自然科学類研究室で実験する学生たちの様子

創造力と問題解決能力を学んで、社会に大きな関わりを持つ自然科学分野での活躍をめざし、自然現象の本質を解明し、その理解を目標とする自然科学類(2018年4月からは理学類)。将来は科学者や研究職として活躍し、社会に役立つことを夢見る学生たちが大勢学んでいます。

* * *

今回ご紹介する授業は、3年が対象の「演示学生実験Ⅱ」です。この授業は2年次に、風力発電装置づくりを通して、電気回路やデータ解析の基礎を学び、機構や制御プログラムの設計や製作を体験した学生が履修しています。

7つのテーマ分野から、興味のある課題を選び、5人程度のグループ単位でテーマに即した実験内容を自分たちで考え、必要な実験装置を手作りで製作していきます。そして、グループごとに他の学生に向けて、プレゼンテーションをするまでを授業内で行います。

熱空気エンジンの実験をする学生

グループを組んだ学生同士が知恵を集めて設計した実験装置は、ホームセンターなどでも購入できる身近な素材や、大学にある計測器やパソコンなどを組み合わせて作られています。たとえば、熱空気エンジンの実験を課題にしたグループでは、加熱や冷却による空気の膨張、収縮を利用したエンジンの製作に、6個のビー玉を入れた試験管をアルコールランプで温めるという方法で作成していました。

試行錯誤しつつ悩みながらも装置を作っていく様子は、難しそうですが、とても楽しそうです。

また、電波の送信を課題に選んだグループでは、アンテナについて学んだことがある学生がおらず、ゼロからのスタートとなりました。最初に導線部分のコイルを環状にするループアンテナを製作したのですが、良好な結果は得られず、問題解決へ向けて懸命に取り組み、今度は実験装置の形状を変えて、テレビ受信用のアンテナでよくみかける「八木アンテナ」の製作から再チャレンジしていました。

八木アンテナ(ウィキペディア)

八木アンテナ作成の様子

製作工程や実験工程もグループごとに違ってきます。全員が同じ作業をしつつ進めるところや、役割を変えながら、主に装置の組み立てや改造をする工作班、事前に実験用の測定をする班に分担して、同時進行で実験を進めるグループもありました。

最初の想定が、必ずしもうまくいくとは限らず、大幅に仕様を変更することもあります。装置が完成して、いざ実験が始まってからもパソコンに表示される計測データが想定外の結果になり、首をひねる姿もありました。

実験中の学生たちを見守る先生

この実験の良いところのひとつとして、各グループに1人ずつ担当の先生がつくので、それぞれ進み具合も違いますが、行き詰ったときには先生に意見を求め、ヒントをもらいながら実験を進めていました。そのまま答えを教えてもらうのではなく、改善へつながる道へ導いてもらうことで、一筋縄ではいかない経験を重ねていきます。

実験データの変化を学生たちと一緒に見守る先生方

この講義をとりまとめる久保田佳基教授は「壁にぶつかる経験を味わってもらうことも目的のひとつなので、思い通りにいかない時でも、先生方はすぐには手を差し伸べず、学生たちのトライ&エラーを温かく見守ります。」と学生に学んでもらいたい思いを語られていました。

コイルを巻いた装置を組み立てている学生たち周波数計

実験手法を考えて、装置を設計する際に「どうすればよいか分からない」と学生たちの大半が悩むでしょう。この「分からない」ことこそが大切なのです。いまの学生は分からないことに出会うと情報端末で検索をして、解決できなければ「分からない」ままで終わらせることが多いように思います。しかし、この授業ではそれが通用しません。分かるために、どのようなことをすればいいのか考え抜き、必要な情報を得る努力をしなくては、先へ進めないからです。

ここで培った問題解決能力は、社会へ出てからも様々な場面に力を与えてくれます。

スポイトで試験管に実験用水を入れている学生パソコンで実験データを見守る学生たち

「学生がテーマを選び、実験手法を考え、必要な装置を設計・製作する」ことを通じて創造力や問題解決能力を伸ばしてもらうと共に、実験の途中経過や最終結果をみんなに発表することで、プレゼンテーション能力の向上にもつなげています。

グループで行った実験のふりかえりもでき、実験に携わっていない誰もが理解できるように、文言や表現方法に工夫をすることで、自らも理解を深めることができるようになります。

2008年にこの授業を始めて以降、学科の先生方からは「卒論発表が上手な学生が増えた」といわれることが増えました。

従来、授業で行われる物理実験は、結果が分かっており、テキストの手順通りに進めていけばよいものがほとんどですが、社会へ出たときに、たとえば開発職や研究職に就いて、解析・評価業務に携わった場合に、どんな装置を使ってどう評価していくのかを、自分なりに組み立てられる能力が求められることもあります。

実験装置を作る学生たち発振回路が描かれたホワイトボード

この授業で得られるものは、「分からない」の壁に挑み、試行錯誤を繰り返す経験、そして、苦労の末に結果が出た時の大きな喜びです。それらは社会人になってからも、貴重な財産になるでしょう。このような授業は府大だからできることかもしれません。

物理科学の実験室には、課題にチャレンジする充実した熱気がみなぎっていました。

【取材日:2017年6月9日】※所属は取材当時