2017年9月13日、ガーデンシティクラブ大阪にて、第44回校友懇話会が開催されました。

在学生、卒業生、教職員等を会員とする全学同窓会組織「校友会」と経済学部 、現代システム科学域 マネジメント学類、大学院 経済学研究科の卒業生組織「陵友会(りょうゆうかい)」の共催事業です。

今回のスピーカは、JICA関西国際センター次長(兼)神戸大学客員教授の田和 正裕さん。

1990年に本学の農学研究科を修了された卒業生です。「持続可能な開発(SDGs)とJICAの取組み」と題して、SDGsにおける日本の取組みやJICA関西のチャレンジについて、お話していただきました。

■プロフィール

田和 正裕

1990年農学研究科修了、国際協力事業団(JICA:現国際協力機構)に入団。インドネシア事務所、企画部、無償資金協力部、農村開発部、国際協力人材部にて新規事業の企画立案、プロジェクト管理と国際協力人材の確保活用に従事。名古屋大学大学院環境学研究科特認教授を務めた後、JICAに復職し、企画部参事役(開発課題担当)、農村開発部次長として、南アジアおよびアフリカ地域の農業農村開発ならびに国際援助強調を担当。今年4月から現職。

 

=<以下、講演内容>===================

JICAとは

JICAは、開発途上国に対する技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力を一元的に担う機関です。
様々な支援ツールを効果的・効率的に用い、約100カ国に跨る国際ネットワークを活用して、開発途上国に対する総合的な支援を展開しています。支援対象国のニーズ、支援規模やレベルを考慮に入れて最適なソリューションの提供をするべく設計しています。

SDGsとは ~MDGsを越えて~

ミレニアム開発目標(MDGs)は、持続可能な開発目標(SDGs)の前身として2015年を達成期限として設けられていました。MDGsは途上国の貧困削減が目標であり、貧困と飢餓の撲滅、初等教育の完全普及の達成等8つのゴールを定めてスタートしました。

MDGsは、極度の貧困率が14%(8億3000万人)へ低下、5歳未満子供死亡数半減、HIV治療薬の普及80万人から1360万人という成果が上がりました。しかし、貧困率の低下は中国の貧困率の低下が-94%になったことが大きな要因ですが、その一方で、サハラ以南アフリカでは-28%にとどまったこと、2016年には地球の気温が市場最高を記録したことなど、対応できていない課題も浮き彫りになりました。

そこで、MDGsの後継として2015年9月に国連で採択されたものが、持続可能な開発目標(SDGs)です。持続可能な開発とは、経済成長・社会的包摂・環境保護を調和させた、「将来世代がそのニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たす開発」であると定められています。

MDGsが途上国を対象にした目標だったことに対して、SDGsは先進国を含む世界共通の目標として17個のゴール定め、スタートしました。SDGsは社会面だけでなく、経済・環境をも含めた3側面を重視した持続可能な社会の実現に向けた目標であり、グローバルに、政府、企業、市民社会の連携の重要性を強調しています。

SDGsは、「誰一人取り残さない」「イノベーション」「パートナーシップ」の3をスローガンに掲げており、貧困の撲滅やあらゆる場所での女性・女児への差別を撤廃する等チャレンジングな目標を立てています。

SDGsにおける日本の取組み

日本の取組みでは、民間企業や市民社会の意識の高まりが特徴として挙げられます。例えば、味の素(株)、アライアンス・フォーラム財団や、公文式、APPジャパン等、数多くの企業が、チャンス開拓・リスク回避としてSDGsに取り組んでいます。

「SDGs達成のためには、政府に加え、企業、市民、研究機関等との連携が必要であり、特に日本企業の持つ技術がSDGs達成に果たす役割は大きい。SDGsはビジネスチャンス、開拓進取を!」ということを、JICA理事長である北岡伸一も提言しています。

JICA関西のチャレンジ

SDGsが、関西の民間企業、自治体、市民団体・NPO、大学・研究機関、にとって、将来のビジネスチャンスや国際貢献のために重要な取組みであることを広くアピールし、各ステークスホルダーの連携により、関西のビジネスや国際貢献を加速していくことを目的としたプラットフォームの設立を検討しています。

すでに、大阪府立大学を始めとするいくつかの団体には協力の了承を得ており、関西からSDGs達成に向けてのムーブメントが起こりつつあります。

最後に

最後に、私たちの偉大な先輩を一人ご紹介します。

西岡京治さんです。

大阪府立大学農学研究科を修了後、JICAの前身である海外技術協力事業団の専門家として28年間ブータンで活動されました。「ブータン農業の父」といわれ、ブータン国王から「最高に優れた人」を意味する「ダショー」の称号を贈られました。亡くなられた際にはブータンで国葬が執り行なわれ、今なおブータン国民から慕われています。

 

=<講演を終えて>===================

貧困の撲滅や、差別の撤廃など到底なしえないと思われるような課題でも、世界が世界共通の課題であるという認識を持って力を合わせることで解決できるということ、SDGsの達成には、我々日本社会として協力できることが多々あるということを学ぶことができました。

また、今回の校友懇話会には、青年海外協力隊として活躍し、今年6月に復学された鰐渕元貴さんをはじめとする3名の学生が参加しました。

 

■参考リンク

 

 

【取材日:2017年9月13日】
【取材:現代システム科学域4年 右大輝】※所属は取材当時