I-siteなんば「まちライブラリー@大阪府立大学」で2014年10月17日(金)に開催された第9回アカデミックカフェでは、カタリストは大学院理学系研究科生物科学専攻の八木孝司教授をお迎えし、「昆虫少年から昆虫中年へ—日本人の自然に対する感性を紐解く—」をテーマに開催されました。
実は八木教授は分子細胞遺伝分野の研究者で、昆虫学のご専門ではありません。しかし、小学1年生の時にクロアゲハを捕まえたことがきっかけで昆虫少年となり、その後は本職の研究と平行して「趣味で」研究に論文発表、写真集まで出版し、昆虫学会賞まで受賞された生粋の昆虫中年でいらっしゃいます。ただし「虫屋(昆虫研究家)の世界には上には上がいる」とのこと。昆虫研究の奥深さを感じます。
そんな今回は、万葉集や日本書紀などの文献や、円山応挙、伊藤若冲などの絵画などに登場する虫たちの姿から、古からの虫と日本人とのかかわりをさぐってゆくというもの。昆虫写真(アップ)を覚悟していたものの、目の前に広がったのは繊細な日本人の感性がつくりあげた雅な「美」の世界でした。
「自然の中の美しさに触れ、“不思議だな”“美しいな”という心の動きを感じること、そして“それはなぜだろう”と考えること=物のあはれを知る=自然科学、です」という教授のことばは、あらゆる角度から物事を観察する研究者としての姿勢と、少年のままのキラキラした好奇心がぎゅっと詰め込まれているような気がしました。
終始とても丁寧に解説して下さった八木教授に、参加者から「先生は蝶のどこが好きなのですか?」という質問が。
「触覚の長さとか、羽の形とか、ちょっとずつ違うところが好きです!」とはにかみながら話す八木教授に一同ほっこり和んだ夜でした。
【取材日:2014年10月17日】※所属は取材当時