2018年12月26日(水)、I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」で第50回アカデミックカフェが開催されました。カタリストは大阪府立大学大学院 理学系研究科、放射線研究センターの川西優喜准教授。テーマは「キュリー夫人が切りひらいた新しい世界~放射線の発見とその後の発展のものがたり~」。キュリー夫人の足跡を辿りながら、放射線の発見とその後の発展についてのお話しを中心に、普段は目で見ることのできない放射線を「霧箱」という装置を使って観察しました。

サンタ姿の川西先生の写真①


対象が小学生以上ということで、子どもたちも参加したこの日のアカデミックカフェはワイワイと賑やか!開催日がクリスマスの後ということもあり、川西先生がサンタ帽をかぶると子どもたちは大歓声!先生のわかりやすくて親しみあるお話しに、会場は終始和やかな雰囲気。

お話の合間には、先生から突然のクエスチョンタイムも。プロジェクターに映った地図を指して「キュリー夫人が生まれた国は?」「活躍した国は?」などの質問に、手を挙げて回答する子どもたちに、大人の参加者の皆さんも感心しきり。

サンタ姿の川西先生の写真②

お話しはまずキュリー夫人の足跡から。マリー・キュリーは1867117日、ポーランドの首都・ワルシャワで5人きょうだいの末っ子として生まれました。放射線の研究で1903年に第3回ノーベル物理学賞、1911年に第11回ノーベル化学賞を受賞。27歳の時、物理学者のピエール・キュリーと結婚しました。


1895
11月、放射線の一種であるエックス線を発見したのがドイツのヴィルヘルム・コンラート・レントゲン博士です。博士は、真空管(クルックス管)から目には見えない光線のようなものが出ていて、それが物質を通り抜けることを発見しました。これを博士はエックス線と名付けました。(エックス線発見のきっかけとなった真空管を使った放電実験を会場で行いました。※1参照)

1896年にはフランスのベクレルが、ウランから放射されるエックス線によく似た光線を発見しました。そこでキュリー夫妻はウランの他に、放射線を出す物がないかさまざまな鉱石で実験を重ねたところ、ピッチブレンドという鉱石からエックス線に似た光線が出ていることを発見し、1898年に新元素ラジウムと命名。1902年には純粋なラジウムを抽出しました。

学問対象のみならず、産業分野でもラジウムの有用性が明らかになる中、夫妻はラジウムの医療分野への研究を模索し、世界の研究者にラジウム抽出法を無償で公開しました。この発見以降、放射線科学は急速に発展し、今では放射線は医療やさまざまな産業分野で利用され、いろいろな形で私たちの生活を支えています。

「誰もラジウムでお金儲けをしてはいけません。それはひとつの元素です。みんなのものなのです」(キュリー夫人)

最後に会場で行われたさまざまな実験をご紹介します。「なぜ?」「なに?」と疑問に感じた事を積極的に質問する子どもたちの姿が印象的でした。


クルックス管を使った実験、写真

1<クルックス管を使った実験1
ガラス管の中は空気を抜かれて真空です。ガラス管の根元には、マイナスの、その反対側にはプラスの電極があります。これら電極の間に高い電圧をかけると、マイナス極(陰極)から電子が飛び出し、プラス極(陽極)へ向かいます。この電子のながれを電子線(陰極線)といいます。1895115日、この放電装置を用いて陰極線の研究をしていたドイツのレントゲン博士は、偶然、陰極線とは違う何かがこの放電管から外に向かって放射されていることにきづき、エックス線と名付けました。人類が放射線を発見した瞬間です。レントゲン博士は1901年にノーベル物理学賞を受賞しました。

クルックス管を使った実験の写真

<クルックス管を使った実験2
真空のガラス管の中に羽根車が入っています。電極の間に高い電圧をかけると、マイナス極から電子が飛び出しプラス極へ向かいます。この電子の流れが羽根にあたり、羽根車を回します。電子は物体に力をおよぼすことができる証拠です。プラス・マイナスを入れ替えると、羽根車は逆に回ります。

 

霧箱、写真

<霧箱で放射線を見よう>
箱の中にはアルコールのガスが充満しています。箱の中を放射線が横切ると、放射線の通ったところがプラスとマイナスの電気に分かれます。充満しているアルコールガスが、このプラスとマイナスの電気のところで、ガスから液体の小さな粒に変わります。このアルコールの粒は光を反射し白く光るので、放射線の通った跡が飛行機雲のような白い跡に見えます。霧箱は1897年にイギリスのウィルソン博士が発明しました。ウィルソン博士は1927年にノーベル物理学賞を受賞しました。

(※以上、川西先生の当日資料より)

ベータ線を測定している様子、写真

<自然放射線をはかろう>
物質から出る放射線を測定できる学習教材「ベータちゃん」でベータ線を測定します。ベータ線は放射線の一種です。日常生活では感じませんが、地球上には自然放射線が存在し、自然の一部である私たちの身体も放射線を出す元素を含んでいます。測りたいものにベータちゃんを近づけると、放射線が出ていればメーターの針がふれます。ベータちゃんのセットには鉱石、塩化カリ肥料などの測定試料もあり、放射線量の違いを調べることができます。子どもたちは会場内のあらゆる物にベータちゃんを近づけて放射線量を測定していました。なかには川西先生を測定するお子さんも!

以上内容は、下記サイトも参考にしてまとめました

http://kangenkon.org/support/radiation-meter.html

 

<先生のオススメ本>

子どもの伝記9 キュリー夫人(ポプラ社/伊東 著)
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8036015.html

キュリー夫人伝(白水社/エーヴ・キュリー原著、川口 篤・杉 捷夫・河盛好蔵・本田喜代治 翻訳)
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b206094.html

●Madame Curie
Eve Curie著)

●10歳からの量子論(講談社/都筑卓司著)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000138518

●10
歳からの相対性理論(講談社/都筑卓司著)

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000129210

 

【取材日:2018年12月26日】※所属は取材当時