海外への留学は、これから社会に羽ばたいていく、そして自らの将来を切り開いていく学生のみなさんにとって、かけがえのない経験です。語学力向上など具体的なスキルを身につけることはもちろんのこと、日々の生活やコミュニケーションを通しての異文化への理解を深め、国際的な感覚を養うことは、人としての視野を広げ、大きな自信にも繋がっていきます。
現在、電気電子系学類情報工学課程3年生の小山彩さんは、3年の秋から春にかけて、交換留学プログラム※を利用してフランス セルジー・ポントワーズ大学に留学しました。帰国から約半年が経ち、あらためて留学を振り返ってもらいました。

※交換留学プログラム…本学の学術交流協定締結大学に交換留学するプログラム(全学を対象)。交換留学する期間は在学期間に算入され、留学先で取得した成績をもとに本学で単位認定を受けられる場合もあります。留学中は学費は本学に納め、留学先大学の授業料は免除されます。


■きっかけは国際交流プログラム

― 最初に、フランスへ留学しようと思った理由を教えてください。
1回生の時、国際交流課のプログラムで2週間セルジーに滞在しました。第二外国語でフランス語を選択していたというのもあるのですが、単純に旅行としてフランスに行ってみたかった。フランスってきれいな建物がたくさんあって、服が可愛くて、ご飯も美味しくて……みたいなイメージじゃないですか(笑)。もちろん実際行ってみると想像していたものとはいろいろ違うのですけど、経験としてはやっぱり楽しかったです。言葉がちょっと通じたり、向こうに知り合いができたり。

― それが交換留学に繋がっていったのですね。
そうですね。私のまわりには留学した友だちが何人かいて、そういうのも良いかなくらいの興味はずっとありました。それで実際どこに留学するかを考えた時、やっぱり現実感がある選択肢としてフランスかなと。フランス語ももっと喋れるようになりたかったですし。

― じゃあ留学の目的は語学? 専攻ではない分野で留学することに不安はなかったですか。
正直それはあまり考えなかったですけど、帰国後みんなから1年遅れる点については少し不安はありました。でも自分なりにいろいろ考えて、そういうのもありかなと。1回生の滞在の時、当時交換留学でセルジーに来ていた先輩にお会いする機会があって、たぶんその人の印象も強かったのだと思います。ちなみにセルジー・ポントワーズ大学では、語学力次第では専門科目も履修できることになっているのですが、私自身はぜんぜんそこまでじゃなかったですね。

― 留学を決めたのはいつですか。
2年生の冬に交換留学の説明会があって、それに参加してからです。申し込みは3月でした。

― 出発に向けてどんな準備をしましたか。
応募してからは、ビザの申請とか寮の手配とか、提出しなきゃいけない書類がいろいろあったので、6月くらいまではバタバタしていました。そういう手続きがあることも全然わかっていなかったので、国際交流課の方にいろいろ手伝ってもらいました。もちろんその間も日々の授業があって、合間を縫って単語を覚えたり、検定の本を買って問いたりしましたね。

■セルジー・ポントワーズ大学での学び

― セルジーではどんなところに住んでいましたか。
学校近くの学生寮です。大学を通じて事前に申し込んでおいたので、入居自体はぜんぜん問題なかったです。日本で大学寮っていうと寮母さんがいて食堂があってみたいなイメージですけど、私の入った寮は部屋の中にキッチンとシャワールームがあるワンルームマンションみたいなところでした。だからほとんど一人暮らしの感覚ですね。

― じゃあ寮での他の学生との交流というのはなかった?
そうですね。もちろんフランス人の学生も多く住んでいましたし、他の国からの留学生がいたり、中には働きながら大学に通っている人もいたりするのですけど、寮で知り合って仲良くなるということはなかったです。

― セルジー・ポントワーズ大学では日本語英語学科で、主に日本語に関する授業を現地の学生と一緒に受けていたのですよね。
私が選択していたのは日本語文法、翻訳、日本の歴史などです。もちろん内容自体は簡単なのですが、フランス語で授業が行われるので、全てを聞き取って理解するのは思っていたより大変でした。でも、まわりの学生がいろいろ助けてくれたので、なんとかついていくことができました。日本語英語学科の学生は、基本的に日本に興味がある人ばかりなので、とてもフレンドリーで親切にしてくれましたね。

― フランス語の授業も受けましたか。
はい。CILFAC という留学生向けの授業があって、それぞれの語学力に合わせてクラス分けされ、他の国からの留学生と一緒に学びました。私のクラスには韓国や中国、ドイツ、イタリアなどからの留学生がいましたね。授業ではフランス語で自分の意見を述べる機会がたくさんあって、最初は何も言えなくてしどろもどろだったのですが、回を重ねるごとに考えていることが少しずつ言えるようになりました。他の国の留学生と話すのは、違う国の文化や考え方を知ることができて、とても刺激になりました。

 

