行政・大学を動かして地元“門真”で子どもたちが夢に近づける場を作る!/課外活動紹介「KADOMA 中学生勉強会」(平成 30 年度大阪府立大学後援会チャレンジくん採択事業、門真市・門真市教育委員会後援)

今回取材したのは、今年の10月から大阪府門真市にて中学生向け学習支援事業をスタートさせた八上真也さん(地域保健学域 教育福祉学類4年)です!

インタビューに応える八上さん

――KADOMA 中学生勉強会ができた背景を教えてください

大学1年生の頃から東淀川区の学習支援事業に参加をしていて、地元門真では学習支援に関してどんな取り組みをしているのか興味をもったのがきっかけです。

実際に現場を見に行きましたが、端的に言って門真でやっていた学習支援は「自学自習できる子」しか対象にしていなかったんです。

それから大学の先生に勧められて、門真の学習支援について調べたところ、学習支援に関する外部の人や現場の校長先生から「クラブ活動後に参加できない」「大学生が集まらない」「自学自習できない生徒が参加できていない」などの問題点が指摘されていて、まさに私が思っていた現状と同じでした。

他にも全日制高校の進学率が 86.3%(平成29 年度 大阪府全体93.7%)であることや、学力テストの結果も府や全国平均と大きく差がひらいていること、さらに子どもの生活実態調査の結果では、中学 2 年保護者の 20.9%(大阪府平均 12.3%)が「経済的理由で塾に通わせることができなかった」と回答していました。これらの数字・議事録を全て持参して、今の学習支援事業では不十分だと門真市教育委員会へ直接、訴えにもいきました。でもなかなか一人の大学生の言葉に行政は動いてくれませんでした。

それで今年、学生として最後のチャンスだと思い、色んな人にアプローチして市議会でも取り上げていただきましたが、動きませんでした。じゃあもう、行政がやれないなら大学生でやろうと思い、こういった取り組みを始めることになりました。

 

――いつから門真に焦点を当て始めたのですか?

高校で門真以外の学校に進学しましたが、そこで初めて門真以外の教育状況を知り、地元の教育環境の不十分さに違和感を抱いていました。

大学に入ってからも子どもの貧困について学ぶ中で、門真の状況は常に注視していて、具体的に動きだしたのは大学2年生の頃に地元で実施している学習支援の様子を見に行ってからですね。

 

――立ち上げに際してのエピソードがあれば教えてください

去年は MICHITAKEに取り上げてもらった大阪府のモデル事業「子どもの貧困対策モデル事業」(※1)が昨年スタートしたこともあり、門真でも子どもの貧困に対する熱が高まって新たな学習支援を作るには最初で最後の大チャンスでした。

2017年9月 子どもの未来応援ネットワーク事業キックオフ大会(右から 3 人目が八上さん)

 

そこで今の問題点を改善し、門真市が主催する新たな学習支援を作ってくださいと訴えるために市長や議員、行政へ何度も足を運びました。

ただ、なかなか実現には至らず、すごく悔しい想いをしたのを昨日のように覚えています。行政が動けないなら大学生が主催者となって何か形になるものを残したいと思っていたときに、大学の後援会が実施している「チャレンジくん事業」(※2)の存在を知りました。

しかし今、大学4年生で来春には社会人になる私が学習支援を立ち上げてよいものか、来年以降のことも考えるとすごく悩みました。

それでも、「行政ができなかった取り組みを、半年間、週 1 回続けることは、今門真にいる中学生にとって必ずプラスになる」と思い立ち上げを決めました。

 

 ――学習支援をともに取り組む仲間についての思いがあれば教えてください

今、25 人(内 10 人が府大生)が学生サポーターとして登録してくれています。教育福祉学類の同級生やサークルの後輩、高校の同級生、これまで東淀川区の学習支援で一緒に活動していた仲間、そして地元門真の友人が集まってくれています。

さらに友達を連れてきてくれる子もいて私のコミュニティを越えて、段々と広がってきています。
予算の関係で学生サポーターには交通費しか払うことができず、完全なボランティアのなかで協力してくれて本当に感謝の一言です。

