7月に開催された「第40回鳥人間コンテスト2017」。過去6回の優勝を誇る強豪の学生団体WindMill Clubですが、昨年まで出場していたタイムトライアル部門がなくなったため、今年は12年ぶりのディスタンス部門出場となりました。
部員たちにとって経験のない未知への挑戦。大会を直前に控えた、代表、設計主任、パイロットに、これまでの苦労や意気込みをインタビューしました。

【代表】片山 駿さん(工学域 機械系学類 海洋システム工学課程 3年)

―入部したきっかけを教えてください

ウィンドミルクラブ代表 片山さん

せっかく府大に入学したので府大でしかできないことをしようと思って。先輩から鳥人間あるよと言われて作業体験をしてみたら、ひたすら打ち込めるし楽しそうだと思ったので入部しました。
鳥人間の名前は知っていたけれど、高校時代はそこまで熱心に見ていたわけではなかったです。

―今年の機体の名前と由来を教えてください

機体名は「MozculairII(モズキュレア・ツー)」です。
もともと、タイムトライアルに出るために去年の11月から名前を考え始めていました。名前の由来は、ドイツのスピードを競う競技で賞を取った機体であるMusculair(マスキュレア)からきています。府大は地元との関わりが深い大学なので、地域の鳥の名前である百舌をいれてモズキュレアにしました。
最初はモズキュレアという名前を付けていましたが、12月にタイムトライアル部門がなくなることが分かって、ディスタンス用に設計し直したのでIIに。元のマスキュレアにもIIがあったので、それを模しました。

―部員のなかで役割はどのような分担になっていますか?

機体の主要部分を作っているのは2、3年生です。6人くらいで主翼と尾翼を担当、2人で胴体、3人でプロペラ作りをしています。後のメンバーや1年生は機体の外を覆っているフェアリング(コックピットのまわり)などの部品を作ってもらっています。
設計の中心は3年生です。3人で主翼・胴体・プロペラをそれぞれ担当しています。
4年生は3年生の設計をアドバイスしたり、ほかの作業を見守ったりしています。
僕は代表の仕事をしながら主翼を作っていました。

―昨年まで出場していたタイムトライアル部門の廃止を聞いた時の心境はいかがでしたか?

工房の様子タイムトライアル部門がなくなったと知ったときはびっくりしました。前触れもなかったので僕自身だいぶショックを受けました。ウィンドミルとしても、タイムトライアルに出られなくなってもここで活動を終わらせるのではなくディスタンスでやってみよう、という流れになるまで2週間くらい話し合いました。部員の中には落ち込んだ人ももちろんいました。
ディスタンス出場に反対する人はいなかったですけど、どうにかしてタイムトライアルで出られないかな?という声は上がりました。それでも主催者側での変更なのでどうしようもなく、ディスタンス出場を目指そうということになりました。

―これまで一番大変だったことは何ですか?

部として一番大変だったことは、タイムトライアルがなくなったことです。途中まで準備していたので。設計は特に間に合わせるために苦労したと思います。
僕に限って言うと、例年のタイムトライアルとは大会の流れが違っていて自分たちの陣地がプラットフォームから遠くなったり、陣地が密集している場所だったりしたので、動きを考えることが大変でした。

―本番での作戦はありますか?

正直ディスタンスに出場すること自体手探りなのですが、風の様子を見て北か南かの方向を選んで、あらかじめ決めた地点をGPSで機体を確認しながら方向を決めます。無駄な動きをして反れてしまわないよう、直線距離が伸びるように確認していこうと思っています。

―チームとしての抱負を聞かせてください

やり残しがないように、最後まで全力を尽くします。パイロットの赤瀬に余計な負担をかけないよう調整がんばっていこうと思います。

【設計主任】柳澤 真由さん(工学域 機械系学類 機械工学課程 3年)

―入部したきっかけを教えてください

ウィンドミルクラブ 柳澤さんもともと工作とか手芸が好きだったので、ウィンドミルではいろんなものを作ったり、いろんな道具を使っていたりするのを見て楽しそうだと思いました。1年生の時にテストフライトを見て、先輩の姿を見て入部を決めました。
女子部員は、先輩に2人、同期にもう1人で私を含めて4人です。先輩に女子がいてよかったです。いなかったら入部していたかどうか分かりません(笑)

―設計主任に決まった経緯を教えてください

設計担当は3人です。毎年4人なんですが、今年は私が翼とフェアリングを、他2人が胴体とプロペラを設計しています。例年、主翼を設計する人が主任になることが多いです。
私が翼を設計した後、その抗力に合わせてプロペラを設計してもらいます。そういったところで指示を出したりしました。
パイロットの赤瀬にはいろいろ意見をもらって、最終的に良い機体になったと思います。よく喧嘩して泣かされましたけど(笑)

―設計主任を任された時の心境は?