■学外でも多様なコミュニケーション

― 授業のない期間や休日はどんなことをしていましたか。
とにかくたくさん出かけるようにはしていましたね。セルジーは田舎町なので、いわゆるフランスっぽいイメージとはずいぶん違います。でも電車に1時間くらい乗ってパリまで出ると、やっぱりオシャレだし、美術館もいっぱいあるし、やっぱりフランスだなって実感しました(笑)。パリに出るといろんな出会いがありました。急に声をかけられて日本のアイドルについてマシンガントークをされたり、レストランでたまたま隣の席に座った人が日本語を勉強していていろいろお喋りしたり。私がわかりやすく日本人っぽいせいかもしれませんけど、とにかく日本に興味のある人に声をかけられることが多くて、そのたびに逆に日本のことをいろいろ教えてもらいました。
あと、フランスから国外に出て、ベルギーやドイツにも行きました。バスで3時間、3000円とかで国境を越えることができるので、それはすごく新鮮でした。通貨も同じユーロだし、パスポートもいらない。こんなにも気軽に、外国に行くことができるのかと思いましたね。

― それ以外にプライベートで印象に残っていることは?
いろいろありますけど、友達の家のホームパーティーに何度か誘われたことがあって、それはすごく楽しかったです。フランス人もいたし、他の国の人もいたし。私はあまりお酒が飲めないのですけど、みんなめちゃくちゃ強いお酒をガンガン飲んでいましたよ(笑)。それでいろいろお酒を勧めてくれたりもするのですけど、でも誰も絶対に強要はしません。宗教的に飲まない人もいたりするからなのですが、そのあたりみんなすごく理解していて、いいなって思いました。

 

■日本とフランスの学生の違い

― フランス人だけじゃなく、いろんな国の学生とのコミュニケーションを通して、感じたことはありますか。
日本語英語学科の学生は、当たり前ですけど、みんな日本にすごく興味がありましたが、そのほとんどがやっぱりマンガとかアニメです。日本語は話せないけど「ドラゴンボール」の名台詞はスラスラ言える人とかいっぱいいました(笑)。だから「このマンガ知ってる?」とか聞かれることも多かったのですけど、私はそんなにマンガを読むほうじゃなくて、だいたい彼らのほうがよく知っていましたね。他にも日本のアイドル好きな女の子がいたりして、やっぱり日本のポップカルチャーは世界で人気があるのだなって感じました。

― マンガとかアニメ以外で日本について聞かれることはありましたか。たとえば伝統的な文化とか宗教とか。
そこに興味を持って聞いてくる人はあんまりいなかったけど、話の流れで「これって日本ではどう?」みたいな感じで宗教や政治のことを聞かれることはありました。特にフランス人はそのあたり普通に聞いてきました。私が留学する少し前に大統領がオランドさんからマクロンさんに代わったこともあって、みんな政治についてはすごく熱心に話していて、「ところで日本ではどうなの?」みたいに聞かれることが多かったです。でも、私は日本の友だちと宗教や政治のことを喋ったことはほとんどないし、正直ほとんど考えたこともなかったから、何も答えられなかった。ああ、私って何も考えずに生きて来たんだなって、あらためて突きつけられる感じ。それで余計に幼く見られたりして、ちょっと情けなくなったりもしましたね。

― 日本の大学生に比べてフランスの方が成熟している?
そうですね。やっぱりみんな自分をしっかり持っている印象です。日本よりも型にはまって生きている人がいないというか、自分の生き方を恥ずかしがっていないというか。自分は将来はこういうことがしたいから今これをやっているのだとか、日本人はあんまり言わないじゃないですか。でもみんな普通に言うのです。私自身、将来のことはまだぼやっとしか考えてなくて、みんな大人だなって思いました。

■迷っているなら行ったほうがいい

― 帰国して半年が経ちますが、あらためて振り返ってフランス留学は小山さんにとってどんな意味がありましたか。
もちろん一言では言い切れないですが、自分に少し自信はついたと思います。まわりからはあんまり変わってないって言われますけど(笑)。以前より言いたいことがはっきり言えるようになりました。フランスでは少しやりすぎかなっていうくらい自己主張しないと、意見や要望が通らないことがたくさんあります。学校ではみんなとても親切にしてくれましたが、一歩外に出るとぜんぜんそうはいかない。特に役所の窓口などでは、ダメとか無理って言われても諦めず、何度も何度も頼んでようやく話を聞いてくれるのが普通です。いろいろ苦労しましたが、メンタル的に強くなったと思います。

―逆に後悔というか、やり残したなということはありますか。
やっぱり語学ですね。語学力を伸ばすのはなかなか大変だなと。授業を受けていても分からないことも多かったですし。もっと喋ればよかったなって毎日思っていました。それはもっと勉強していたらよかったということだけじゃなくて、昨日もっと喋れたのではないのかなとか、積極性が足りなかったのかなとか。

―今後、留学の経験を生かしてチャレンジしてみたいこととかはありますか。
まだはっきりと決めているわけではないですが、大学院へ進んで、専門分野を持ってもう一度フランスとの関わりを作っていきたいですね。情報工学にはフランスからの留学生もかなり多いので、そういう点でもフランス語を活かす機会を見つけていきたいと考えています。そして欲を言えばフランス語が使える仕事につけたらなと。留学の経験ってほうっておいたらどんどん意味がなくなってしまうと思います。だから少なくとも語学に関しては勉強を続けて生きたいと思っています。あと向こうで知り合った人たちとの関係も大切にしていきたいですね。

―最後に、フランスへの留学を考えている後輩にアドバイスを。
あくまでも個人的な考えですけど、迷っているなら行ったほうがいいと思います。もしかしたら行って後悔することもあるかも知れないけど、行かなかったらずっと後悔するかなぁって。府大からフランスへ留学する学生はけっして多くないですけど、興味を持ったらぜひ行ってほしいですね。

【取材日:2018年9月4日】※所属は取材当時。