2016年12月1日(木)、I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」にて、第30回アカデミックカフェが開催されました。カタリストは教育福祉学類の山野則子教授。テーマは「子どもの貧困を考える」です。

貧困問題に関心のある、もしくは直面している学校の先生や事務員、スクールソーシャルワーカー、教師を志す学生など、多くの方々が参加。皆さんとのディスカッションを交えながら進行しました。

「子どもの貧困」。皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?子どもの貧困研究は、次の3つに焦点をあてることが基本的な枠組みです。1)物的資源や生活に必要な資源の欠如(現金やサービス、住宅、医療など)。2)ソーシャル・キャピタルの欠如(近隣、友人との関係性、学校、労働市場への不参加など)。3)ヒューマン・キャピタルの欠如(自分の能力を労働力に転換する能力の欠如)。

いま日本は、「子育て層全体の3分の1が孤立・貧困」という状況に陥っています。そうした親たちの多くが児童虐待に至ってしまう可能性があり、それが原因で子どもの問題行動や学力低下が発生。そして次にはその子が親となり、再び孤立・貧困に陥るという負の連鎖が起こります。子どもの問題行動の背景に「貧困」が埋もれている事例はたくさんあり、その認識と対応が重要です。

しかし学校の先生が子どもたちの問題に直面した時、個人では解決できないケースも。その時活躍するのが、子どもと家族を支えるための福祉と教育の仲介役としての専門職「スクールソーシャルワーカー」です。

例えば、学校外での医療・福祉のサービスが子どもたちに役立つのならその手助けをし、経済的に困っていれば相談できる機関を紹介するなど、子どもを取り巻く環境に働きかけて良い方向に導き、調整する役割を担うのです。

個別の事案にかかわることも必要だが、大きい枠組みで俯瞰して取り組まないと貧困は次の貧困を生んでしまう。学校、家庭、地域をつなぐ機能の制度化――つながる仕組みとして「学校のプラットフォーム化」が必要だと山野先生はおっしゃいます。

しかし現場の先生や職員さんは目の前の子どもたちが貧困問題に陥っている場合、どう対処すればいいのかわからず、悩みを抱えているのが現状。実際の現場に携わる参加者が、必死に悩みを打ち明ける姿が印象的でした。その場は解決しても結局、対処療法でしかない――貧困の渦中にある子どもたちがいかに逼迫しているか。やるせない思いがつのりました。

最後に、「今日の体験を“つなぐ”ことの意味」を投げかけた山野先生。子どもの貧困問題はすぐそばにあること、この日学んだ事を伝え、ディスカッションすることで、それぞれの問題を浮き彫りにし、共有することができたのではと感じました。私たち大人が担う役割は大きいのです。


▼山野先生にご紹介いただいた本

●エビデンスに基づく効果的なスクールソーシャルワーク(明石書店/山野則子著)
http://www.akashi.co.jp/book/b193958.html

●すべての子どもたちを包括する支援システム-エビデンスに基づく実践推進自治体報告と学際的視点から考える-(せせらぎ出版/スクールソーシャルワーク評価支援研究所(所長 山野則子)編)
http://www.seseragi-s.com/shopping/?pid=1457592686-698430

 

【取材日:2016年12月1日】※所属は取材当時