11/11、I-siteなんばにて「第46回 海洋教育フォーラム in 大阪 海の研究最前線―研究者と語ろう―」が開催されました。

この海洋教育フォーラムは、船や海に興味を持つ子供たちや、海事産業や水産業等で活躍したいと考える次世代を担う若者たちの育成を図ることや、海に関して『海をよく知り、海に親しみを持ち、海を守り、海の豊かな恵みを利用すること』等の啓蒙活動の一環で本学教員も多数関わる海洋教育推進委員会が開催しています。

会場には海洋学研究の関係者を初めとする40名ほどの参加者が集まっており、専門的な分野のフォーラムにも関わらず以外にも、海に興味がある大学生や親子連れの中高生も多数参加していました。

海洋は産業を支える貿易や物流の場として、資源やエネルギーの生産の場として、憩いやレジャーやスポーツの場として、我々日本人の生活・文化を支えています。しかし、普段このことを実感する機会はなかなかありません。さらに日本の海は世界でも6番目の広さ(約405万km2)を誇る排他的経済水域(EEZ)を有するにも関わらず、まだまだ有効活用出来ていないという現実があります。このような海をそれぞれの立場から研究している3人の研究者に、研究内容だけでなく、この分野の研究をはじめたきっかけなども交えてお話いただきました。

今回登壇したのは、本学の教員で現代システム科学域長も務める大塚 耕司教授、JASMTEC海洋工学センターの吉田 弘さん、神戸大学の巽 好幸教授の3人でした。

この記事では大塚教授の講演を中心にレポートします。

大塚教授の講演テーマは「大阪湾の環境と生態」。
現在取り組まれている魚あらのリサイクル材を用いた漁場環境改善、情報技術を使った新しい水産流通の確立、地魚を使ったメニュー開発などを多世代共創で進める長期プロジェクト「魚庭(なにわ)の海の再生プロジェクト」にも関係するお話を聞くことができました。

東京湾と大阪湾の水域面積や平均水深・最大水深、また5m以浅の面積などの比較をクイズ形式でわかりやすく説明し、他にも大阪湾で起こる潮流や、潮汐残差流などの特徴についてもお話しされました。

その中でも特に印象的だったのが、大阪湾についての豆知識。
大阪湾は45度卵を傾けたような形で、長径が約60km、短径が約30km。全体の面積は、約1,450km2。1,000分の1に縮尺した模型で考えると、オリンピックのプール(長さ50m、幅25m)より、少し大きくしたサイズになります。

これに対して水深はとても浅く、オリンピックプールの深さはだいたい2~3mですが、大阪湾の平均水深をそのプールサイズに当てはめると、、、なんと2.7センチの深さしか無い海なんです!

大きなオリンピックプールサイズだけど水深は2.7センチしかないなんて、置き換えてみてビックリしました。会場でも、驚きの声があがっていました。

このように、浅い海である大阪湾。近年埋め立てによって流れが小さくなった、そのため湾奥は栄養が多すぎ、逆に湾口は栄養が少なくなってきているなどの特徴があります。

そして、大阪府下で営まれているたくさんの漁法や、どんな魚がとれるのかなど、大阪湾の恵みをどのように利用しているかについて解説がありました。

大阪湾の魚 資料

次に諸問題について。気候変動による生態変化については、地球温暖化によって日本近海の海水温上昇が100年で0.5度も上がっている事。水質の長期変動と漁獲量の相関を分析、水温上昇により動態が変化し、漁獲量が変動している魚種がいることに触れ、地球温暖化の様々な影響をお話しされました。

最後にまとめとして、環境と漁業は密接な関係にあり、研究を進める事によって今後はどのような魚種が獲れるようになるか、もしくは獲れなくなる魚種は何か、そのような事を予測しながら、漁業の形態を少しずつ変えていく事が必要になってくるでしょう。と、お話しされました。

時間は45分でしたが、クイズ形式だったり参加者に問い掛けがあったりで時には笑い、時には驚き、楽しく学べてあっという間の講義でした。その後、トイレ休憩に入ったのですが大塚教授に質問している生徒も数名おり、非常に興味深い講演だったことが伺えました。

続いて吉田 弘さんが「海洋ロボットで地球を調べる」をテーマに、ロボットで海の中に行き、調べ、そしてこの先何をするべきかを講演されました。

また、巽 好幸教授は「海底に潜む巨大カルデラを探る」をテーマに、カルデラという火山の活動によってできた大きな凹地を研究し、超巨大噴火は予測できるのか、お話されました。

フォーラムの様子 写真

フォーラムの最後には3人の研究者が再び登壇し、「なぜ、私は研究者になったのか」をテーマに、総合討論が行われました。これから進路を決める中高生や大学生が特に真剣に聞き入っている様子が印象的でした。
ロビーでは日本船舶海洋工学会 創立120周年記念図書「海洋へのいざない」(1000円)を中高生には無料プレゼントしていました。また、先生方に質問している生徒たちもおり、海洋学に意識の高い参加者が多かったようです。

実はまだまだわからないことが多い海のこと、それを研究する面白さを知ることのできるフォーラムでした。

【取材日:2018年11月11日】※所属、役職等は取材当時