羽曳野キャンパスにて、地域保健学域 総合リハビリテーション学類 作業療法学専攻の2年生が受講する、「発達障害作業療法学Ⅰ」を取材しました。

この授業では、15回の授業を通じて発達障害に対する作業療法の役割、技術を学ぶことを目的としており、立山清美講師と中岡和代助教が担当しています。取材した回のテーマは「遊び」について。セラピスト(作業療法士)は発達障害領域に効果のある遊びを評価し、主要な治療手段を見出さなければなりません。

子どもにとっての「遊び」とは何なのか。

授業では「遊び」を提供するときには、どのような益があるのかを考えられるようになるための練習を実際に体感しながら学んでいきます。

遊びには、

1)ブランコに乗るなどの【感じる楽しさ】。

2)お母さんごっこなどの【演じる楽しさ】。

3)追いかけっこなどの【競うたのしさ】。

などいろいろな楽しさがあります。今日はその中の1)【感じる楽しさ】について、実際に体を動かしながら学びます。

それでは、実際の授業風景を見ていきましょう。

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作業療法の領域では感覚統合という考え方があります。感覚統合とは、外界や身体内部から伝わってくる様々な感覚刺激を適切に処理し適応行動に結びつける際の脳の中のプロセスのことを言います。

今、皆さんは、バランスを崩さず椅子に座って前を向きながら授業を聞き、ノートをとっています。このことも様々な感覚情報が脳の中で処理され行為となって出来ています。人間の感覚には視覚・聴覚・味覚・嗅覚・表在覚(触覚、痛覚、温冷覚)・固有受容覚・前庭覚があります。感覚統合では普段あまり意識せずに使っている触覚・固有受容覚・前庭覚が重視されます。

皆さん、自分の服のボタンをはずしてみてください。チャックを上げ下げしてみてください。【動作開始!!】

このときに手元をずっと見ている人はいませんよね。これがまさしく無意識にモニターしている感覚、視覚に頼らずに指を動かす筋肉や関節から固有受容覚が生じてできる行為です。

皆さん、隣の人に目をつむった状態で違う素材をさわらせてあげてください。【触り合い開始!!】

触って判別、識別をする機能が触覚です。生後、触覚は発達して行きます。触れたものを見ることから始まり、なんでも口に入れて確かめるようになります。それから見えていないものを手探りできるようになり、42ヶ月くらいには触れたものの大きさ、素材で何であるか分かるようになります。触覚には情緒の安定、防衛、識別、身体の地図を把握するなどに働きます。

皆さん、隣の人と腕相撲をしてみてください。【腕相撲開始!!】

身体各部の位置(位置感覚)、運動の状態(運動感覚)、体に加わる抵抗(抵抗感覚)、重量(重量感覚)、振動(振動感覚)を感じましたか。自分自身の身体が、どのように動いているかを知ることができるのが固有受容覚です。手押し車やだるまさんがころんだ、ボルダリングなどは固有受容覚が刺激される遊びです。

それでは、実際に学生さんに前に出てきてもらって、「だるまさんがころんだ」をやってみましょう。【学生3人と教員とで「だるまさんがころんだ」開始!!】

この遊びにはどのような要素が含まれていますか。隣の人と話し合ってください。聴覚、視覚、予測、他者とあわす、ルールごと、バランスなどが含まれています。このルールごとを変えることで作業療法として使うことができます。固有受容覚には力加減、運動のコントロール、持続的に姿勢を保つ、身体の地図を把握、情緒の安定、覚醒の調整などに働きます。

子どもは色々な遊びをします。

遊びの中で色々な感覚の基礎ができ、抗重力姿勢が発達し、体幹が安定していきます。体幹が安定すると座位、立位が安定し手足や目が使いやすくなっていきます。

そして自分の身体の図式、運動企画ができるようになるというように、積み木を積むように感覚統合は発達していきます。その基礎となるたくさんの感覚を使う「遊び」をすることがとても大切な事なのです。

では続いて、遊びを体感できる教室に移動しましょう。

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授業の後半は講義室を移動し、遊具のある教室に全員が移りました。

ここからは各4、5名の5グループに分かれて「遊び」を体感しながら授業は進みます。

まずは、「ブランコの乗り方」について学生が自由に発案。様々な乗り方を試し、「子どもってこういう乗り方もするよね」など、様々な提案や評価が飛び交います。

次に、3歳の兄と1歳の妹がトランポリンで楽しく遊ぶ映像が流されます。そして、その子どもたちがブランコで遊んだ場合、この遊び方がどうなるかをグループで話し合って予想してみます。ブランコの高さ、漕ぎ方、漕ぐ方向、様々な予想が発表されます。

さて子どもたちはどのようにしてブランコで遊んだのでしょうか?

答えは、3歳のお兄ちゃんはトランポリンに夢中でブランコでは遊ばず。1歳の妹さんはお父さんの膝に乗ってブランコに乗りますが、大胆な性格なのかそれではちょっと刺激が足りない様子。

トランポリンの映像(限られた情報)から、そういった個々の性格を読み取ることの難しさや事前の観察力がいかに重要であることか、学生たちは気づきます。

 

最後は、自分が4歳の子どもなら、これらの遊具でどんな遊びをするかを考えながらワイワイと遊びます。ただし後日、その遊びを提案するというアナウンスなので、童心に戻りながらもみんな真剣です。

 

作業療法士は治療的な遊びを提供しなければなりません。子どもの課題に応じた遊び、子どもがやりたいと思う遊び、課題とする領域において反応の質が高くなる「ちょうどよいチャレンジ」など、いろいろなパターンがあります。

やってみよう→チャレンジ→できた!で、前に進むことができる遊びを提供できるようになることを目指し、学生たちは、体感し遊びながら遊びを分析し、作業療法の遊びを学んでいます。

この授業の様子は動画でも見ることができます。こちらもぜひご覧ください。

【取材日:2018年1月19日】※所属・学年は取材当時。