マツダ株式会社に勤務されている本学工学部のOB、大原 秀隆さん。大原さんは1991年工学部金属工学科卒業後、マツダ株式会社入社し、ロードスターの車種担当、海外出向、海外自動車メーカーとの協業などさまざまな業務に携われ、現在は技術本部モノ造り革新推進チームの主幹をされています。

取材当日は、大原さんのご好意でマツダミュージアムと製造工場を見学させていただきました。大原さんの仕事にかける情熱が詰まったインタビュー、ぜひご覧ください!マツダミュージアムにて

 

◆大原 秀隆(おおはら ひでたか)

大原 秀隆さん マツダ株式会社 技術本部 モノ造り革新推進チーム 主幹

1991年 大阪府立大学工学部金属工学科 卒業
1991年 マツダ株入社(以下部署はマツダ)
1991年 技術本部海外技術部 CKD車体組立生産技術担当
1993年 技術本部車体技術部 プレス技術Gr.
1996年 技術本部海外技術部 主任・主幹 コロンビア、エクアドル、中国海南等の現地拠点の新車量産準備を支援
2006年 技術本部商品生技部 主幹 RX-8、ロードスターの車種担当として量産準備をマネジメント
2011年 マツダ長春技術室生技統括部 部長 中国長春に出向し3モデルの量産準備を推進
2014年 長安マツダ有限会社生産技術部 副部長 中国南京に出向し2モデルの量産準備を推進
2016年 技術本部生産企画部 副主査 ロードスター&アバルト・スパイダー副主査
2017年 技術本部モノ造り推進革新チーム 主幹

2012年 山口大学大学院技術経営研究科 卒業 専門職大学院、MOT(Management of Technology)

 

【インタビュー録】
1、マツダ株式会社(以下、マツダ)に入社を決めたきっかけは?
バブル期で教授の推薦による就職先がたくさんある時代でした。工学部で機械が好きだったので自動車業界に就職したいと考えました。大企業も魅力的でしたが中規模の会社の方が若い頃から色々な経験を積ませてもらえるのではないかと考え、マツダで働きたいと思いました。

 

2、現在働かれている技術本部モノ造り革新推進チームとはどのような部署ですか。
簡単に説明すると「マツダブランドを永続的に発展させるために、顧客にとって付加価値の高い商品をいかに高い効率で造るか」を考える部署です。

例えば、極端な言い方をすると、単に効率を追い求めるだけであれば、1種類の商品を大量生産すればいい。しかし、顧客のニーズは多種多様です。私たちは相反する二つの特性のトレードオフを打破し、技術革新を伴う様々な商品を開発しながら単一車種同等の効率で生産する手法を追求しています。
具体的には「一括企画」「コモンアーキテクチャー」「フレキシブル生産」という、業界でも注目されている手法でモノ造りに取組んでいます。

「一括企画」とは、開発の初期段階から生産技術部門、開発部門、購買部門、品質部門、物流部門、さらには部品のサプライヤーまでが一体となり、将来を見通して世代群の商品を一括で企画するやり方です。立場の異なるメンバーが意見を出し合うので擦り合わせに苦労が伴いますが、お客さまの喜ぶ顔、私たちのクルマがお客様の人生に輝きを与えることを願いながら日々仕事に取り組んでいます。

これらの取り組みによって、例えばマツダらしさを表現するデザインテーマ“魂動(こどう)”を実現しました。その企画を基に、世代商品群の設計仕様の共通化を図る「コモンアーキテクチャー」と、一つの生産ラインで多種少量の生産ができる「フレキシブル生産」を追求し、単一車種の大量生産とほぼ同じ効率で、多車種を一つの生産ラインで製造することに成功しました。

マツダミュージアムパネル展示

3、府大に進学されたきっかけを教えてください。また、在学中はどのような学生でしたか。
出身が愛媛県松山市で高校までのんびり過ごしてきた反動でとにかく都会に出たいという思いがあり、最も近い都会である大阪に行こうと考えました。

学生時代は空手部に所属していて、至誠寮(※)に住んでいました。勉強はほどほどに、昼は空手、夜は先輩や後輩と酒を酌み交わす、とにかく楽しい4年間を過ごしました。

※至誠寮とは、昭和17年(1942年)11月14日に竣工し、70年後の平成24年(2012年)3月に廃寮となった伝統ある男子寮。例えば、グンゼ株式会社 児玉 和(こだま のどか)取締役相談役(前 社長)も木造時代の寮生。

 

4、部活動の中で、社会人になってから生かすことができた経験はありますか。
空手部では主将を務めていたのですが、部活を通じてリーダーシップやコミュニケーション能力が培われたと思います。企業での仕事はチームでものごとを協議して決定することの連続です。そういう場で比較的スムースにイニシアティブを取ることができました。周りを巻き込み、協力を誘発していくことが得意になったのは部活動の経験があったからだと思っています。

ただ、大学であまり勉強をしていなかったので、入社時は優秀な同期と比べて基礎知識が備わっていませんでした。海外技術部に配属されたのですが、同期は理系なのに英語が堪能な人ばかりでとても焦りました。だから、最初の2年間は猛勉強しました。みなさんは、学生時代には学生らしくきちんと勉強することをおすすめします。

マツダミュージアムパネル展示

5、なぜ最初の配属先として海外部門を希望されたのですか。
入社当時は商品企画をやりたいと思っていました。当時のマツダの紹介資料にアメリカで商品のマーケティングや企画を行っている記事があってとても魅力的に感じました。臆することなく海外勤務を希望すれば商品企画へ配属される可能性が高いだろうと考えました。