ただ、まだまだ大学生の力が必要なので、是非一人でも多く門真の子どもたちのために協力してくれればと思います。

 

 ―「KADOMA 中学生勉強会」の特徴について教えてください

10月10日 から 3 月末まで毎週水曜日の計 23 回、18:00~19:30に開催します。大学生 1 名に対して中学生 2~3 名の学習をサポートすることを想定しています。ただ決して勉強だけをするのではなく、大学生とも色んな話をしながら生徒たちにとっての居場所としても機能することを目標にしています。

門真市内には大学もありませんし、周りに大学へ進学した人が少ない生徒たちにとって大学生と一緒に勉強できることは、貴重な経験になると思います。

さらに、中学生も歳の近い大学生なら話しやすいでしょうし、よきお兄さん、お姉さんとして生徒たちのモデルになるような環境を作りたいと思っています。あとはまた、クリスマス会や節分会などのイベントも計画して、文化的体験をできる場も用意したいと考えています。

第1回勉強会の写真

第1回勉強会の様子 中学生 20 名、大学生 13 名が参加

 

――今後の展望はどんな感じですか?

この勉強会は想像以上の反響で定員の 20 名を超える 32 名から応募がありました。
予算の関係で 20 名しか受け入れることができない状況なのですが、残りの生徒にも勉強会に 1 日でも早く参加してほしいと思っています。そのためには大学生サポーターの増員と資金の確保が必要となります。この記事を見てくれた大学生に学生サポーターとして是非、協力してほしいと思っています。

僕にとって門真はかけがえのない故郷で大好きな街ですし、だからこそ門真の現状や世間の評価に悔しさを感じています。学習支援事業を含めた広い意味での子供の貧困対策においては、一貫性、継続性が重要です。だから今でも「大学生が主催すべきでない、行政が主催、委託すべき」との思いは最初から変わりありません。

あえて厳しいことを言いますが、門真市が主催している今の学習支援事業の状況を変えずして、真の意味での子どもの貧困対策や学力向上は実現できないと思います。いずれにせよ来年以降、どんな形でも継続できるように私も最大限努力したいと思っています。

最後に、子どもの生活実態調査(※3)の結果において、「門真の子どもたちは、夢や目標を持っていますか?」の問いに「持っている」と回答した率が大阪府平均を大きく上回っていました。彼らが夢や目標に少しでも近づけられるように、この勉強会でサポートしていきたいと思います。

 

――受験生へのメッセージをお願いします!

大阪府立大学は本当に良い大学だと思っています。そもそも東淀川区での学習支援事業を紹介してくれたのは、教育福祉学類の嵯峨嘉子先生ですし、これだけ門真で活動させていただけるのも、教育福祉学類の山野則子先生からの協力があったからこそです。他にも僕の活動を応援し見守ってくれる先生方がいる環境が、この大学にはあります。

もう一度大学に入るってなったとしても、大阪府立大学の教育福祉学類を選ぶと思います。ここには、たくさんの仲間がいますし、自分の想いを形にする環境があると思うのでぜひ来てほしいと思います!

 

【取材を終えて一言!】
今回の取材は、八上さんが門真に対して熱い想いを持っているからこそ、今の現状に課題感を持ち、活発に活動できているということがひしひしと伝わってくるお話でした。

八上さん、ありがとうございました!

 

(※1)
地元のために。高校時代からの想いを胸に。/教育福祉学類 八上真也さん
(ミチテイク2017 年 10 月 19 日 掲 載 記 事 )

(※2)
「チャレンジくん事業」:新しい企画の実施・目標実現にチャレンジしたい府大生を育成するために創設された目標設定型の奨励金制度

(※3)
子どもの生活実態調査:平成28年7月実施 対象は小学5年生・中学2年生、その保護者(府域における子どもの生活実態や学習環境を把握し、支援を必要とする子どもやその家族に対する対策について検証を行うため、子ども・保護者向けに行われた調査)

【取材日:2018 年 9月 28 日】
【取材:崎山琴音 MICHITAKERs 現代システム科学域 知識情報システム学類 2 年】
(※所属は取材当時)

◆参考リンク
KADOMA 中学生勉強会 ホームページ