I-siteなんば「まちライブラリー@大阪府立大学」で2017年8月18日(金)に開催された第36回アカデミックカフェでは、カタリストに大学院 理学系研究科の児玉靖司教授にお招きし、「染色体先端部からヒトの健康寿命を予測する」をテーマに、染色体先端部「テロメア」とその可能性についてお話いただきました。

皆さんは「テロメア」という言葉をご存知でしょうか?最近、テレビ番組などでも紹介され、耳にする機会も増えてきたのではないかと思います。

テロメアとは「染色体の先端部」を指し、染色体を損傷から保護する働きを持っています。たとえば染色体を「靴の紐」とすると、テロメアは紐の端にある「保護用のビニールキャップ」のイメージです。このテロメアは細胞が分裂するごとに短くなり、ある長さまで短くなるとテロメアとして機能しなくなります。そうすると細胞や臓器の機能が衰え、死に向かっていきます。

最近の研究では、テロメアは人間の健康寿命を予測する指標になるかもしれないと言われています。そんなテロメアをめぐる最新の学術情報を元に、寿命、認知能力、精神的ストレス、ライフスタイル、性格的特性の5つの切り口で、テロメアの長さとの関連性をお話くださいました。

お話のなかでもとりわけ身近なテーマとして感じたのは「テロメアの長さと精神的ストレスの関係」。

慢性疾患の子どもを介護する母親は、その介護期間が長いほどテロメアが短くなる。また妊娠中に母親が強いストレスを受けると、出生時から子どものテロメアは短いなどの研究結果が出ています。

慢性的なストレスはテロメアの長さに影響を与えることが明らかになっています。

また「テロメアの長さとライフスタイルとの関係」では、居住地域、睡眠時間、運動、食習慣がテロメアの長さに影響を与えているとされています。

つまりテロメアは人間の生涯に影響を与えるさまざまな要因をまとめた指標のようなものだ、と児玉先生はおっしゃいます。

質疑応答の際「自分のテロメアの長さを知りたい!」と発言された方がいらっしゃいました、誰もがそう思って当然ですよね。

先生は「それは簡単にはできないけど、今からテロメアを健全に維持するためにライフスタイルを見直せば、単に寿命が長いだけでなく、質の高い人生を送ることができるのでは?」とアドバイス。

現代社会において完璧なライフスタイルの追求は困難かもしれませんが、健康で充実した人生を送るためのトピックとして、非常に意義のあるお話と感じました。

▼児玉先生にご紹介いただいた本
●動く遺伝子~トウモロコシとノーベル賞(エブリン・フォックス・ケラー著/晶文社)
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I4865622-00

●テロメア・エフェクト 細胞から若返る! 健康長寿のための最強プログラム
(エリザベス・ブラックバーン、エリッサ・エベル著/NHK出版)
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000817142017.html

【取材日:2017年8月18日】※所属は取材当時