2015年4月22日(水)、I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」にて第16回アカデミックカフェが開催されました。カタリストは生命環境科学域自然科学類長の藤井郁雄先生。薬学博士であり薬剤師であるという先生に、人類最古の薬「アヘンの光と影」についてお話いただきました。

アヘンと聞くと、アヘン戦争や麻薬などといった危険なイメージが強調されますが、人類の歴史のなかで、最も古い薬として多くの人間を痛みから救ったのがアヘンです。講演では麻薬の種類、性質などの解説から、各国におけるアヘンの歴史を紐解かれました。

紀元前1500年、エジプトの壁画に、赤ちゃんがぐずるのを止めた薬として描かれていたのが、アヘンの始まりとされます。ヨーロッパで使用されだしたのは15世紀中頃。痛み止めの薬として使用されていましたが、恍惚感へといざなう中毒性が顔を出し、人々の間で瞬く間に広がりました。

またよく知られるのは、戦争での使用。死への恐怖に対して鈍感にさせるため…戦地での麻薬汚染は想像することすら恐ろしい光景だったことでしょう。

さらに現在、某国では軍事費を稼ぐために自国でアヘンを作って闇ルートで販売するケースもあるという悲しい現実も浮かび上がります。このようにアヘンの歴史は、戦争と政治と切っても切れない歴史ともいえます。

でも薬用として多くの人間を救ったのもアヘン。影の印象が強調されるゆえに医療用麻薬についての誤解も生じています。快楽を得ようとする濫用目的ではなく、病状に応じた使用と定期的な診察がされていれば問題ないといいます。現在はがん治療の早期から使われるケースも増えています。

藤井先生は、麻薬について正当にどんなものか理解した上で怖がることが大切だと繰り返しお話くださいました。知ったかぶりで理解したつもりになるのではなく、正しく学び、自分の考えで判断することの重要性を感じました。

▼藤井先生にご紹介いただいた本
●〈麻薬〉のすべて(船山信次 著)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062880978
●乱用薬物の化学(井上堯子 著)
http://www.tkd-pbl.com/book/b16263.html

【取材日:2015年4月22日】※所属は取材当時