日本が世界に誇る、フィギュア・玩具の企画・制作・製造・販売などを幅広く展開している株式会社グッドスマイルカンパニー。その代表取締役社長を務められているのが本学卒業生の安藝 貴範さんです。グッドスマイルカンパニーのデフォルメフィギュア「ねんどろいど」シリーズは2017年現在、世界中で700種類以上発売されています。フィギュアの枠を超え、様々な形でジャパニーズカルチャーを世界に発信している先輩を、大阪府立大学アニメ声優同好会の学生さんが取材しました!

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◆安藝 貴範(あき たかのり)
株式会社グッドスマイルカンパニー 代表取締役社長
1993年大阪府立大学 経済学部 経営学科卒業。

◆聞き手:
大阪府立大学アニメ声優同好会
木村 亮治 (地域保健学域 教育福祉学類 3年)
石原 瑞紗 (大学院工学研究科 機械系専攻 博士前期課程 1年)
松田 健太郎(工学域 電気電子学類 1年)
畑中 太一   (工学部 知能情報工学科)

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(木村)安藝さんはどのような学生時代を過ごされましたか?

(安藝社長)高校時代は、プログラミングや映画が好きでした。公認会計士に興味があったので、府大の経済学部に進学しました。地元である香川から出てみたい気持ちもありましたね。
大学時代は、なかもずにあった「ことぶき荘」という、お湯が出ない、クーラーがない、電話もなくて呼び出し方式の食事付き学生寮で下宿していて、お味噌汁に具が入っていると喜ぶような生活でした。「ポテト」っていうテニスサークルを作ったり、軽音系の部活「雑草(あらぐさ)」でベースをしたりしていました。会計事務所と家庭教師のアルバイトで帳簿のつけ方とお金を稼ぐということを学びました。
当時はバブルの名残りもあり、経済も個人も頑張れば成長するという雰囲気があったような気がします。今から振り返ると、何も考えずにエレベーターに乗っているようなところもありました。

(木村)大学で学んだことで、今の仕事にいきていることはありますか?

(安藝社長)大学には世の中の様々な事象をアカデミックに研究する方々がいて「どんなことも学問として突き詰めて深堀りすることができる」ことに刺激を受けました。しかし、当時の自分が志を持って何かに没入できていたかというと、そうではなくて、社会に出ることへの期待の方が大きかったです。
今、自分がいるエンターテイメントの世界は、受け手が深堀りするほどおもしろみが出て、作品から大きなムーブメントが生まれます。例えば「この作品のこの表現はここから影響を受けている」といった受け手のアウトプットから議論が生まれ、体系化され、それをおもしろいと感じた人が集まってくる、といった作品作りの流れがあります。これは学問の楽しみと共通していると感じていて、このベースの部分は、大学時代に感じ取っていたように思います。

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(木村)学生時代にやっておけばよかったと思うことはありますか?

(安藝社長)英語です。日常会話レベルではなく、自分の考えを伝えたり、相手の考えを聞いたり、ビジネスで議論できるレベルまで習得しておけばよかったと思っています。インターネットの世界の8〜9割は英語。インターネットの世界から色々な知見を得ることができるけど、英語のサイトにアクセスできなければ、世界の8〜9割は知らないことと同じになる。この時代に我々が作るサービスの反応を日本語でしか得られないというのは非常にまずいことだと思っています。また、世界中の作家やアーティスト、クリエーターと仕事をしていますが、どうしても通訳を介しての会話では親密になりにくい。グッドスマイルカンパニーには英語が堪能なスタッフが多くいますが、彼らを見ていると「話せるのと操れるのでは世界がまるで違う」と感じています。1年間でもいいので、学生のうちに英語圏に身をおいた方がよいと思います。

(木村)新卒でコナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)に入社されたと伺いましたが、どのような仕事をされていたのですか?

