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【教育PRO記事】吉田敦彦副学長インタビュー「学生支援のコンセプトは〈多様〉〈融合〉〈国際〉」(1)

留学生アドバイザーの新設について

吉田副学長の写真

吉田副学長(学生担当)

――学生センター(学生課) が担う外国人留学生の支援についてお願いします。

吉田 留学生寮(国際交流会館I-wingなかもず) では、日本人学生や他国の学生との交流が自然に生まれる仕組みづくりを意識して運営しています。住み込みのレジデンスサポーター(略称:RS 外国人留学生と共同生活をする日本人学生) や、留学生総会という外国人留学生の自治組織が、寮にあるグローバルコモンズというスペースを活用し、日本人学生にも呼びかけ、いろいろな交流事業を行っています。学生が留学生を支援するチューター制度とともに、いつでも支えあうことのできる友だち作りを促しています。

2つ目は、先ほどの話にも出た学生サポートのプロである学生センター窓口での一元的な留学生支援です。そのために学生センターでは2016年に、全学の学生委員会と協力して、留学生がどのようなニーズをもっているかの調査を実施しました(回収率73%、176人)。それに基づいて、学生委員会に新設した留学生支援部会で対応を検討し、今後取り組むべき課題として、(1)チューター制度の改善(学生) (2)新たに留学生アドバイザーの導入(教員) (3)留学生就職支援の強化、の3つを決めました。

新たな導入を検討している「留学生アドバイザー」というのは、学業成績が低下したときの面談など、とくに留学生に目配りしてサポートする教員です。各学類に1名以上を選出し、正規の全学委員としての職務と位置づけて大学全体で取り組もうと考えています。ニーズ調査の結果、メンタル面に悪影響を及ぼすのは、学業面と就職面、友達づくりの3つが大きいことが分かってきました。学生チューター制度で友達を作っていくとともに、教員アドバイザーに張り付いてもらって学業面の対応を早めに行ってもらう予定です。また留学生一斉面談を実施し、毎期の成績をチェックして、成績が思わしくない学生には定期面談をしてもらうシステムにもしています。

――ニーズ調査の結果は非常に重要なデータとなります。様々な悩みが学業面の成績としてあらわれてくると思います。

吉田 そもそもあった「学生アドバイザー」制度はクラス担任制のようなもので、大学の認証評価でも先進的な事例として高く評価されていました。学生アドバイザーは全学生のすべてのクラスに配置されていますが、それとは別に留学生にも特化した「留学生アドバイザー」制度も始めることにしたのです。

調査を実施してみて分かったことは、留学生は入学した初めの頃につまずくと思いがちですがそうではなく、日本語もよく話せるようになった上級生の時のストレスが高いということでした。日本語も上手になって、日本で就職して、これからも日本で生きていく、ということを考え始めると、日本の良い面だけでなく裏側の面も見えてきて不安になります。そういう留学生たちの支援も大切であるという経緯で、キャリアサポート室で留学生のための就職ガイダンスを開催し、留学生を受け入れてくれるインターンシップ先を把握・管理しておき、その都度留学生に紹介するサポートを始めています。

キャリア形成については、日本人学生への支援も同様に強化しています。それらの支援は単なる就職活動だけの支援ではなく、1年次からのキャリア形成支援であるという考え方で様々なワークショップを実施し、インターンシップについても企業プログラムをただ紹介するだけではなく、自前のプログラムを企業と協働して開発しています。

例えば、この夏に女性の活躍をテーマにした理系学生によるPBL研修(PBL:Project Based Learning) を行った事例として、ベアリングリテーナー(軸受け部品) 世界トップシェアの中西金属工業(大阪市北区) との提携プログラムがあります。質の高い企業のインターンシップは学生にとって非常にいい機会になりますので、今後もできるだけ大学が企業と提携して直接開発するプログラムを増やしていきたいと考えています。

市民と学生のプラットフォーム「ボランティア・市民活動センター」吉田副学長の写真

――<融合>のコンセプトでもあった、行事や課外活動を通した府大アイデンティティーの形成について詳しくお願いします。

吉田 「ボランティア・市民活動センター」について紹介します。このセンターの前身ができたのは数年前で、全国の大学でも先駆けの事例として注目されました。学生のボランティア活動を通じて自発的に立ち上がってきたものを、大学としてオーソライズ(公認) したものです。

そして2016年度から「ボランティア・市民活動センター」に名称を変更しました。在学生のボランティア活動を支援するだけではなく、企業が社会貢献をしたいというニーズや、市民のボランティア活動を活発にしたい地元自治体のニーズなど、学外のニーズともコラボできる組織にしていきたいという思いで、プラットフォームを大学内に作りました。市民がキャンパスに来て集まることのできる新しいコンセプト、新しい名称のセンターを堺市と連携しながら立ち上げたのです。

大阪府立大学というと男子が多い理系の大学というイメージですが、実は女子学生も元気に活躍しています。このボランティア・市民活動センターは羽曳野キャンパスの女子学生も多く、いま中心メンバーの一翼を担ってくれています。

また、大阪府立大学が地域から信頼される拠点になっていくことで、学生たちの誇りや愛校心も高まります。それらをめざした各種の大学行事の中でも、特に友好祭は“地域との友好を広げる” というコンセプトで行っていることもあって、地域の方々のバザーなどの参加はすごい数です。子どもたちもたくさん来ます。学生たちも子どもたち向けの出し物をいろいろ工夫して出展しています。地域と連携し、地域に開かれたイベントとして定着しています。