しかし、実際には希望がかなったのは「海外」という部分だけで、配属先は商品企画ではなく生産技術でした。希望した部署ではなかったものの、実際に働き始めてみると、やればやるほど楽しくなりどんどんのめり込んでいきました。

この経験から「仕事というのはまずは与えられたことをしっかりやってみることが大切だ」ということを学びました。何年か続けてみてどうしても違うと感じれば方向転換すればいい、まずは受け入れてやってみることが大切だと思っています。

 

6、その後もたくさんの海外経験を積んでこられたと伺いましたが、海外ならではの大変さはありましたか。
中国で生産技術部門を任されていた時は社員の離職率の高さに頭を悩まされました。技術の仕事は一般に能力の習得に5年~10年といった長い時間を要します。日本人は会社への帰属心が強く一旦入社すると辞める人は少ないので、計画的に時間をかけて教育ができ、その人が組織の力になっていきます。

一方で中国、多くの他国でも同じですが、スキルを身に付けるとすぐに条件の良い会社に転職してしまう人が多いです。教育のために日本に派遣したり日本からインストラクターを招聘して教育をしたりと多大な労力とお金を費やした末にあっさりと辞められると本当にガッカリします。しかしこれは考え方の違いであり辞めた人に文句を言っても始まりませんし、欧米企業は日系企業よりローカル社員の定着率が高いという事実もあるので、その環境に応じた策を講じるしかありません。

経営判断もあり処遇や給料などにすぐに手を付けるのは難しいので、対策として「文書化」を徹底しました。その人が学んだことや身につけたことを文書化させて組織に形式知として残し、その人が辞めても後任者がそれを使うことで同等の機能が果たせる、つまり人ではなく組織に知見や能力が継続的に蓄積するように工夫しました。

マツダミュージアムパネル展示

7、最近、大学院でMOT(技術経営 Management of Technology)を取得されたと伺いました。どのようなモチベーションで大学院に通うことを決めたのですか。
個人的に学生時代に勉強をしなかったことが常に後悔として残っていて、いつか改めてしっかり勉強したいという思いがありました。また、経営やマネジメントに関わる仕事の比率が増えてきたこともあり、自己や会社の技術や知見をいかに収益に繋げていくかを学びたいと考えていました。その時に山口大学が広島サテライトキャンパスでMOTの授業を行うことを知り良い機会だと思い入学しました。

実際に授業を受けてみると、仕事の中で感じていた課題やその解決策が学問として体系化されていたり、他社の事例を分析することで解決のヒントが得られたりと非常に有益で楽しく、現在の仕事に活用できています。

 

8、仕事の中で大切にされている言葉や持論があれば教えてください。
仕事は「楽しくない」と思って取り組むと、一層つまらなくなってしまいます。そのため、与えられた仕事には常に好奇心を持ち、どうすれば楽しく取り組むことができるか考えるようにしています。自分が楽しむことができ始めるとおのずと周りの人たちにも伝わっていき、評価もしてくれます。すると自分の影響力や裁量がどんどん広がっていき、仕事の自由度があがっていくと思っています。

実車試乗

9、仕事の中で時代や社会の変化に応じて、これまでのやり方を変えなければならないことがあるかと思います。その時、心がけていることはありますか。
価値観の軸をぶらすことなく変化に対応することです。マツダでは常に自分の仕事がお客様の価値にどう繋がっているのかを考えるようにしています。「お客様に喜んでもらえる車を造るために自分はどうすべきか」ということを常に考えて仕事をするということです。

例えばデザインや設計部門からお客様に喜ばれる新しいデザインや機能の提案があった時に、生産技術部門が「対応できません」と初めから匙を投げるのではなく、とにかく受け入れて挑戦してみる、更には生産技術から新しい価値が提供できるよう提案していきます。この「お客様価値」のように価値観の軸をぶらさず共有することで、大きな変化に直面する際にも全員が迷いなく同じ方向に進むことができます。

※※※マツダのコーポレートビジョン※※※
私たちはクルマをこよなく愛しています。
人々と共に、クルマを通じて豊かな人生を過ごしていきたい。
未来においても地球や社会とクルマが共存している姿を思い描き、
どんな困難にも独創的な発想で挑戦し続けています。
1.カーライフを通じて人生の輝きを人々に提供します。
2.地球や社会と永続的に共存するクルマをより多くの人々に提供します。
3.挑戦することを真剣に楽しみ、独創的な “道” を極め続けます。

 

10、最後に、本学の学生にエールをお願いします。
府大にはいい思い出がたくさんありますし、同級生や先輩・後輩も尊敬できる優秀な人ばかりでした。ただ、私が在籍していた頃は、第一志望の大学に行けずに府大に入り、学歴コンプレックスをなかなか払拭できず沈んでいる人が多かったように思います。私自身は府大が第一志望だったので余計にそう感じたのかもしれません。

しかし、優秀な人はどこに行っても自ずと頭角を現しますし、府大卒業生の実力は社会で高く評価されています。貴重な学生時代を後ろ向きな気持ちで過ごすようなことをせず、自分にも大学にも自信を持ってしっかりと勉学に励んでもらいたいと思います。

実車について説明の様子

【参加した学生の感想】

大原さんのお話を伺い、仕事をただこなすだけでなく好奇心を持ち楽しむことを日頃から心がけていることが伝わってきました。
このモチベーションが大原さんの豊富な経験に繋がっていると思います。
僕は2年後には社会人ですが、大原さんのように与えられた仕事の魅力的な部分を見つけ、それを周りの人たちに伝えられるような人材になりたいと思います。
(大学院工学研究科 電子・数物系専攻 電子物理工学分野 博士前期課程1年 和泉 享兵)

 

【取材:西野 寛子(広報課)】※所属は取材当時
【取材日:2017年4月23日】