I-siteなんば「まちライブラリー@大阪府立大学」で2015年7月30日に開催された第18回アカデミックカフェ。カタリストにお迎えしたのは生命科学研究科獣医学専攻 獣医公衆衛生学教室の三宅眞実教授。テーマはバクテリア(細菌)です。

皆さんはバクテリアと聞くと、「汚い」「病気を起こす」などのイメージを持っていませんか? マイナスな印象のバクテリアですが、三宅先生は長年その研究に携わり、バクテリアという存在に魅了されています。

今回は「バクテリアの魅力に惹かれて35年~その匠の業に唸った日々~」と題し、バクテリアとの出会いから、進化の結果身につけた「匠の業」ともいうべき巧妙な生存戦略についてお話くださいました。

三宅先生が研究に入ったのは学生の頃。当時起こったカラシレンコン事件の原因である「ボツリヌス食中毒」という課題が目の前に出されました。そこでボツリヌス毒素が、人間の体内にある2~3万種類のタンパク質のなかから、1つのタンパク質だけを切って人間を死に至らしめることへの驚きと、そのメカニズムに感銘を受け、研究へと没頭していきます。

あの小さなバクテリアが、たった1匹でも人間を死に至らしめる――そこで何が起こっているかを知りたいというのが三宅先生の研究のモチベーションになっています。

バクテリアの「匠の業」のお話では、鞭毛それぞれが回転しスクリューのように速く泳ぐサルモネラや、巧妙な手段で人の細胞を使って自分が住みやすい住処を作る大腸菌などについて紹介。全長1マイクロメートル程度のバクテリアに、このようなメカニズムがいかにして作られたのか? 興味はつきません。

そして最後のキーワードが「共生」。2つの生物が共にそこに共生することで、資源が循環することを指します。例えば、メタン菌と酢酸酸性菌。メタン菌は二酸化炭素と水素と酢酸を基質としてメタンを産生します。一方、大腸菌など酢酸酸性菌は、メタンなどの炭素源をエネルギーとして、ブドウ糖などを分解してCO2や酢酸、水素を作ります。どちらか一方だと資源が枯渇してこの生物は絶滅するのです。

生物は環境の変化に作用します。柔らかそうに見えるからこそ、変化に応じて形を変えて存在し続けようとします。だから人と菌が共生していくことで、菌はそこの環境に柔軟に対応して人をやっつけるという術を獲得し、生存し続けているのだと三宅先生は考えます。

まだまだ謎の多いバクテリア。現在もどの細菌遺伝子が宿主である人にどう役立っているのか、詳しい解析が進んでいます。

単純なものだと思っていたバクテリアですが、とても複雑なメカニズムを持っていることに驚きました。この小さな存在が、将来的には人間が頼れるほど大きな可能性をたくさん秘めているのでは? と期待できるお話でした。

 

▼三宅先生からご推薦いただいた本
●もやしもん(石川雅之 著)
http://kc.kodansha.co.jp/title?code=1000000069

●恐怖の病原体図鑑(T.ハート 著)
http://www.nishimurashoten.co.jp/pub/details/401_349.html

●共生生命体の30億年(リン・マーギュリス 著)
http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_991.html

●日経サイエンス(2012年10月号)
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/201210.html

【取材日:2015年7月30日】※所属は取材当時