危険性に繋がるのがパイプの設計です。カーボンパイプを使って翼を作っています。カーボンパイプがパイロットの荷重に耐えられないと危険ですが、重過ぎると長距離飛行が難しくなるので先輩からもアドバイスをもらって設計しました。しっかり考えて設計しないといけない、「1人の命がかかってるんやからしっかりしーや」と先輩からも言われました。

―男子部員が多いなか苦労はありましたか?

女の子として扱ってもらえないので琵琶湖で野宿でも大丈夫でした(笑)
パイロットは宿を取りますが、他のメンバーは野宿です。

―設計するうえで工夫したところや気をつけた点、苦労した点を教えてください

ようやく設計が終わってあとは作るだけ!と思っていたときにタイムトライアル部門がなくなる噂を聞きました。嘘だと思いましたが1週間後正式な発表を聞いて、喪失感がありました。その後に(ウィンドミルの)みんなでミーティングをして、ディスタンス部門に向けてがんばるか、設計し終わった機体で鳥人間には出ずに白浜で飛ばすのはどうか?という話も出ました。話し合いの結果はディスタンスで鳥人間に出ようとなったので、設計をやり直しました。もう12月だったので、短期間で設計し直すプレッシャーがありました。
ウィンドミルクラブ 柳澤さんタイムトライアルはタイムを競う部門なので早い機速を出して戻ればいいのですが、それとは違い、フライトが長時間になります。翼を大きくするとスピードが遅くなる分楽に漕げるようになるので、前回に比べて翼が大きくなりました。翼が長くなれば長くなるほど安定して長く漕げる。ゆっくり長く漕げるように前回より7.5メートル長くしました。
タイムトライアル用に設計していた時は、1、2年生で翼を製作した経験を活かして、これまでの問題点を探ることができた。ディスタンスの設計は学内に経験者がいなくてどういうのが良いのか一から自分で考えないといけないのが大変でした。さらに製作期間にタイムトライアルは3ヶ月かけられたけど、ディスタンスの設計は1ヶ月もかけることができなくて、お正月返上で設計をしていました。中途半端なものは作りたくなかったので。12月半ばから1月のテスト期間ぐらいまでがんばりました。昔のディスタンスのデータを見たり、OBに相談したり、交流のある他大学のディスタンス出場チームの人にもいろいろ聞いたりしました。出場しているチーム同士は、ライバルでもあり仲間でもあります。困ったときには助けてもらいました。

―これまででやっていてよかったと思う瞬間を教えてください

タイムトライアル用の設計をしている時は、今年も似たようなものを作れば変なものにはならない、改良することでよりよいものが作れると考えていました。テストフライトでも飛ぶかどうかも不安でした。赤瀬がグラウンドで短い距離を飛ぶたびに「重い、重い」と言っていたので、白浜空港の端から端まで飛ぶ様子を見てようやく安心しました。白浜空港で「長い距離を飛ぶと楽だった」というのを聞いて今年の機体も悪くないと思いました。白浜のフライトまで、「今年はダメかも」と思っていたので本当に安心しました。
それでも自分の設計を不安に感じることもあります。他大学がしていないこともしていて、翼型の迎角(げいかく)取り付け位置を高めにしています。迎角を高めにすると揚抗比の効率がよくなります。でも他大学がしない理由は、リスクがあるから。でも、攻めないと勝てないし、今年のテストフライトでも問題がなかったので大丈夫だと思っています。

―振りかえってみてどうでしたか?

