海遊館と近い立地ながら、「感性にふれる」をコンセプトとした新しいスタイルを確立しているニフレル。今年1周年を迎えるニフレルの魅力に迫るため、この度取材に伺いました。
小畑館長の写真

 

小畑 洋さん
株式会社 海遊館
ニフレル事業部長 兼 ニフレル館長
学芸員

好きな魚:
ヨダレカケ、ボロカサゴ、ペニージョーフィッシュ

 

Q1.ニフレルができるまでに苦労したことはなんですか?
企画からオープンまで4年ぐらいの年月をかけました。約1時間と距離が近い海遊館とは異なる今までにない新しいものをつくる、水族館というカテゴリにこだわらず、魅力的な新しいものをつくることを目標にしました。しかし、一から新しいものをつくることはとても難しかったです。そこで、これまでとは違った視点を取り入れようと思い、飼育・運営事務方・ニフレルに関わる従業員みんなでアイディアを出し合う、という新しい手法を取りました。

 

Q2.ニフレルのコンセプトを教えてください
子供の時に当たり前にあった生き物や自然に対する興味を、大人になって失っているのではないのかと考え、自然と触れ合う喜びを思い出してもらいたいと考えました。そこで、“感性に触れる”というコンセプトに定めました。レイチェルカーソンの「センスオブワンダー」という本で、自然や生き物の不思議さに神秘さに触れる感性という使い方をしていて、二フレルのコンセプトとシンクロしているなとピンと来たのがきっかけです。

展示の様子

Q3.ニフレルの名前の由来はなんですか?
ニフレルの名前を付けたのは事務の若い女性社員なんです。最初はおじさんばかりで考えていたのですが、「アクア○○」「バイオ○○」とどこかで聞いたような名前ばかり出てきてしまい、ピンと来るものがありませんでした。「感性に触れる」のニフレル。「感動に触れる」「驚きに触れる」みんなで考えた結果生まれました。

 

Q4.コンセプトを実現するために工夫したことはなんですか?
(1)多様性で感性に触れるということ
多様性の表現を従来の水族館・動物園のように「地域」で分けるのではなく、「色彩の多様さ」「行動の多様さ」「形の多様さ」など新しい切り口で見てもらおうと思いました。

(2)海遊館との違い
海遊館は「環境再現」、ニフレルは「生き物の個性」にスポットを当てようと思いました。その為、ニフレルは動物園・水族館・美術館の展示の手法を融合しています。例えば、空間の作り方は美術館に影響を受け「インスタレーション」を用いて、空間全体でテーマを表現するようにしています。壁の色も一見派手に見えますが、色彩がだんだん変化していくことで見た人に多様さを認識させ、生き物の多様性を感じてもらえるようにしています。カテゴリ分けをせずに生き物の個性を表現し、感性を刺激するものを作っていった結果、最終的に”ミュージアム“という形が出来ました。生き物を扱う「生きているミュージアム」です。

 

Q5.ニフレルの見どころを教えてください
水槽が壁に埋め込まれておらず、蓋もないため上からのぞくこともでき、水面のゆらぎを感じることで生き物との距離の近さが感じやすくなっています。
水や光の揺れを目で直接感じられることによって、実際の海で見ているような感覚で生き物と触れ合うことができるのです。

展示の様子 展示の様子

コンセプトに「生き物とダイレクトに触れ合うことができる空間」を掲げて、ワオキツネザルや鳥類の放し飼いが実現しました。お客様が怪我などをしないように、展示動物と人間との間に水路をさりげなく設置するなどの工夫によってゆるやかな境界線をつくり、共存することが可能になりました。
また、実際とは異なる生息地に住む生き物同士の共存は一見ストレスを感じさせるように思えますが、実際は相互に良い影響を与えあってプラスの作用をもたらしています。生き物にとっては、退屈してうろうろと動き回ることの方がマイナスです。ニフレルでは、退屈することを防ぐという面でも様々な生き物同士の共存を図っています。

展示の様子 展示の様子

Q6.開館後いちばん嬉しかったことはなんですか?
最初に入ってきた来場者の方が、一個目の水槽をみて「わぁー」と声をあげて、「生き物ってすごいね」「すごいね。このエビ!」と言われたときは泣きそうなくらいになり、あぁ作ってよかったと安心しました。また、意図していたことを感じてもらっていたことでその方とも間接的につながったのが嬉しかったです。

館長の写真

Q7.館長に就任した時の想いをお聞かせください
館長としての責任というプレッシャーはありましたが、全体の統括を任せられることへの喜びもまた大きかったです。自ら考えて動くことが好きなので、今でも現場に赴いて視察に向かったりすることもあります。

 

Q8.ニフレルのこれからについてお聞かせください
ある意味、「生きているミュージアム」で、ニフレルもひとつの生き物です。生き物がどんどん進化していくように、この施設も社会に合わせて進化・適応していきたいと思っています。その結果が地元のひとに愛される施設がどうかを大事にしていきたいです。飼育員だけでなく、働いている全員のアイディアでどんどん進化していきたいと考えています。

 

最後に、府大生へメッセージをお願いします!
水族館に普段行かない人にこそ来てもらいたいです。海遊館やニフレルで働いているとまわりは生き物好きばかりなのですが、外に一歩出ると、生き物にあまり興味を持たない方が実は多いなと感じるので、そういう方に生き物のことを好きになってほしいです。個性のある施設なので、来てもらえると自然や生き物に興味を持ってもらえると思いますよ。

記念撮影

(左から)田井康之さん(二フレル広報)、高木彩夏さん(獣医学類)、小畑洋館長、西茜(ミチテイク)、中植貴之(ミチテイク)

▼二フレル館内の取材記事はこちら
http://michitake.osakafu-u.ac.jp/2016/12/28/nifrel/

<取材を終えて>
海遊館とは違うコンセプトを作ろうという軸を基に、社員一人一人の意見を大切にしているからこそ今のニフレルという形が出来たのだと裏側を知ることが出来てマネジメントの学生として学ぶことが多かったです。また、個々の生き物にじっくり向き合えることは新鮮で楽しかったです。
小畑館長、どうもありがとうございました!(西 茜)

▼二フレルの情報はこちら
https://www.nifrel.jp/index.html

【取材】
西 茜(MICHITAKERs:現代システム科学域 マネジメント学類2年)
中植 貴之(MICHITAKERs:工学研究科 博士前期課程2年)
高木 彩夏(生命環境科学域 獣医学類5年 細胞病態学教室所属)
【取材日:2016年9月21日】※所属・学年は取材当時

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