2017年4月28日、図書館が主催する新入生向けシリーズ企画「Library Month」の1企画として、本学の総合科学部卒業生で芥川賞作家の柴崎友香さんによるトークイベント「ライブラリートーク」が後援会の協力のもと総合図書館中百舌鳥ロビーにて行なわれました。

会場には学生が多数参加し、学生時代の読書体験や図書館エピソードのほか、現在の作家活動における図書館活用法などを、お話しいただきました。

■プロフィール
柴埼 友香(しばさき ともか)

1999年、大阪府立大学総合科学部国際文化コース卒業。総合科学部では地理学を専攻(現在、地理学は現代システム科学域環境システム学類で学ぶことができます)。写真部に所属し、梅田や心斎橋など街の風景を好んで撮影した。卒業後、機械メーカー勤務を経て『きょうのできごと』で作家デビュー(同作は行定勲監督により映画化)。
2007年『その街の今は』で織田作之助賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、咲くやこの花賞を受賞。
2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞受賞。
2014年『春の庭』で芥川賞受賞。
2017年3月に日本地理学会学会賞(社会貢献部門)受賞。

-図書館との出会い   

大阪市大正区出身で、自宅から自転車で15分くらいの場所に大阪市立中央図書館あり、小学校高学年の頃から遊び場として当たり前のように通っていました。

今は改装されて、地下6階まで書庫がある立派な建物ですが、
私が小学生の頃はまだ古い建物で、子供の図書館というのが隣の別館にあり、そこによく友達と行っていました。

当時は、本を読むよりも漫画を描くのが好きで、友達と一緒に自習室でわら半紙の裏に漫画を描いて回し読むのが楽しみでした。

そんな事もあり、図書館という場所を身近に感じ、小学校でも図書委員になり、その頃から本が大好きになりました。

図書委員なので放課後の活動中は本が読み放題。
読みたい本は、ほとんど読んでしまったので、
カウンターの裏のスペースにPTA用の貸し出し本があり、
そこの本も勝手に読んでいたのが小学校時代の図書室の思い出ですね。

-大学時代に興味を持ったこと     

大阪の成り立ちを学ぶ地理の授業があり、それがとても面白かったんです。

自分が今、暮らしている町がどういう理由でこんな構造になっているのか?
どういう歴史があってその地名がついて、今の姿があるのか?と、
解説されていて、それが目から鱗でした。

何気なく暮らしてきた町にもいろいろな成り立ちがあるんだと興味をもち、
大学時代は小説よりも地理関係の本ばかり読んでいました。

特に、風景とは何か?
という事に興味が沸き、

関連する地理の本や、現代史の本をたくさん読んでいました。

小説家になってから、大学で地理の勉強をしていたと話すと、「小説とは全然関係ない勉強されていたんですね。」とよく言われますが、私としては大いに関係があると思っています。
オギュスタン・ベルクというフランスの地理学者の言葉で、「風景とは人間と自然の関係だ」というのがあります。

これは、街の構造には、人の考えが現れている。という事なんです。

こういう風になれば便利だな。と思うことや、時の権力者が自分の財力を示したいが為に街を大改造したりする。

人の考えた事、自然と人間との接点が形になる、今、目に見えているのが『風景』なのです。

この考え方が似ていて、何かに興味が沸くこと・人間の考えている事が面白いなと思うこと。それが目に見える形になって、小説として現れます。

特に、2006年に出版した「その街の今は」という作品は大学時代の卒業論文で集めた資料や写真がそのまま小説にも登場しています。

-海外の図書館

仕事で海外に行くことが増え、いつも各都市の大学を案内してもらい図書館もいくつか見学しました。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校に、世界的に有名な図書館があります。

そこで日本の作品がどのように展示されているのかを探してみると、棚が東アジア(日本・韓国・中国)と一括りになっていたのです。

もちろん、その棚の中でもジャンル分けされており、文学、歴史、社会、経済などいろいろな区分はあるのですが、日本・韓国・中国と別々ではなく、日韓中の文学、日韓中の歴史となっていました。

アメリカから見れば、東アジアの歴史、東アジアの日本というひと纏まりになるのだと感じました。

棚の並び、本の並びを見るだけで、見えてくるものがある。

本の並びが違うという事を知るだけでも、日本と違う角度から物事を読み取り、感じることが出来ました。

●会場からの質問 『小説の役割とは?』 

日常生活のしがらみの中で、友達関係はこうじゃないといけない。とか、
仕事とは、こうあるべきだ。とか、自分の経験で考えが凝り固まってしまう事があると思います。

そんな時に小説は、もう一つの別の基準を持てたり、別の世界を用意してくれるものかなと思っています。

たとえば、小説の登場人物で、すごく苦手だな、嫌だなと思う人が居ても、実際に友達や家族になりたくないけど小説だから許せる。とか、こんな考え方の人がいるのだ。と認識できたり。

文字を読んで、身体の中を通して、その人の思考回路や感情を体感できるものだと思うので、今まで知らなかった別の考え方を提示してくれたり、こういう考え方や世界もあるのだと気づかせてくれます。それと、知識をストックできるもう一つの自分の部屋。それらを吸収できる事が小説の役割だと思います。

●会場からの質問 『図書館と本屋のそれぞれの魅力を教えて下さい』 

本屋の魅力は、新しい本や話題の本が分かりやすく置いてあることですね。

図書館の魅力は、今は販売されていない本を取り扱っていることや
過去の長い歴史が集積されているのが一番だと思います。

本屋だと売れないと棚に並ばないような本も、
図書館には多数ありますから。

今はネット社会で本をインターネットで探したりもできますが、
図書館や書店で、気になった本を探して棚を閲覧していると、
その中に、自分の興味のあったことに関連する新たな本に出会えたり、

気になるワードを見つけて新しい発見があったり、
思いがけない気付きがあります。

棚を眺めるのが楽しかったり、いろいろな事に興味がもてるキッカケになる。
それが図書館と書店どちらにもある大きな魅力ですね。

■参考記事
Webサイトニュース
本学卒業生 柴崎友香さんが芥川賞を受賞(2014年7月18日)
https://www.osakafu-u.ac.jp/news/nws20140718/

【取材:皆藤 昌利(広報課)】
【取材日:2017年4月28日】