大阪府立大学は平成26年度に、文部科学省「大学教育再生加速プログラムAcceleration Program for University Education Rebuilding : AP」に採択されました。

このプログラムにより、本学はアクティブ・ラーニング科目を専門教育において体系的に位置づけるための一部先行導入やシステム構築、ラーニングコモンズをはじめとした学修環境の整備を進めております。

また、これらの学修成果を可視化するため、学生調査やルーブリックを取り入れた成績評価方法の普及などを行っております。

▼大学Webサイト 平成26年度採択事業/文部科学省大学教育再生加速プログラムについて
http://www.osakafu-u.ac.jp/affiliate/project/h26/#3

そしてこのたび、APの取組の一環として、全教員を対象とした「アクティブ・ラーニング手法導入状況調査」を行いました。その中で特徴的な取組を実践されている教員にインタビューを行い、ノウハウを共有する「Active Learning Reports」を刊行しました。

▼「Active Leaning Reports 第1号」
http://www.ap.osakafu-u.ac.jp/alr1/

本記事では第1号掲載レポートより、「ディスカッション型の学びで知と経験をつなぐ」という学びを実践されている、高等教育推進機構の吉井 泉 准教授のインタビュー記事を紹介します。吉井准教授

◆教員プロフィール
吉井 泉(よしい いずみ)准教授 高等教育推進機構
研究テーマ:視覚的情報処理に関する研究
担当授業科目:「健康・スポーツ科学概論」、「同演習I」、「行動と視機能」ほか

(テーマ)健康をセルフマネージメントする「健康・スポーツ科学演習」

Q. 先生の教育観について、お話しいただけますか?
私は「学んだことは、使えなければ意味がない」と考えています。「獲得した知識を活用する」ためには、まず状況の変化に「気づく」「感じる」ことが不可欠であり、さらに実行する意思が必要となります。この一連の流れがあって初めて学んだことが意味を持つと考えています。

講義の中で学生たちには、周囲の人やモノに関心を持ち注意を払うこと、また自ら実行する大切さを伝えています。幅広い知識を獲得し、実践・継続する、また変化に適切に対応すること。このことを学術的に理解することが、大学における教養教育の意義であると考えています。

また大学での健康科学教育は学校教育最後の機会であり、学生たちに科学的根拠に基づいた健康に関する知識を提供し、健康づくりを継続的に実践する資質を獲得させることを責務と考えています。

吉井准教授の研究説明①

Q. どのような授業をされていますか?
大阪府立大学の健康科学科目は、健康・スポーツ科学概論(講義)と同演習(実技)によって構成されています。平成28年度から演習科目の中で「健康づくりコース」をスタートしました。生涯にわたる健康づくりでは、自分自身で運動種目を選択し、実施頻度・強度・時間などを設定し、その効果を自己評価することが求められます。

近年、運動データを簡単に取得・管理できるウェアラブル機器やアプリが開発されており、本コースではこれらの機器を使用し、ランニングとウォーキングの実施についてセルフマネージメントできることを目指しました。

授業の序盤では、私が指定した距離とペースでランニングとウォーキングを行い、自身の運動実感と取得データ(心拍数、ペース、消費カロリーなど)との確認を行いました。中盤では、例えば「心拍数110~130拍で20分間ランニングし、200kcal消費する」など自分で目標設定し、データを確認しながら運動を行いました。終盤では、運動中にデータ確認をすることなく、目標達成できるよう運動を行い、活動後にデータを確認しました。活動後は受講生の運動実感とデータをもとにディスカッションし、次回の目標設定を行いました。

Q. 学生はどのように成長しますか?
「健康づくりコース」は、比較的スポーツや運動自体が苦手な学生が選択していました。そのこともあって、授業の序盤はやはり「やらさせれている感」がありました。

しかし授業を重ねるにつれ、みるみる自発的になっていき、終盤になると学生自ら「目標に足らなさそうなので、あと50kcal分少し歩いてきます」とか「残り時間がないのでペースアップします」と言いながら、データの確認なしでも運動の量や質をコントロールできるようになっていきました。

授業終了時のレポートでは、「とても理論的・科学的な授業で、初めて体育が楽しいと思えた」「人生にとって運動は価値のあることだと実感した」「運動するとしんどいと思っていたけど、ややきつい運動をすると心も体も軽くなった」など、体育の授業や運動実施に対するアレルギーの解消を伺えるコメントがありました。

また「授業以外でも「必要な運動量が確保できているか?」「足りていないからエレベータを使わず階段を使おう」「食事を少しセーブしよう」と考えるようになり、食事と運動のバランスを取りながら日々の生活を送るようになりました」というコメントもあり、授業成果を日常生活へ適用できるようになってくれたことを大変嬉しく思いました。

吉井准教授インタビュー▼参考リンク
文部科学省AP大阪府立大学プログラムWebサイト

【取材日:2017年4月26日】※所属は取材当時