2016年12月、「一般物体認識分野で、府大生が世界一の認識精度を持つニューラルネットワークを開発」という研究成果をプレスリリースし、様々な注目を集めた工学研究科 博士後期課程1年の山田良博さん。

山田さんインタビュー風景①

その研究成果の関連で、今年も様々な賞を受賞されています。

▼工学研究科の山田良博さんが2016年度PRMU研究奨励賞を受賞
http://www.osakafu-u.ac.jp/ce-news/nws20170606/

▼知能情報工学分野 山田良博さんが電子情報通信学会 パターン認識・メディア理解(PRMU)研究会で2017年2月の月間ベストプレゼンテーション賞を受賞
http://www.eng.osakafu-u.ac.jp/archives/2734

 

工学の情報分野で「一般物体認識」を研究テーマとし、日夜研究に没頭する山田さん。
研究室やキャンパスで、いろいろなお話をお伺いしました。

山田さんインタビュー①

■プロフィール

大阪府立大学大学院 工学研究科博士後期課程1年 山田 良博

2011年大阪府立大学工学部入学。2012年の学域制移行により最後の工学部生となる。
大阪府立大学工学研究科 電気・情報系専攻 知能メディア処理研究室に所属し、一般物体認識分野の研究に日夜励む。
一般物体認識の従来手法PyramidNetとResDropを組み合わせたPyramidDropをベースにPyramidSepDropという手法を提案する事により2017年5月まで世界一の精度を達成。
現在、打ち破られた記録を超える手法を持ち合わせるが、更なる研究でそのまた上をめざす。

 

高校時代はどのような学生でしたか?

京都府立嵯峨野高等学校へ通っていました。
実は生物に凄く興味がありました。「もやしもん」という漫画が好きで、その影響もあり一番好きなジャンルは「菌」でした。「もやしもん」が、府大と関係があるのは当時知らなかったのですが…

大阪府立大学と「もやしもん」の関係についてはこちら。
▼「もやしもん」作者・石川雅之さん×生命環境科学域・大木先生 ライブラリートーク
http://michitake.osakafu-u.ac.jp/2015/06/05/masayuki_ishikawa_moyashimon/

モジホコリという粘菌が当時少し人気で、この菌は迷路を解く能力を持っているんです。つまり最短経路問題を解く力がある。何故菌がそんな力を持っているか。このモジホコリを調べていく内に生物の持ち合わせる「情報」処理に興味を持つようになりました。そしていつの間にか自身の興味は生物から情報へシフトしていきました。

受験の際、私は京都の人間なのでもちろん大阪府立大学(以下、府大)は知っていました。前期試験では京都大学を受験したのですが、一番近くて遠い大学でしたね(笑)。中期で府大を、後期で京都工芸繊維大学を受験したのですが、高校の先生の勧めで府大に入学しました。

 

現在、どのような研究をしているのですか?

「一般物体認識」という分野の研究をしています。自動運転技術のための認識カメラなんかが今では一番分かりやすいでしょうか。

人間は色々な犬を見ても「犬」という認識が出来ますが、機械ではそうもいきません。犬種は様々であらゆる角度から見ても犬だと判別する事はとても難しい事です。簡単に言えばこの整合性を上げる研究しています。人間の認知の基本は「目が何を見ているか」が重要なんです。これを解き明かす事によって人間の動作を再現する事が目標ですね。

山田さん研究室で

今日、ロボットと人間の関係性など、さまざまな議論が取り上げられますがどのように思われますか?

この議題、大好きなんです。(笑)

「ロボット・AIは人を襲う」のか…今の技術の延長にはそれは無い様に思います。あくまで人間ベースの機械であり、今のシステムは人間のマネをしている計算機能に過ぎません。極論を言えば「電卓は人を襲うか?」という事です。

しかし、人がどの様な仕組みで動いているか定かではありません。人間の機能全てを学習させた機械は恐らく人間に近くなると思いますし、その時どうなるかではないでしょうか。よく研究室の仲間とこの話になるのですが、やっぱりSFの世界は興味ありますよね。

また、ロボットと人間の共同社会がとても大切だと思います。監視カメラをずっと人間が見続ける仕事というのは人為的ミスが発生したり、そもそも効率的ではありません。ロボットができる事はロボットにやってもらう。できない事を人間がする。そんな社会を創る一員になりたいですね。

研究室でインタビューに答える山田さん

研究がとてもお忙しそうですが、休日は何をされているのですか?

最近、クロスバイク(自転車)を買いました。府大の近くでマンションを借りて生活しているのですが、ここから難波まで自転車で走って美味しいものを食べる事が好きですね。

また、散歩しながら考え事をする事もよくあります。もともと、物体認識に興味があって物体認識について知るのも趣味のようなものだったので、私の場合は趣味と研究はあまり変わりがない様に思います。

府大に「府大池」という池があるのですが、夏になると浮草が大繁殖して真っ赤になるんです。たまに鳥がそこを陸だと思い着地しバシャバシャしているのを見て「なぜこの鳥はここに着地したのか」を考えます。そして、結局自分の研究の事に結びついたりして研究室に戻ってしまうんです。

 

大阪府立大学はお好きですか?

前期で京大を受験していますから、「京大に行っていれば…」なんて思う事も入学から半年くらいありました。でも、周りの友達が熱心に学問や部活動に打ち込む姿を見る事で自分も切り替わった様に思います。

府大は専門的かつエキサイティングな授業が多いです。他の大学には広く浅く学べる大学もありますが、府大は深く狭く。どちらが良いとは一概に言えないですが、自分にはハマった様に思います。

もちろん「もしも」の話になるので比べようがないですが、学問は「木」の様なものだと私は考えています。根があり幹があり枝が分かれ葉がありその先に実がなる。この大学が自身の幹を太くしてくれたおかげで良い実がなっていると思っています。

研究生仲間と

物体認識的視点や考えって何かお持ちですか?

人間は各々が他者とは違う認識をしていると考えています。

同じモノを見て同じコトを感じる前提で社会は成り立っていますが、日本人と北米人では物体の基礎的な感じ方が異なる(※1)ことが既に研究で知られていたりと、同じコトを感じているようで、個人差が存在することが分かっています。

例えばウサギにもアヒルにも見えるだまし絵(※2)を見て『ウサギ』と感じる人も居れば『アヒル』と感じる人もいます。物体認識を人に近付ける上ではこうした個人差をいかに扱うかが重要になります。

(※1) 日本の人と北米の人ではものの探し方が違う
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/170325_1/01.pdf

(※2) Illusion Forum イリュージョンフォーラム 錯視 だまし絵 ウサギとアヒル
http://www.kecl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/rabbitAndDuck/ja/

そもそも私たちがシステムを組むベースの「人間」とは何なのか。自分と他人とが同じではない事を認知した上で、このシステム上のベースである「人間」を創る事は容易ではありません。

しかし、世の中には勉強が得意な人もいれば運動や音楽が得意な人もいる。皆が同じではなく得意な事を見つける事が非常に大切だと考えています。私にとっての「得意」はこの物体認識の世界であったわけですが、この考えを大切にしているからこそ世界一を取れたのだと思っています。

勉強って目の前のタスクを消化すると思うと大変な事に思うのですが、自分の得意を生かし、幹を太くする。その先には美しい実が成る事を意識する事が大切なのではないでしょうか。

 

【取材日:2017年6月22日】 ※所属・学年は取材当時