「人工知能」の授業の様子、写真

『人工知能(AI)』とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムのこと。世界各国で人工知能を活用したサービスや研究が、現在進行形で生まれています。身近なところでは、スマートフォン(音声認識)や家電製品、将来的には人間型ロボットへの搭載など、IT技術の中でも最先端とされるこの分野は、私たちの生活に今後ますます関わりを持って来ています。

大阪府立大学では、人工知能を理解する上で大切な要素の1つである「機械学習」の講義が10年以上前から行われています。現在は、工学域 電気電子系学類と現代システム科学域 知識情報システム学類で「人工知能」について学ぶことができます。

中島先生、写真

今回、ご紹介するのは現代システム科学域 知識情報システム学類の3年生が受講する中島 智晴先生による「人工知能」の授業です。

授業では、人工知能を理解するための基礎知識の習得を図っています。特に、計算機における問題とその解の表現法、それに基づく推論法やその応用を修得することを目標としています。さらに、機械学習に代表される数値処理に基づく知識表現と推論の方法を理解し、パターン識別や回帰、その他における実装についての講義を受け、専門的理解を深めていきます。

授業前はわいわいと賑やかだった学生たちも、中島先生が教壇に上がると一瞬で先生の説明に耳を傾ける体勢に。

今回の授業のテーマ「機械学習」とはデータから規則性や判断基準を学習し、それに基づき、未知のものを予測・判断する分析技術のことで、「教師あり学習(パターン認識、回帰)」、「教師なし学習(クラスタリング)」、「強化学習(意思決定)」の3つのモードがあります。

プログラムを書く学生の様子、写真

授業は、プロジェクターでの動画を活用しながら「機械学習とは?」というところから、概念学習、決定木の構築、Q学習に至るまで90分間、みっちりと講義されていました。

全体を通して感じたのは、中島先生の丁寧な講義スタイル。専門用語を説明するだけではなく、ビジュアルや動画を駆使し、1つの事象について繰り返し説明。さらに学生自身がプログラムを書く機会を設けるなど、授業の中で理解を深められるように進んでいきます。

講義の冒頭で、機械学習の概要を説明する時間があったのですが、その際の先生による説明がとてもわかりやすかったのでご紹介します。

教師あり学習の例、写真

「研究でサッカーをやっている私の経験を絡めると、ゾーンディフェンスのチームをたくさん画像で覚え込ませることや、どういう座標なのかということを数値で蓄積しておきます。またマークする人がいたら、マークの情報を溜め込んでおいて、その情報からモデルを作っておけば、試合時になると“敵は今どっちの戦略を取っているのだろう”というのを判断することができます。“あっ、ゾーンだな、そしたらドリブルに弱いチームだな”と次の行動に移すことができるのです」。

この解説は、サッカーやチーム球技を熟知している学生にはとても深く理解できるのではないでしょうか。また強化学習の説明では、動画を使用しました。

「この動画は、ブロックくずしをするAI(人工知能)です。最初はバーが右左どっちに行ったら良いか学習をする問題で。今はどっちに行けば良いのか、わからないので適当なのですが、ブロックを崩すことができたことが(バーにとって)良い経験になり、跳ね返す動きをすればいいと学習できます。さらに学習させていくと、最初はただひたすらに崩すだけだったものが、その崩し方に戦略が現れてきます。

“この辺のブロックがよく崩れている”→“なぜそこだけ崩すのか”→“上に行くと天井を使うことができる”→効率的にブロックを崩すことができる“

これらを教わらずに自分でするのが強化学習です」。

演習問題に取り組む学生の様子2、写真

演習問題に取り組む時間では、学生同士で相談して回答へ導いたり、アドバイスを送りあったり。その眼差しは真剣そのもの。だからこそ授業が終わると、張りつめていた空気が一気に弛むのもわかりました。

今回、学生たちが受講した講義は、今後の専門科目で深く掘り下げるための準備となるもの。中島先生は大学院で機械学習特論の授業を担当されており、そこではもっと詳しい講義が展開されるとのことです。

演習問題に取り組む学生の様子、写真

次世代のAIエンジニアをめざす学生たちにとって、有意義な時間は続きます。

【取材日:2019年7月12日】 ※所属は取材当時