大阪府立大学を卒業し、第一線でご活躍されている先輩方のお話を聞くことができる校友懇話会。

今回は、長瀬産業株式会社 取締役兼常務執行役員の森下治さん(経済学部OB)が講師として登壇されました。森下さんが出向社長として苦心された、株式会社林原の再生についてのお話を中心に、企業の体制づくりについてご講演いただきました。

◆プロフィール

森下 治 (もりした おさむ) さん

1979年 大阪府立大学経済学部経済学科 卒業

同年 長瀬産業株式会社に入社

2009年 執行役員、上海長瀬貿易有限公COO

2012年 執行役員、取締役兼執行役員。生活関連セグメント担当、研究開発センター担当、大阪地区担当

2017年 執行役員、取締役兼常務執行役員。株式会社林原担当、ナガセR&Dセンター担当、製造業担当

2018年 執行役員、取締役兼常務執行役員。製造業担当、大阪地区担当、エネルギー事業室担当、特命担当

 

●大学卒業後から現在までの略歴


大学卒業後、商社の長瀬産業に就職しました。50歳まで国内の営業マンでした。

50歳を超えてから上海や中国で現地企業の立ち上げなどを行いました。2012年に林原の買収が決まると同時期に帰国し、社長として買収後のかじ取りを今年の3月まで行っていました。現在は長瀬産業の製造担当として働いています。

 

●長瀬産業について

長瀬産業は、機能素材事業、加工材料事業、電子事業、自動車・エネルギー事業、生活関連事業などを行う企業です。2014年までは商社として化学品だけではなく加工し、電子や自動車・エネルギー、生活関連の製品を供給してきました。2015年からトップが変わり事業構築の概念が変わりました。

商社中心の考え方から、商社をグループ機能のひとつと考え、グループ一丸となって世界へ新たな価値を創造・提供するビジネスデザイナーの集団へと変革しようとしています。我々の持つ機能をすべて生かして投資、研究、商社機能、製造、海外への展開などの事業展開を行う企業へと向かっています。

業績に関しては、おかげさまで右肩上がりで利益は上がっています。商社業を中心としていますから、どうしても人件費率が高くなりますが、商社ですが製造業の利益も高いというのが特徴です。

また、中国、中東含めてアクティビティに非常に強い企業です。今問題になっているのは、こちらが寝ているときにアメリカやヨーロッパでは働いているということで、昨今は投資型のビジネスに転換しつつあります。

 


●株式会社林原の買収、立て直し

林原は、創業明治16年(1883)水飴製造業から始まった企業で、岡山では非常に著名な企業です。2011年1月に倒産、2012年3月に会社更生法適用で長瀬産業がスポンサーとなりその間に700億の投資が行われました。それ以後も百数十億の設備投資が行われています。かなりお金を入れてしっかりしたモノを世に出していこうとしています。

買収した際に非常に苦労したことは、林原が得意とする生活セグメントには、赤ちゃんから高齢者の方まで様々なコンセプトの切り口があり、どこを主なモデルとしてモノを作っていくのかということでした。

我々は何を持っているのかにフォーカスし、機能性糖質技術(トレハロース)や化粧品などに使われるAA2G(アスコルビン酸)、それを製造するための酵素技術とジェネリックなどの製剤をキーとして、食への貢献、医療への貢献、人が健康で豊かに生活することに貢献することを概念とし事業展開しています。

 

●倒産以前の林原について

旧林原は1959年の酵素糖化法によるブドウ糖製造で大きな利益を上げています。これをベースに1988年のインターフェロンの製造で世界的にも有名になったのですが、ここでどのように強い生産をしていくか、という研究をしなかった。そのため、周囲からは持ち上げられるが、実質的には競争力のある生産体制にならず、名前は有名になったがトータル財産性のまったくないビジネスになってしまいました。その後、安定型ビタミンCの大量生産技術を開発、トレハロースの大量生産技術の開発などをしたのですが、2011年に倒産してしまいます。

