2020年に東京で大きなスポーツの祭典が開かれますが、実は大阪府立大学の卒業生にその出場枠を掛けて日々戦っているアスリートがいるのを皆さんご存知でしょうか?

彼女の名前は大向 優貴さん。地域保健学域 総合リハビリテーション学類 作業療法学専攻を卒業後、現在はフジ住宅株式会社に勤めており、また、パラスイマーとして活躍しています。

2018/11/04に中百舌鳥キャンパスで開かれたホームカミングデー2018には大向さんと彼女の後援会「ゆき隊」のメンバーを務め、かつ府大卒業生の岩倉さん、永田さん、石丸さんが参加されました。そこで当時からゆき隊を支えていた高畑 進一先生(総合リハビリテーション学研究科)も交えて、様々なお話を伺いました。

―「ゆき隊」ができた経緯を教えて下さい

大向 私が高畑先生にアスリートとして生きていく事を御報告した時でしたね。高畑先生は「応援するよ!」と仰って下さいました。前から後援会を作ったらいいと持ち掛けて頂いていたのですが、「私みたいな者の為に後援会なんて…」と恥ずかしさもあり、お断りしていたんです。

高畑 話を聞いて、「大変だろうな」と思ったのが率直な感想でした。彼女の後援会を教職員が作るより、もっと身近な仲間が作った方がいいんじゃないか…そう思ってその時大学院に居た永田君に話を持ち掛けたんです。

岩倉 彼女と同級生だった僕たちも卒業後、大向さんがどんな事をしているのか。なかなか連絡が取れていなかったんですが、永田さんが大向さんの状況を僕たちに教えてくれていました。

大向 これまでは私が水泳を続ける上で、母がサポートしてくれていました。通いなれた練習場でも必ず誰かの手を借りる必要があります。一番必要となるのは着替えと入水の時ですね。

「ゆき隊」の結成とサポートをお願いする事になったのは、ある日母が怪我をした事がきっかけでした。手伝ってくれる人が無理になった事で自分が大会に出られない事があると悔しいなと思ったんです。

岩倉 みんなで集まって話しあったり頑張っていく中で、代表者が必要になり、僕がそのまとめ役を引き受けました。自分たちだけではなかなか解決出来ない時には高畑先生に相談させて頂いたりして、今の「ゆき隊」へと発展しています。

永田 先生は2020年の、東京での大会に一緒に行きたいって野望もあるみたいですよ(笑)


―「ゆき隊」ではどのような事をしているんですか?

永田 僕たちはなんて言うか…後援会らしくないというか…

大向 そうですね(笑)

石丸 サークルというか、楽しいグループというか…その中に大向さんが笑ってそこに居てって感じですよね。

岩倉 もちろん彼女のサポートがメインの活動です。女性スタッフが着替えや入水をサポート。広報の為に泳いでいる動画を撮影したり。1・2ヶ月に一度、ミーティングをして大向さんのスケジュールに対してどのようにサポートメンバーをスケジューリングするか考えたりしています。

ゆき隊のコンセプトからははずれるのですが、せっかくこのチームには作業療法士や学生・卒業生が集まっているので、大向さんの提案で色々な街での駅の乗り換えを中心にガイドマッピングも作っています。駅と駅の間の乗り換えは慣れていれば問題はないですが、エレベーターを使っての最短距離となると初めての方は難しいのではないでしょうか。また、雨に濡れないルートとなるとどうでしょう。難波や梅田だとこれってなおさらなんですよね。他の障がい者の方にも役立てるような活動にも取り組んでいるところです。


高畑 
彼女が怪我から戻った時、復学するか転学するか選択肢がありましたが、彼女は総合リハに戻りたいと言ったんです。私たちリハビリに関わる者の仕事は障害があっても「生活できる」・「働ける」・「やりたい事ができる」をサポートする事です。

そして今は「こういう事があった方がいいね、便利だね」というそれぞれの考えが、各々 の能力や技術、ネットワークを持ち合わせて実現し、それらに喜びを感じる時代だと彼らを見てとても感じます。こういった流れも含めてリハビリテーションの醍醐味を感じますし、当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、教え子たちはとても誇らしいですね。


―大向さんの目標を教えて下さい

向 仕事は週に2日、システム室というところに所属しシステム関係の仕事をしています。残りは基本的に練習ですね。
アスリート採用なので、良い記録を残す事ももちろん仕事ではあるのですが、それとは別に自分が色んな人の「道しるべ」になれたらと思います。

私は大学で作業療法の勉強をして、色々な人とも関わる事が出来て、怪我の後、これだけ早く前を向けたのは「どういう風に過ごすか」見通しがあったからだと思います。しかし、障がいをもった事によってなかなか前を向けない方々が多いというのも事実です。

私は別に特別な人間ではなく、「大向ができたら自分だって出来る」と人から思われるような存在になりたいですね。

石丸 大向さん、普段はとてもマイペースで大丈夫かなと思うような時さえあるんです。でも、怪我の後にスポーツで活躍しようと目標を持つのは誰でも出来ることではない。学生時代に比べて柔軟さと力強さが増したような…気がします。

大向 ほんまに思ってる?(笑)

一同 (笑)

大向 東京の大会の件は、一発勝負…勝負の世界なんでどうなるかは誰にも分かりませんが、1日1日を大切に出来る事をやっていって、力を出せるように頑張りたいです。


―後輩たちに向けて一言お願いします

大向 大学は他の学生時代と比べて一番時間があると思います。どんな事でも挑戦するべきだと思いますね。

永田 どんどん外に出た方がいいよね。高畑先生は「気になるなら行って本物をみておいで」といつでも背中を押してくれて、僕も色々な経験を得ることができました。

高畑 企業でいうインターンシップみたいなもので、気になったら本物を見るのが一番の勉強なんです。経験に勝る知識はありませんから。

大向 他の大学を知らないので比べようがないですが、府大の総リハは先輩後輩と仲が良く、1学年(1専攻)約25人と少ないので卒業しても何かと繋がっています。先生との距離も近く、本当に頼りになります。「府大に来てよかった」と、私は今でも思っています。

【取材日:2018年11月4日】※所属・学年は取材当時

 

◆参考リンク:大向さんの学生時代の記事もご一読ください!
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たくさんの人に出会い、人とのつながりの大切さを学ぶことができました