―― 「友好祭」期間中の新しい取り組みとして行った「保護者のためのオープンキャンパス」は大好評でしたね。3人の在学生の発表の中で「大阪府立大学には自分よりすごくて面白い活動をしている友達がたくさんいる」という言葉が印象的でした。

吉田 確かに本学には1年生からユニークな活動をしている学生がたくさんいます。しかし、この3人は、第一志望の大学ではなかった、やりたいクラブ活動がなかったなどの理由で、入学した直後はモチベーションが低かったものの在学中の4年間で様々な教職員による支援を受けて大きく成長した学生です。その点で、自分の子を同じように気遣う保護者の方に強く共感いただけたのではと思っています。

“ 学生参画型” のキャンパス運営をめざて活動しています

――学生の自治的な組織である、学生団体連絡会の活性化に焦点を当てたお話を。

吉田 「学生団体連絡会」は自治会、体育会、大学祭実行委員会等の学生団体で構成されています。学生参画型キャンパスの運営をめざして、学生中心の学生センターでありたい、そのためにも何かあったら、当事者である学生の声を直に聴くように努めています。そういった思いもあり、学生団体の代表との連絡会を毎月開き情報交換しています

例えば、以前の連絡会では大阪市立大学との統合なども話題になり、両者の統合を進める過程で詳しく説明してほしいことは何かと聞いたところ、「奨学金、学費減免制度など府大と市大で制度が違うものはどちらに合わせるのか?」「新大学の名前はどうなるのか?」「運動部クラブは1つになるのか。それぞれのチームを残すことはできるのか?」など、非常に多くのフィードバックがありました。こういったプロセスを大切にして、一緒に大学を作っていくことを進めています。

さらに、今年度のホットな話題として自転車マナー対策があります。キャンパスがフラットかつ広いので、自転車は学内移動のための必需品になっています。一方で放置自転車もあり、学内に多数整備している駐輪場もすぐにあふれてしまいます。一番よくないのは最寄り駅である地下鉄なかもず駅や南海白鷺駅周辺に自転車を違法駐輪し、放置すること。それをしないようにという自転車マナー向上の啓発キャンペーンを、学生団体連絡会の学生たち20人余りが積極的に参加して、協働して行うことができました。

――大阪府立大学の学生は元気ですね。勉学だけではなく、課外活動やボランティア活動に一生懸命です。学生の起業活動にも大学は後押ししています。

吉田 起業を考える学生たちを応援する「チャレンジくん事業」「事起こし事業」などを後援会(在学生保護者の会) で行っておりまして、学生たちが自主的にこういうアイディアで事を始めたい、チャレンジしたいということがあれば、審査を経て支援しています。毎年、10件前後を採択していますが、その中から本格的に起業するアイディアも育っています。例えばこの誌面でも記事に取り上げていただいている安達君の音楽デリバリーの事業は「事起こし事業」に採択され、3年間で50万円の支援を受けています。 

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給付型奨学金も独自に設立しました吉田副学長の写真

また、留学で海外に翔び出していこうと志す学生を応援しようと、学長を先頭に取り組んでいます。そのための充実策のひとつとして、「グローバルリーダー育成奨学金」「河村孝夫記念奨学金」などの給付型奨学金も独自に新設しました。

活躍する学生を表彰する「学長顕彰」においてもその対象を拡充して、様々な学生をエンカレッジするようにしています。これまでは大学院生のアカデミックな成果を対象にすることが多かったのですが、学域生たちのボランティア活動も含めて、対象を幅広い分野に広げて学生の活躍を後押ししています。象徴的には先ほどの「フダイバーシティ」や、全国の公立大学生を取りまとめるアクションを府大生が主導した「公立大学学生ネットワーク LINKtopos」なども表彰しています。

教育と学生活動は『車の両輪』。身につけた力は外部調査でも高い評価をいただいています

――2017年6月の日経「企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査」で、大阪府立大学が総合9位にランキングされたことは特筆すべきことですね。何が評価されたと考えますか?

吉田 この調査は、全上場企業と一部有力未上場企業の人事担当者を対象に、過去2年間(2015年4月~ 2017 年3月)に採用した学生から見た大学のイメージなどを聞いたもので、本学は評価基準となる側面項目「行動力(8位)」「対人力(15位)」「知力・学力(12位)」「独創性(16位)」のすべてで20位以内の評価となりました。 また、同時に調査された、大学の取り組みを評価する部門でも複数の項目でトップ10にランキングされ、学生指導に熱心に取り組んでいる(10位)、すぐれた研究を行っている(8位)、施設や立地などの学習環境が整っている(9 位)の項目で優れた評価となりました。

先ほどから紹介させていただいた自主的な課外活動や、多様な学生が同じキャンパスでインクルーシブに学んでいるなどの要素が学生たちにそういった力をつけているのではないかと思っています。私はいつも「主体性・多様性・協働性」が大切だとキャッチフレーズのように言っていますが、教育改革面でもアクティブ・ラーニングの充実など積極的に取り組んでいます。「充実した正課教育」と「学生の自主活動」が『車の両輪』となって、たくましい力を身につけてくれているのだと思っています。

 

【略歴】吉田敦彦(よしだ・あつひこ) 京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士。学生担当副学長(3年目)、人間社会学研究科長(2年目)、第一学群長(2年目)。地域保健学域教育福祉学類教授。大好きなことは、杯を片手に人生談義(とくに学生たちとの)。

【取材日:2017年11月28日】※所属は取材当時