I-siteなんば「まちライブラリー@大阪府立大学」で2016年1月15日(金)に開催された第22回アカデミックカフェ。カタリストにお迎えしたのは人間社会学研究科の酒井隆教授、テーマは「まちの記憶~大阪らしさとは何か~」です。
酒井先生は、新世界や釜ケ崎、阿倍野など大阪の「ディープサウス」をフィールドにして、街に暮らす人々の視点から「大阪」について研究されています。
博覧会をきっかけにしてこのエリアに建てられた通天閣の地理的歴史的背景や、そして「王将」で有名な棋士・阪田三吉など通天閣にまつわる人々についての物語を展開した先生の著書「通天閣」は、2012年にサントリー学芸賞を受賞しました。
【http://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/detail/2012007.html】
前半の講演では、今も残る街の風景や姿を消してしまった風景の写真、そして映画「王将」の映像などから、街の移り変わりやそこに暮らした人々を見つめ、「大阪らしさ」とは、そして「通天閣」に人々が抱いたいくつかのシンボリックな意味とは、などの様々な興味深い見解が示されました。
一方で、変わり行く今の大阪にそういった「大阪らしさ」はどれだけ残っているでしょうか?という提示。昔の大阪と今の大阪はかなり変質しているのかもしれません。「昔の大阪は、旺盛に消費すると同時にそれ以上の生産が出来ていた街だった。」ある観客のひとことが広報担当者の心に残りました。
後半は質問コーナーから始まり、次第に観客を交えたフリートークタイムに。ブルース、落語、関西弁… 大阪らしさを彩るさまざまなテーマを生粋の大阪人たちと共に語りつくしました。
終了後も、観客のみなさんが持参された昔の大阪の街の写真をみんなで覗き込み、とても盛り上がっていました!
ふと窓の外を見ると、見えるはあべのハルカスと共にそびえる通天閣。この場所ならではのテーマと論客たちの語り合いを、通天閣が見守ってくれているような気がしました。
▼酒井先生からご紹介いただいた本
●ニッポン景観論(集英社新書)/アレックス・カー
●暴力の哲学(河出書房新社)/酒井 隆史
●通天閣(青土社)/酒井 隆史
【参考ページ】
第34回 サントリー学芸賞受賞 酒井隆史准教授にインタビュー(2012年)
http://www.osakafu-u.ac.jp/news/2012/20130125.html
【取材日:2016年1月15日】※所属は取材当時