11/16(金)、I-siteなんば「まちライブラリー@大阪府立大学」でアカデミックカフェが開催されました。カタリストは高等教育推進機構の松井利之教授。高度人材育成センター長も兼務される先生のテーマは「イノベーションを起こす力――社会に変革をもたらす人材の育成――」です。

お話をする松井先生 写真

少子高齢化や産業構造のグローバル化など、日本の産業界は多くの課題に直面しています。高度成長を支えてきた、いわゆる日本的企業経営にみられる制度や慣行が、今日の経済成長戦略の根幹とされるイノベーションの創出にとって、むしろそれを阻害する要因になっているともいわれています。

このような時代を迎え、高等教育機関としての責任を担う大学には、新たな社会構造や産業構造の変化に対応できる人材の育成が求められており、イノベーションの担い手となる、自由で大胆な発想を持つ若手の高度研究者「アントレプレナー」の育成を進めることが極めて重要な課題となっています。ここ数年、府立大でも大学生・大学院生を対象に、これらを意図した授業やセミナー、ワークショップが多数開かれています。

イノベーションとは、社会に価値をもたらし、変化を起こすような新しい物事を創造すること。イノベーションが果たす役割には「プロダクトイノベーション(製品、サービス)」「プロセスイノベーション(生産、流通)」「サプライチェーンイノベーション」「マーケティングイノベーション(販売先、顧客)」「組織のイノベーション」の5つが挙げられます。

歴史を紐解くと、テクノロジー分野のイノベーションは加速度的に成長しているのがわかります。古くは印刷機の誕生から始まり、蒸気機関、自動車、アポロ13号の月面着陸など。パソコン、携帯電話からスマートフォンへの革新は、私たちのライフスタイルを大きく変えました。近未来に目を移すと、ビッグデータとAIの活用によるさらなる社会変革が考えられます。AIが私たちの生き方を判断して導く、そんな日が訪れるのも遠くないのかもしれません。

アカデミックカフェの様子 写真
しかしイノベーションを創出することは簡単ではありません。イノベーションには「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つがあります。まず持続的イノベーションとは、現在市場で求められている価値を向上させるタイプ。“ゆっくり少しずつ性能を改良しましょう”ということです。例えばデジカメの解像度。初期と比べると現在は格段に美しい写真を撮影できます。また電球から蛍光灯、LEDへの進化も持続的イノベーションといえます。

これに対して「破壊的イノベーション」は、現在市場で求められている価値を低下させて、別の価値を付け加えるタイプ。例えば、初期の携帯電話に内蔵されたデジカメ。画質という価値は低下しましたが、携帯電話に内蔵されたことにより、ユーザーは飛躍的に増えました。また掃除機の概念を変えたのが「ルンバ」。自分で掃除しなくても、留守中に起動すれば勝手に掃除してくれます。このように“性能は少し落ちるけど、違うところに概念を変えましょう”というものが、破壊的イノベーションです。

講義の後半は、参加者の皆さんにアイデア発想演習を体験していただくグループワークを実施しました。アイデアの思考法をレクチャーした後、松井先生が提示したテーマは「最高の“通勤”」。通勤に関する悩みや困っている事を皆さんで意見交換し、それに対する解決案(アイデア)を考える、というところまで行いました。皆さん、限られた時間内で活発に話し合っていました。

アカデミックカフェの様子 写真
<グループワーク演習項目>

1)ユーザーの困り事を探す
2)通勤についてシステム的に分析する
3)アイデアを考える
4)アイデアの価値を高める
5)ストーリーを考える
6)プレゼンテーション

講義の最後に先生はこう締め括りました。「1+2=?と聞かれれば,答えは3だけになりますが、3を作る計算式は?と聞かれれば答えは無限にあります。四則計算の基本を学んで一つの答えを求めることを従来の学びとするなら、今後はその学びを基礎として、無限にある新たな価値を創造する力を養うことがますます重要になると思われます。このようなワークショップやセミナーを積み重ね、様々な経験を通して多様な価値観を持つことが大切だと学生たちには伝えています。“虎に翼”という言葉があります。しっかりとした基礎学力や研究力を持つ虎に、価値創造をする力という翼を付けることで、より素晴らしい人生を歩める――イノベーションを起こすこと、アイデアを作っていくのは楽しい作業です。将来の日本社会を支えるような若き人材を育成できるよう、今後も取り組んで行きます」。

参加者の集合写真

<先生のオススメ本>
「10年後、君に仕事はあるのか?」藤原和博(ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478101889.html

 

【取材日:2018年11月16日】※所属は取材当時