<出席者>(敬称略)

○辻 洋(つじ ひろし)
公立大学法人大阪府立大学 理事長・学長
○真嶋 由貴恵(まじま ゆきえ)
同ダイバーシティ研究環境研究所長、前・女性研究者支援センター長
現代システム科学域 知識情報システム学類 教授

【IRIS(理系女子大学院生チーム)学生】
○清水 乃有(しみず のあ)
工学研究科 電子・数物系専攻
数理工学分野 博士前期課程1年
○丸本 萌(まるもと もえ)
理学系研究科 生物科学専攻
Nanosquare拠点研究室 博士前期課程1年

海外大学との交流強化について

―大阪府立大学は2005年に大阪府立の3大学(大阪府立大学、大阪女子大学、大阪府立看護大学) が統合・再編され、新大学として発足しました。「高度研究型大学-世界に翔(はばた)く地域の信頼拠点」を基本理念に掲げ、これを実現するために、「多様」「融合」「国際」の3つの視点から、辻洋学長を先頭に様々な取り組み進めています。そこで、各界から注目されているトピックを出しながら話し合いたいと思います。まず、辻学長から基本理念について語っていただけますか。

座談会に参加した、辻学長、真嶋教授、IRIS清水さん、丸本さん

辻 「世界に翔く地域の信頼拠点」の理念への想いを簡単にお話しさせてもらいます。「翔く」といったら鳥をイメージしませんか。「百舌鳥(もず)」、「白鷺(しらさぎ)」は大阪府立大学中百舌鳥キャンパスの最寄り駅の名前にも使われている地名ですが、私たちになじみの深い鳥です。羽曳野(はびきの)キャンパスがある「羽曳野」という地名は、ヤマトタケルが白鳥になって羽を曳(ひ)くように「埴生(はにゅう)の丘」を飛び立ったという伝説が由来です。また、泉佐野市にあるりんくうキャンパスは、関西国際空港に向かう途中の駅が最寄り駅であることから、鳥のように空に羽ばたくというイメージがわきませんか? このように、大阪府立大学は鳥のように「翔く」という言葉がぴったりの大学だと思っています。

「世界」というのは外国でなくてもよく、学問研究を通して産業界など外の世界へ翔くという視点でもあります。大阪府立大学を巣立った学生たちがそれぞれのフィールドで翔いてほしいという願いも込められています。

それから、大阪府立大学は公立大学として、地域に貢献して信頼されることが何よりも大事、「地域貢献」が使命のひとつです。副専攻の「地域再生(CR:Community Regeneration)」でも百名を越える学生が活躍しています。

また、今日出席のお二人が参加しているIRIS(アイリス)(I’m a researcher In Science)のメンバーは、地域の子どもたちに理科実験などを通して科学の面白さ・楽しさを伝える地域活動を行っています。社会貢献活動の一環として地元の人たちと交流し、「なにかあったら大阪府立大学に頼んでみたい」とか、「行ってみたらなにか面白いものがあるのではないか」と思ってもらえるような、地域に開かれ・貢献する大学になりたいと思っています。

それから、「認証評価」という言葉を聞いたことはありますか。7年ごとに、「大学はちゃんと活動できていますか?」ということを国が認証した評価機関が評価するのですが、2016年度、本学は「研究」と「地域貢献」で「極めて良好」との最上位の評価を受けました。ダブルでの最上位評価は唯一、本学のみです。

それ以外にも、大阪府立大学は社会から注目される取り組みをたくさん行っています。でもそのことを周りの人に広めていかなければ、なかなか知っていただけません。そこで今、「学長が先頭に立って皆で広報活動を」と学内に声をかけて頑張っています。学生の皆さんにもそういった事をたくさん知って、ぜひ周りの人に話してほしいと思っています。

 

「元気! 活き生き女性研究者・公立大学モデル」をキャッチフレーズに環境整備を推進

―大阪府立大学では、大切にしている視点の一つである「多様性」のもと、女性研究者の積極的な登用を進めておられます。

2010年度、文部科学省・科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」に採択されたことを機に女性研究者支援事業に取り組み、2015年度には文部科学省・科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」に採択されました。

女子学生のロールモデルとして、女性研究者が働きやすい大学となるべく環境整備に力を入れています。本日は、2015年度に設立された「ダイバーシティ研究環境研究所」の所長である真嶋由貴惠教授に事業活動の経緯と現状、これからの目標などについてお聞きします。

真嶋 この研究所の設立を契機として、異分野融合・共同研究における女性リーダーへの支援、女性上位職のワーク・ライフ・バランスの支援など、女性研究者がリーダーシップを発揮してキャリアアップをするための事業を推進しています。
3年目となるのですが、活動の一環として発行しているのが『ロールモデル集 研究紹介』の冊子です。(http://diversity.21c.osakafu-u.ac.jp/archives/960 > 女性研究者支援センター時代から引き継いでこれまで4冊発行し、リーダーとして活躍している女性研究者の方々を紹介させていただいています。

この『ロールモデル集』を通して、一人ひとりの活躍を知っていただき、本学が進めている産学官連携事業において、女性研究者が地域や企業等との共同研究でさらに活躍できる、その後押しになるよう願っています。

もう10年近くの活動になりますが、畑を耕し、種をまいて、今ようやく芽が出てきたという心境です。

本学の教員に占める女性の割合は2017年5月1日現在で18.7%です(前年度比0.7 ポイント増)。日本の大学全体が平均16%台ですからやや高いほうです。研究リーダーとしての能力向上という指標では、女性研究者の2017年度の科研費採択率は、男性教員21.3%に対して35.7% (全国平均26.5%) とより高い数値となり、これまでの取り組みの成果であると評価しています。

 

【次テーマ】女性研究者のロールモデルを参考に

座談会/大阪府立大学の新たな挑戦―”世界に翔く地域の信頼拠点”をめざして~辻洋学長と大学の未来を語る~(2)へつづく

 

【取材日:2017年11月14日】※所属は取材当時。