのレポート】
●現代システム科学域 環境システム学類 竹中 規訓 教授
約20年前に南極調査の可能性を教えていただき、それからずっと南極行きを夢見てきました。夢は諦めなければいつかはかなうと信じ、ようやく南極行きが叶いました。
夏の南極は予想していたよりも暖かく、私たちが調査をした海岸から100 km弱離れたH128地点では-5~-20度程度の気温でした。そこで約1ヶ月半生活しましたが、基地も小屋もない場所(もちろん風呂も快適なトイレもありません)で7人の共同生活を行うため、雪上車の運転、食事の支度など、交代で全て自分たちでしなければなりませんでした。
冬山登山をイメージしていましたが、雪上車の中で寝泊りできるため、テントのように風にあおられて恐怖を感じることもなく、そりで物資を運ぶことが出来るため、食材もいいモノを大量に持ち込むことが出来ました。食料は外においておけば冷凍、雪上車の中においておけば冷蔵できます。
360度雪平線の中、沈まない太陽、きれいな夕日や雲など、とても印象的な景色を見ながら、雪と大気の間の物質交換やエアロゾルについて調査を行なってきました。このような貴重な経験をさせていただき、南極行きにご理解・ご支援くださった辻学長はじめ、教職員の皆様に感謝しています。
●工学研究科 野呂和嗣さん
「どうしてシベリアはこんなに寒いのかね」
「神さまがそうお望みなんでさあ!」と御者が答える。
—シベリアの旅、チェーホフ−
今回、第57次南極地域観測隊同行者として、指導教官の竹中教授と共に南極内陸部で観測を行いました。南極内陸部にあるのは、雪・氷・地平線(雪平線?)だけ。チェーホフが行ったシベリアに負けず劣らず、南極も寒いところです。そんな場所で行った、厳しくも楽しい44日間のキャンプ生活でした。
雪と氷の世界で生活していると色々とおもしろい発見があります。例えば、雪面が平坦でないこと。これは大気が乾燥していて、いつも同じ方向から風が吹いていることによって形成されるそうです。化学者として、この雪面にどんな化学があるのかとても興味深いです。
チェーホフのような旅行記は書けませんが、南極観測のデータでいい論文を書けるようにがんばります。帰ってきたばかりですが、また南極に行きたくなっています。南極は、何度行ってもきっと新しい発見があるだろう、謎と夢に満ちた場所でした。
辻学長、竹中先生、野呂さん、どうもありがとうございました!
【取材日:2016年4月25日】※所属は取材当時