(安藝社長)ゲームをするのも作るのも好きだったので採用試験を受けました。問屋や小売店向けの営業をしていたのですが、体育会系で非常にハードでしたね。「お願いをしてモノを買ってもらうのと、『良いものだ』と納得して買ってもらうのは大きな違いがある」ということを学んだのもこの頃でした。商品の良いところを言語化して伝えていく力と、論理的な思考が身についたと思います。
また、商いの現場に身を置いたことで、小さくまとまるのではなく広い視点で大きな規模のビジネスを仕掛けることの重要性も感じました。自分の配属された大阪支店の業績を上げるために、営業エリアが定められていない二次問屋に着目し、日本中の二次問屋に営業をかけて大阪に発注を集中させたことがあったのですが、大商いをすることで互いに強い成功体験を共有し、地域の問屋やお店とのつながりが強化されたのを肌で感じました。一営業ながら、会社のブランディングにも役立ったと思っています。

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(木村)「これが売れる」を見抜く力はどうしたら培われますか?

(安藝社長)社長職やエンターテイメント界でプロデューサーをされている方の中には「これはいい」と思ったものが後にヒットするというような目利きの方が多いように思います。生まれ持ったセンスもありますが、経験値や知見の広さが大きく関係していると思います。私自身が意識しているのは、興味を持ったことに関する情報を大量に多方面から吸収しつづけることです。例えば太陽光発電について気になったら、それに関するビジネス本、仕組みについての本、電力業界全体についての本など、目に見える範囲すべてを買って読むし、ネットにある記事や評論もすべて読みます。読めば読むほど、自分の中の情報も蓄積されるので、次第に読むところがなくなっていきます。いったん自分の中に全ての情報を通すことで、人に説明できるようになり、人に話しをすることで色々な見解が生まれてくる。その積み重ねが自分の経験値や知見に  つながるのではないでしょうか。勉強に限らず、絵や音楽などあらゆるものを「自分の中に流し込み続ける」感覚を手に入れることが大事だと思います。

(広報担当者)安藝さんは新しいことを始める時に何か意識していることはありますか?

(安藝社長)これまで色々なプロジェクトを手がけてきましたが、私自身が何かを見つけ出してくるケースはほとんどなく、外部の人やスタッフから「こんなおもしろいものがありますよ」と薦められて始めることが多いです。薦められたものを一度自分で咀しゃくし「こうすればうまくいく」と周りを納得させることができれば物事はうまく動き出します。エンターテイメントの世界では、ほとんどのモノはヒットしない。ヒットを生むためには、周りをその気にさせることが不可欠ですが、それが非常に難しい。だから「こうすればいける」「こういうプロモーションをしたらうまくいくと思わない?」と言い続けて、チーム全体に染み込ませていく。世間に、そしてお客さまに受け入れていただく前に、まずはパートナーやスタッフに受け入れてもらえるように、「できる」と思わせることを意識しています。

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(木村)これからのフィギュア業界はどうなっていくと思われますか?

(安藝社長)日本のフィギュアは精度が高く、すでに世界中に伝搬されています。それを一層強化し拡散させる必要があるし、さらに良い作品を作り続けることも必要です。しかし、フィギュアの解像度がどんどん上がり、彫刻技術も上がったことで、量産体制が危機的状況に瀕しています。このままだと値段が上がる一方。今後、全世界で売れ始めた時に「生産が追いつかない」といった事態になる前に、生産性を向上させるための自動化や技術革新が急務です。そのためグッドスマイルカンパニーでは現在、鳥取に国内工場を作り、そこでいかに生産革命を起こし続けることができるのかを研究しています。

(広報担当者)最後に、大阪府立大学の学生にメッセージをお願いします!

(安藝社長)府大は「ちょうどいい個性的な人が集まる大学」ではないかと思っています。自分の興味のある分野をしっかり強化して、自信を持って社会に出てほしいです。将来に不安を感じている若者が多い時代ですが、むやみに悲観的になる必要はまったくないと思います。いい意味で鈍感でいてほしいです。社会を牽引する立場になる人たちだと思っているので、強気に、そして夢を持って社会に出ていってください。

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【取材:西野 寛子(広報課)】 ※所属等は取材当時
【取材日:2016年12月10日】