2017年6月16日(金)、I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」でアカデミックカフェが開催されました。カタリストは大阪府立大学 人間社会システム科学研究科 青木賜鶴子教授。在原業平をモデルとする「伊勢物語」を多くの絵巻・絵本と共に鑑賞する「絵で読む伊勢物語」の第2回目です。
今回は伊勢物語の旅でも特に有名な「東下り」が中心。第7段からの伊勢・尾張にはじまり、三河の八橋から駿河の富士山を経て隅田川へと旅して行く様子を、豊富な資料と共に解説くださいました。
とりわけお話が盛り上がったのが第9段。わが身を無用のものと思い込んで、京を離れ東の方に住むべき国を探そうと古くからの友人たちと一緒に出かけた主人公の男。三河の八橋にたどり着いたところ、その沢に燕子花(かきつばた)が趣のある様子で咲いていた。そこで同行の人から「『かきつばた』という五文字を句の頭に置いて旅の思いを詠んでごらんなさい」と言われて男が詠む場面です。
先生による解説後、この場面に基づいて描かれた絵などを鑑賞しました。江戸時代の画家・尾形光琳作「燕子花図屏風」は皆さんもご存知なのでは? 郡青と緑青の濃淡によって燕子花の群生が描かれた国宝です。でもアメリカのメトロポリタン美術館に所蔵されている、10数年後に発表された同じく光琳作の「八橋図屏風」には、燕子花と、前作で描かれなかった八橋の姿が! 別の作品では、男が供人友人たちと共に燕子花を眺めて思いを馳せる場面が表現されています。
このように同じテーマ、場面を発想の源としながらも、作者の視点や作風により多彩な作品が世に生み出されています。先生の軽妙なお話と共に、そんな作品を比較して鑑賞できるのが、この講演の面白さでもあります。学生時代にこのような授業があれば、古典も美術ももっと好きになったかも! なんて思いました。
【取材日:2017年6月16日】※所属は取材当時