経営判断のミスも間違いなくありますが、その要因を作っていったのは生産、営業、研究というセクションがバラバラで企業としての方向性の統一が取れなかった。コミュニケーション不足が大きな要因であったと思っています。社員の意識、コンプライアンスの問題もありましたが、どんなに優秀なトップでも50年も君臨すれば何かが起こるものだと思います。

 


●林原再生への道のり

現在は林原として生産、営業、研究を一つの組織として事業をしています。糖質技術を核にイノベーションを起こし続けるオンリーワン企業ヘをビジョンとして、当時は技術だけに注力していた企業でしたがマーケットも視野に、人、地域との融和も含めて展開していこうとしています。

内部統制システム、経営会議のあり方、経営会議のメンバリングもみんなと話し合いながら、ひとりのガバナンスにしないという体制をつくりました。また、モノづくりの会社ですから「人」こそが資産であり大切です。一人ひとりの状態をもっと見ていこうということで部門、年代でグラフを作り、人材のどこにネックが有るのかを明確にし、人材の強化を図れるようにしました。

技術の考え方として社員とよく話すことなのですが以前は特許をガチガチに固めて事業を行う企業でした。それは非常に良いことなのですが、そうなると昼寝をしてしまい、内部で何も考えなくなってしまう。特許はそのうち切れてしまいます。特許という傘をもっと増やそう。自分たちで見つけようとメッセージを出して意識改革も進めました。

また以前は、何でもかんでも“やれ”という体質であったのを長期テーマ、短中期テーマに分け、林原のDNAである革新的技術で新素材を生み出すということを普遍のテーマとして、やり抜く体制づくりを進めました。長瀬という商社が入ったことでニーズをとらえやすくなり、ニーズをしっかりとらえて中期型の開発にも力を入れるようにしました。あとは、すぐに売れる製剤にも力を入れるようにしています。

 


●林原美術館について

岡山藩主・池田家からの伝来品と故林原一郎氏の個人コレクションからなる東洋古美術の美術館です。国宝・重文を含む約1万件の美術品を収蔵しています。刀剣が多く収蔵されています。池田家から継承できないものかと相談を受けた際に、林原の創業者が全てまとめて引き取られたそうです。ですので、まだ開封されていないものも多くあります。まだまだ非常に面白いものが出てきます。

買収時には、これらをどうしたものかと議論もありましたし、地元の方も長瀬が入ったことで池田家の伝来品はどうなるのかと心配されていたようですが、このようなものは手放してはいけないという思いと、地域で仕事をするということは、地域に応援してもらわなければいけないという思いから出来る限りのことをさせてもらった結果、地域の方にも社員にも喜んでもらっています。

 

【参加した学生の感想:マネジメント学類 田中 亮成】

貴重なお話をたくさん聞くことができましたが、中でも「特許の傘を増やす」というお話が強く印象に残っています。リーダーとして現状に満足せず、次はどうするべきか、どうあるべきかを考え続ける。またそれを発信することが大切だと感じました。

その後、普段は関わることのないOB、OGの方々ともお話させていただき、来年は社会人を迎える私は身の引き締まる思いを強く感じました。


 

社会でご活躍されている先輩方のお話を直接聞くことができる校友懇話会。過去には讀賣テレビアナウンサーの林マオさんや、南都銀行頭取(現会長) 植野康夫さんをお招きしたこともあります。

校友会会員の学生は参加費無料(人数が多ければ割引)で参加することもできます。

校友懇話会開催前には、中百舌鳥門横にある校友会掲示板にポスターが出ているので、機会があれば参加してみてはいかがでしょうか!

 

◆リンク

過去の校友懇話会はこちらを参照

http://www.opucr.osakafu-u.ac.jp/event_category/koyukonwakai/

【取材日:2018年9月12日】 ※所属は取材当時。