2017/6/15に中百舌鳥キャンパスで行われた公開講座「関西経済論」に、本学の生命環境科学部獣医学科ご卒業で、神戸市立須磨海浜水族園で獣医師を務める毛塚千穂さんが登壇されました。

講演タイトルは「リアル水族館ガール~水族館の裏話~」。獣医師として、水族園やそこで暮らす生き物たちを見つめた6年間の想いを、率直に語っていただきました。

 

◆毛塚 千穂(けづか ちほ)

須磨海浜水族園 獣医師
埼玉県生まれ。新潟高校卒。
2011年3月 大阪府立大学 生命環境科学部獣医学科 卒業。
2011年4月 神戸市立須磨海浜水族園 獣医師として就職、現在に至る

 

講演の冒頭で、自己紹介とともに、府大への入学・在学中の思い出なども語ってくださった毛塚さん。

幼い頃から動物が好きで、それを仕事にできればと獣医養成の大学を目指したこと、堺にある中百舌鳥キャンパス(当時は、中百舌鳥キャンパスに獣医学科の学舎がありました)は、「都会の中の田舎」の雰囲気で昔から大好きなこと、などお話されていたのがとても印象的でした。

1,000人規模のホールでお話するのは初めてだった毛塚さん。若干緊張もされながらも、動物飼育の動画や写真を交えて、海獣やペンギンの健康管理やイルカ等の異物誤飲事故の紹介など、水族園の日常や大変なこと、うれしいこと、意識していることなどを等身大でお話しされました。

 

 

日本の水族館では数が減少しているラッコの飼育については、加齢による病気の原因を探るため、母校である大阪府立大学(獣医病理学研究室の山手 丈至 教授、獣医外科学教室の秋吉 秀保 教授)に依頼し、病理組織検査やMRIなどで脳の状態や死因を調査。今までに報告がなかった事例として、共同で研究発表もされたなどのエピソードを紹介いただきました。

特に、ここ数年水族園で続いているベビーラッシュについての話は印象的で、2016年に16年ぶりに誕生したバンドウイルカの赤ちゃんのことや、赤ちゃんイルカのヒレが固まるまでの泳ぎがたどたどしいあいだ、壁面にぶつからないようにスポンジ棒で懸命に赤ちゃんを守る飼育員のこと、ゴマフアザラシの赤ちゃんや、その貴重な出産の瞬間の動画などが紹介されました。

 

「獣医師になった時からずっと繁殖に関わりたかった」と話す毛塚さんが、命を守り繋ぐことに情熱を注ぐ医師でもあり、また動物たちにとっての第2のお母さんのようにも映りました。

講演の最後には、須磨水族園初代園長の吉田啓正さんが詠んだ「沈黙の海」という詩を朗読。

(吉田園長が後につくった)かごしま水族館の展示終盤で、一通りの魚たちを見終わった後に出てくる生き物が全くいない水槽の横に掲げられているそうです。

 

「沈黙の海」

青い海 なにもいない

もう耳をふさぎたいほど

生きものたちの歌が聞こえていた海

それが いつもまにか、なにも聞こえない

青い海

人間という生きものが

自分たちだけのことしか考えない

そんな毎日が続いているうち

生きものたちの歌がひとつ消え

ふたつ消えて

それが いつのまにか なにも聞こえない

青い 沈黙の海

そんな海を子供たちに残さないために

わたしたちは 何をしたらいいのだろう?

(出展:吉田啓正著/ジンベエザメの命 メダカの命~水族館・限りなく生きることに迫る~)

生き物に関わるものとして、次の世代にこの地球と多様な命を受け継ぐものとして、この詩を思いながら自らを振り返るとおっしゃっていました。聴衆も、それぞれに「何ができるか、何をすべきか」を考えたことかと思います。

毛塚さん、ご多忙の中のご講演、本当にありがとうございました。

 

●ミチテイク学生メンバーによる毛塚さん取材記事もご覧ください!
動物たちを見守る獣医さん 毛塚千穂さん(須磨海浜水族園)
(大阪府立大学Webマガジン「ミチテイク・プラス」/2014.7)
http://michitake.osakafu-u.ac.jp/2014/07/09/og_kedukachiho/

●参考サイト
須磨海浜水族園Webサイト
http://sumasui.jp/

 

【取材:皆藤 昌利(広報課)】
【取材日:2017年6月15日】※所属等は取材当時