I-siteなんば「まちライブラリー@大阪府立大学」で2016年3月23日(水)に開催された第23回アカデミックカフェ。カタリストにお迎えしたのは理学系研究科の多田俊治名誉教授。テーマは「たんぱく質の不思議~その形と、働きを知る~」です。

一般にタンパク質は肉や魚などに含まれる栄養素の1つという認識で、私たちにとって身近なものですよね。でもタンパク質の成分や働きなどについて、一体どれだけのことをご存知でしょうか? 今回のアカデミックカフェでは、タンパク質について長年研究されてきた多田先生に、その驚きの機能などについてお話いただきました。

タンパク質は動物界に共通する基本的な物質で、私たちの日常の機能の全てを担っています。人間には約3万種のタンパク質が存在し、代謝反応を制御する酵素タンパク質、生体膜に付着している膜タンパク質、免疫機能をつかさどる抗体である防御タンパク質など、それぞれ形や機能が異なります。例えばタンパク質の働きが不調になると、病気につながるそうです。

全ての生命のタンパク質は20種のアミノ酸から構成されていて、1本のひものように繋がった大きな分子。小さなタンパク質であっても20種の組み合わせは無限に近く、宇宙にある星の数より多いといわれています。またタンパク質は固有の立体構造を持つことによって働くことができます。

タンパク質の最終的な立体構造を取るために必要な情報はアミノ酸配列にあるのですが、その構造構築原理についての全ては未だに解明できていないため、配列情報から論理的に立体構造を求めることができません。構造原理の理解が進み、その情報をもとにした医薬品の開発などが期待されています。

プロジェクターを使用した講義は、タンパク質の構造問題、アミノ酸分子の表現、酵素の特徴など、先生による身振り手振りを交えた熱弁で進行。参加者も時おり先生に質問をぶつけるなど、充実した時間でした。

先生のお話から、タンパク質は全ての生命の活動を支える役割を担う大切な物質であること、まだ解明されていない神秘的な物質であることを知りました。研究者たちの絶え間ないタンパク質の研究が、未来の人類の幸せにつながることを期待しましょう。

▼多田先生からご紹介いただいた本
●『グルコサミンはひざに効かない 元気に老いる食の法則』(PHP新書)
山本啓一 著
https://www.php.co.jp/books/detail.php…

●『タンパク質の反乱―病気の陰にタンパク質の異常あり』(ブルーバックス)
石浦章一 著
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062572255

●『分子科学者が挑む12の謎』(科学同人)
分子科学研究所 編
https://www.ims.ac.jp/ims30/ims30_05.html
※この本は、当日、正木裕さんからご紹介いただいた本とのことです。

 

 

【取材日:2016年3月23日】※所属は取材当時