応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程(生命環境科学域)の講義レポートとして、「植物科学基礎実験」の小川拓水助教の担当回、「無菌操作・発酵遺伝子の大腸菌への導入(2)」の授業を取材しました。

この授業は学部(府大では学域)2年生が受講対象で、15回の授業を通じて下記の各ポイントをマスターし、自分で考えながら実験を進めることができる知識と技術を身につけることを目的としています。数回ごとに担当教員が代わり、学生たちは様々な実験をまずは経験していきます。

  • 植物科学に関わる様々な機器に触れて基本操作
  • 各種の試薬や加熱器具などを安全に使う操作の原理と基本
  • 実験ノートやレポートの適切な書き方
  • 分子生物学実験や顕微鏡操作に関わる基本操作とその原理

 

この回は、組換えDNA実験の注意点を理解した上で「大腸菌の形質転換」の実験手法を習得する実験。組換えDNAを取り扱う研究者にとっては初歩的な実験となります。

「形質転換」とは、細胞外部からDNAを入れてその遺伝子的性質を変えることです。この実験では、DNA分子を大腸菌に導入する作業工程、DNA分子が導入された個体(形質転換体)を他の個体(非形質転換体)の中から選抜する作業工程の2つを行います。

今回使用する大腸菌はDNA分子を細胞内に取り込みやすく加工された細胞(コンピテントセル)を使います。導入するDNA分子は緑色蛍光タンパク質遺伝子を含んだもの。実験が成功すると、緑色に光る星空のような大腸菌群を見ることが出来ます。

 

授業は6名程度、8班に分かれて行います。まずは教員の周りに集まり、実際に器具を使い工程を説明。まずは教員が「やって見せ」ます。その際にはコツや注意点が説明されていき、学生たちは聞き逃すまいと熱心にメモを取ります。

 

その後は班ごとに実験開始。実験は全てクリーンベンチ(無菌操作のための装置)の中で行われます。試薬はマイクロピペット(少量の液体を必要なだけ移動させることができるスポイドに類似した科学実験器具)を使って慎重にマイクロチューブ(マイクロリットルからミリリットル程度の試料を扱うためのポリプロピレン製小型試験管)に移されます。

  

クリーンベンチ以外には、ウォーターバス(温度設定がされた水を張った容器)を使って30秒間のヒートショックを与える、37℃のインキュベータ(温度を一定に保つ機能を持つ装置)で60分寝かせるなど、温度・量・時間の差配に集中した3時間以上に及ぶ実験が行なわれていきました。それらの進行内容を熱心に実験ノートに記載する学生の姿が印象的でした。

この日の授業は出来上がった菌液をLB寒天培地(大腸菌などを培養するための富栄養培地)に塗布し、一晩培養するために37℃に設定されたインキュベータに入れられて終了です。後片付けも慎重に丁寧に行われました。

さて、実験結果はどうだったのでしょうか。星空は見ることが出来たのでしょうか?

 

【取材日:2017年10月26日】 ※所属・学年は取材当時

 

<後日談>

1週間後、培養後に保存していた各班の大腸菌サンプルを用いて、自分たちが操作したサンプルに星空が見えるか、指導用として教員が事前に作成した同様のサンプルと比較してどうか、という確認が行なわれました。

自班の結果や教員サンプルとの比較を踏まえて、研究ノートを書く受講生。研究レポートの課題も与えられました。このような実証、振り返り、論文(レポート)にまとめるという反復こそが、研究者をめざす学生・大学院生にとって非常に重要です。