2018年度より、現代システム科学域 マネジメント学類に新設された「経済データサイエンス課程」(以下、経済DS課程)。課程配属は新入生が2年次になる2019年度に行われるので、まだ新入生は課程の区別なく学類単位で学んでおりますが、課程配属を見据えたプレ授業として「経済データサイエンス入門」(以下、経済DS入門)という授業を受講しています。担当教員は鹿野繁樹准教授。取材した11/13はマネジメント学類1年生の約200人が受講していました。

鹿野准教授の写真

■担当教員:鹿野 繁樹(かの しげき)准教授
【専門分野】計量経済学
【研究テーマ】マイクロ経済学、パネルデータ分析 等

経済DS課程は、ビッグデータの分析(観測・記録・解析)ができる人材の育成が、社会のあらゆる分野で強く求められていることに対応して新設され、実際の経済やビジネスの問題を、統計学やデータ分析のスキルを持ってどのように解決できるかという学びを深めることを目的としたコースです。

講義を行う鹿野准教授の写真

この経済DS入門では、データのどこに着目し、どのように読み取るか、そういった観点で基礎的な知識とスキルを学ぶ授業を、全15回で開講しています。取材日となった第6回目授業のテーマは『回帰分析入門:回帰直線と最小2乗法(OLS)』でした。OLSは、Ordinary Least Squaresの頭文字を取った略称で、データから最適な回帰係数(傾きと切片、aとb)を決める手法です。

「回帰分析」は、計量経済学や統計学においてデータを使って将来を予測する有力な方法であり、その基本となる手法がOLSというアルゴリズム(手法、手順)です。鹿野准教授は「回帰分析はあらゆる分野で採用される予測法であり、OLSを理解できれば、簡単な予測が可能になります」と前置き、具体的な実例を紹介していきました。

回帰分析の基本的な流れは、得られた条件を「説明変数X」としてインプット(入力)し、予測結果である被説明変数Yをアウトプット(答え)する事と押さえたうえで、さらに予測問題には「回帰問題」「分類問題」の2タイプがあることを説明します。

まずは「回帰問題」の解説例をいくつか示します。
▼子どもの身長を親の身長から予測するケース
▼アイスクリーム店の売り上げを、気象、曜日、場所の環境等の条件から予測するケース

スライドを指して説明する鹿野准教授の写真

これら2つの事例のように、被説明変数Yが数量的なものだと回帰問題になります。そのなかでも1個のヒント(X)で予測するのが単回帰、複数のヒントで予測するのが重回帰となります。この2つの例は後者の重回帰です。

これに対する分類問題の解説として「予測の対象である被説明変数Yが質的な変数の場合は、『分類問題(離散選択問題)』と呼ばれる少し複雑な回帰問題になります」と続けます。

具体的なサンプルとして示したのが、
▼銀行やローン会社が、その顧客が将来破産するか、ローン返済を滞納するということが起こるかどうかを知るため、その人の年齢、学歴、年収、職業等の条件から予測するケース
▼化粧品のブランドA、B、Cがあり、A価格1000円、B価格1200円、C価格800円。その消費者は28歳で、年収500万円で独身として、A、B、Cのどれを選ぶか。あるいはAを何%、Bを何%、Cを何%の確率で選ぶかというケース

でした。「分類問題は、回帰問題を十分理解したうえでないと理解するのは難しいので、後半の授業で取り上げたい」とし、この日の授業では「回帰問題」にフォーカスして解説が続きます。

データを示しながら説明する鹿野准教授の写真

鹿野准教授は、数学の連立方程式や微分などの公式を参照しながら「回帰問題の基本は量的変数Yの値を回帰直線で予測する数式「X(^)」(^y)=a+bXである」(※^y = Yハット)と示し、キーワードとなる「予測値」「回帰係数」「未知パラメータ」「学習データ」などをスライドに盛り込んで説明しました。

理解を進める材料として、3通りの回帰直線を引いた散布図とそれに用いるアルゴリズムOLS、回帰式から出る「残差」、さらに発展させて「予測値と残差」「残差と残差2乗和」「散布図上の残差」などについて、数パターンのデータ図を使って説明しました。

例として、冒頭に紹介した分類問題の2ケースに加えて、「日本の総理大臣の在任期間と支持率・不支持率の相関データを見るケース」などの新しいサンプル問題を使って実際の予測値と予測誤差、残差を、「OLS係数」を求める式で計算するなど、この日の授業のテーマである「OLSを駆使した回帰分析」の学習の核心にアプロ―チしていきました。

最後に、学んだ内容を復習する時間があり、学生たちは提示されたデータからOLS係数を求め、OLS回帰の式(X(^)(^y)=a+bX)を自ら完成させる演習に取り組みました。

講義の様子の写真

【取材日:2018年11月13日】 ※所属は取材当時