2つも設計できてラッキーでした。前年の改良をするよりも、一から考えるほうが楽しいので良かったです。そんな経験をした人はあまりいないと思うので。
私がタイムトライアル用の設計をしている時、赤瀬がトレーニングしながら、ディスタンス出たいと言っていたので、出ることになって赤瀬の願いも叶ってよかったなと思います。
大変でしたけど楽しかったです。

【パイロット】赤瀬 恒明さん(工学域 物質化学系学類 マテリアル工学課程 3年)

―入部したきっかけを教えてください

ウィンドミルクラブ 赤瀬さん小・中学校ぐらいの頃から鳥人間コンテストを見ていて、大学に入ったらやってみたいと思っていた。府大に入学して、ウィンドミルがあったので入部を決めました。
空を飛ぶのが憧れでした。3年生までは主翼を作る作業をしていましたが、ものづくりも好きなので、自分は鳥人間にぴったりだなと思います。パイロットには入部した時からなりたいと思っていました。思っていたとことと違ったのは、結構(漕ぐことが)しんどいことです。今は知識があるので体力的にきついのは当然だと思えますが、お散歩のように空を飛ぶつもりだったので(笑)

―ディスタンス部門に出場が決まった時の心境は?

びっくりしましたけど、(鳥人間コンテストに出ることで)空が飛べる僕の目標が達成できているので、ディスタンスでも出たいと思いました。鳥人間に出るかどうかが重要なので、とにかく飛びたかった。
毎年、7月の鳥人間コンテストが終われば次の代が8月に役割を決めて、9月から実際に製作が動いていく。パイロットになることは決まっていたので、過去の機体を修復しながら練習を重ねていました。なので10月ぐらいから練習機で練習をしていました。

―パイロットに決まってから心がけていることは?

1番は怪我をしないように気をつけています。当たり前かも知れないけれど、夜更かししない。パイロットになってからはすぐに寝ています。

―ディスタンスに変わってトレーニング方法は変わった?

マラソンと100メートル走くらい違うイメージかも知れませんが、正直どちらも長距離のイメージです。タイムトライアルとディスタンスに(トレーニング内容の)違いはありません。

―長時間飛行になるディスタンスの不安はありますか?

ウィンドミルクラブ 赤瀬さんタイムトライアルとの一番の違いは操縦です。タイムトライアルの機体は主翼が小さい分、横からの風の影響を受けにくい。それと違いディスタンスは距離を競う分主翼を大きくしているので、風の影響を受けやすい。大きく操縦するとパワーが必要になるので、修正する時はゆっくり修正していきます。
不安はもちろんあります。ボートで去年のパイロットの松下さんについてきてもらいます。進路も機内のスマホで確認できるんですけど、拡大しすぎると水しか映らないので琵琶湖の輪郭を残しながら見ようと思っています。ただ、1キロ進んでも画面上では5ミリ程度なので、ボートで確認してもらいます。
白浜空港での練習は3分くらいで終わって、地面に人がいるので孤独感はなかったのですが本番は想像もつかないです。僕は1人が苦手なんです。でも無線があるので、松下さんにずっと話しかけてもらうようお願いしているので、大丈夫だと思います。

―これまででやっていてよかったと思う瞬間を教えてください

最初に練習機で飛んだ時ですね、やっぱり。
1年生の時は応援席で見ていましたが、去年初めてプラットフォームに上がりました。プラットフォームからの景色はやっぱりよかったです。来年もここに戻ってこようと思いました。

パイロット赤瀬さんとモズキュレア2

―本番での意気込みを聞かせてください

自分はテストフライトの1キロしかとんだとこがないので、どれぐらい飛べるか全然想像がつかないです。目標は10キロ。でも10キロじゃ優勝できないと思うので、やっぱりそれ以上ですね。今年は強いチームが多くて20キロを超えそうなチームが5つくらいありそうです。一つ前の東京工業大学が強豪なので、まずその記録を目標にそこから徐々に距離を伸ばしていきたいと思います。強豪揃いのなかで恥ずかしくないフライトをしたいです。
風が重要なので、いい風が吹くことを信じて体調を整えておきます!


企画書主催者側に提出した書類のタイトルは「タイムトライアルからの刺客」!
昨年のデータがないなか、様々な壁を乗り越えて本番を迎えた部員たち。ぜひ好記録を期待しています。

【取材:遠藤 正章、塩根 はるか(広報課)】
【取材日:2017年7月26日】※所属・学年は取材当時