応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程
青木考教授の授業「ゲノム生物学」

ゲノム配列の組換えをDNA二重らせん構造モデルで実演し、体感的にゲノム科学の基礎を学ぶ。

 

医療分野でエイズやがんを治し、農業分野では食糧問題を解決する!? 遺伝子を思うように設計し、生物を変えるまでになる「ゲノム編集※」は時代の最先端を走る生命科学研究の分野です。「遺伝子組み換え」から飛躍的に進化したテクノロジーであり、その基礎研究が「ゲノム生物学」です。

※ゲノム編集:ゲノム(genome)は遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉。細胞の一つひとつにある「核」に収められた「染色体」には二重らせん構造をしたDNA(デボシキリボ核酸)がある。DNAが担っている遺伝情報を「ゲノム」といい、生物の設計図を意味する。動植物のゲノムにある情報を人の手で操作し書き変え(編集)することを「ゲノム編集」と呼ぶ。

 

ゲノム生物学の様子1

写真1:DNA組換え紐状モデル

 

大阪府立大学でこの「ゲノム生物学」の授業を担当するのは青木考教授(生命環境科学域 応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程)です。

授業はアクティブラーニング型の学びで、興味・関心を刺激し、実感的な理解を促しています。その学びの一端を広報スタッフがリポートしました。

ゲノム生物学の様子2

この授業は応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程の2年生が主に受講し、後期に開講しています。「ゲノム配列の解析 非遺伝子領域」をテーマに、2年次前期に修得した細胞分子生物学と一般遺伝子学の内容を踏まえて、DNA配列に基づいてトータルに理解するのがねらいの授業です(受講者数44人)。

取材日の授業は全16回の計画のうち第8回目となり、「DNAとヒストンの修飾とゲノム構造変化を説明できること」が目標となっています。

青木教授が授業の冒頭、取り出したのが、DNA組換えの紐状モデルです(写真1)。学生5人が教室の前に出てDNAの損傷と修復のデモンストレーションに参加しました。

一人の学生がハサミを手に、染色体の反復領域の二本鎖部分を切断。それを、細胞分裂中の相同染色体DNAが修復するという現象です。

ゲノム生物学の様子3

ゲノムはDNAとタンパク質からできています。修復にはタンパク質が大きな役割を担っています。DNAは生物の遺伝情報を担っており、この切断による損傷は、自然界では偶発的に起こるものですが、デモンストレーションはその現象を再現しました。この仕組みを理解することが、生物の進化の原因となる突然変異を人為的に起こす遺伝子組み換えと、さらには21世紀の最先端技術として注目されている「ゲノム編集」の理解にもつながります。

「DNAの損傷と修復の出来事を、スライドで映し出して絵という2次元だけで説明しようとしても実感として捉えにくにものです。DNA配列の模型を使って3次元的に実演することで、体験的に理解が進むのではないかと期待しています」と青木教授。

授業ではこのあと、損傷と修復現象のキーパーソン的な役割をする「反復配列」が歴史的にどうやって見つけられたかについて、ウシと大腸菌からDNAを取り出してその存在を解明した「Britten-Kohneの実験」の説明、その後発展した反復配列の検出方法や、「トランスポゾン(転位性遺伝因子)」「長鎖末端反復配列」「短鎖末端反復配列」など、遺伝領域の構造と変化を青木教授がスライドで解説し、学生たちは聞き入っていました。

ゲノム生物学の様子4

本学の応用生命科学類には、植物バイオサイエンス課程と生命機能化学課程の2つの課程があります。ゲノム生物学は、複雑な生命現象解明の基礎となっています。人類の存続に不可欠な植物の限りない可能性を探究するとともに、ヒトの未来を拓く学問領域とし各界から注目を集めています。

 

■青木教授のコメント
「これからの時代の生物科学においては、ゲノムからいかに情報を読み取るかが重要になります。これは、注目する一つの遺伝子の機能だけを解明していた従来の生物学からすると、大きな転換。でも今の大学生はそういった情報を自分の手で解析し編集できる時代の入り口にいるわけです。ぜひ大きなアイディアを試してみてください。」

【プロフィール】青木孝教授
青木 考(あおき・こう):生命環境科学域 応用生命科学専攻 機能ゲノム科学グループ 教授

担当科目:基礎生命科学、ゲノム生物学、機能ゲノム科学、資源植物学特論

専門分野:応用ゲノム科学、植物分子生物科学

 

<参考ページ>
・機能ゲノム科学研究グループWebサイト
https://www.kohaokilab.com/

・植物バイオサイエンス課程Webサイト
http://www.biosci.osakafu-u.ac.jp/plantbio

【取材日:2017年11月24日】※所属等は取材当時