全ての行動の意味を考え、
意図的にケアすることの大切さ
老人看護専門看護師
CNSを目指そうと思った動機は何ですか
退院調整看護師をこの病院で7年ぐらいしていました。退院支援をしている中で対象の患者さんやご家族は高齢の方が多く、そういう中で高齢者の看護がわからなくなる時期がありました。どう考えればいいのか私自身がわからなくなって、どういうふうにスタッフを支えていったらいいのかもわからなくなって、ふと考えると対象である高齢者を私があまりよくわかっていないかもしれないということに行きついて、もう一度高齢者の看護をちゃんと学びたいと思ったのがきっかけです。
大阪府立大学大学院でCNSを目指そうとしたきっかけは,退院支援看護師、退院調整看護師の仲間で作るネットワークの会があって、その中に大阪府立大学の大学院の修了生の方が複数名いました。大学院を出ている人たちと私の知識では大きく違うと感じたこともあって、このままで看護師として続けるのも苦しい、大学院に行くのも恐らく苦しいだろう。新たな道に入っていくわけだし、勉強もついていけるかどうかもわからないという不安もありました。でも、同じ苦しみだったら、やってみようかなというのが少しあった時に、修了生に相談を持ちかけました。「行ったらいいんじゃない」「原田さんだったら、看護としてはやっているし、そこに理論とか知識とかが加わっていくと鬼に金棒よね」と言われたことで背中を押されました。
大学院生活はいかがでしたか
何にしろ、楽しかったです。楽しかった理由は、導いてくれる先生がいることでした。20何年看護師をやっていると、自分の看護について言葉にすることや直接的な指導を受ける機会がなくなっていました。そんな中で先生と出会えて非常にありがたかったですし、すごく新鮮な感じでした。
ゼミの時は先生方に私がプレゼンテーションをして、その後にディスカッションをするという流れなんですけど、プレゼンテーションに入るまでに、先生方と雑談というか、近況を話す時間が必ずあって、その内容が実は高齢者看護のあり方だったり、先生方の大切にされていることだったり・・・ゼミを通して学ばせていただきました。本当に先生方とのゼミがすごく楽しかったです。私の今までの実践の経験や感じていることを尊重して下さいます。否定せずに尊重してくださって、「なぜそう思うの」って引き出してくださる。
府立大学は11領域の仲間がいるので、いろんな視点からのディスカッションがおもしろかったということと、いろんな年齢層の方がいて、20歳ぐらい年が離れている人たちと一緒に意見を交換して、価値観とか大事にしていることなど世代のギャップを感じながら学びあえたのは非常に楽しかったですね。
一番の学びは
一番の学びは自分がやっている看護やケアを言葉にする、言語化ですね。看護を深く考え、それを言葉にしていくということに尽きたように思います。
実習では入院されている患者さんを1人受け持たせてもらって、1対1で看護をさせてもらいます。学生以来だったので楽しかったですが、思わず手が出るんです。指導教員に、「その出した手はなぜ出したの」と。「それがあなたの看護の見方よね」と言われて。「出した手の根拠は何?」って。「引いた手の根拠は何?」って。なるほど、そこを考えていくことが当たり前なのかもしれないですけど、経験だけでやっていることがもう体に染みついてしまっていて、そこを1つ1つ丁寧に「待つこと」の意味とか、「声を掛けることの意味」とか、「掛けないことの意味」とか、「手を今、ふれることの意味」とかを考えながら、言葉に起こして意図的にケアをしていくこと、今まで何気なくしていたことを考え、意図的に実践することを忘れていたなっていうことがありました。
1年次のゼミで「見方が変わるとケアが変わる」ということに気づかせて頂いた場面がありました。その時はしっくりきていませんでしたが、実習が進んでいくなかで、「ああ、そうか、見方が変ればやること変わるんだ」「ケアがこんなに変わっていくんだ」ということを実感しました。
大学院の学びをどう活かせていますか
活かせているのは、高齢者看護そのものを私が全くわかっていなかったことに気付いたので、もう一度学び直し、高齢者看護技術もいろんな研修に参加しながら実践力を高めるよう努めています。それらのケアをスタッフと共に実践しており、直接活かせていると思います。
「見方を変えればケアが変わる」は何より私の中で落ちていることなので、それをスタッフに感じてもらうために、行きつ戻りつしながら、大学院で学んだことをフルに使いながらやっているという感じです。
【Profile】
看護師として十数年間勤務した後、休職して本学大学院へ。大学院博士前期課程 生活支援看護学領域 老年看護学分野CNSコース平成24年度修了、高槻赤十字病院復職。老人看護CNSを平成25年度取得。