2019年6月26日(水)I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」でアカデミックカフェが開催されました。カタリストは、大阪府立大学 人間社会システム科学研究科の大塚耕司教授。テーマは「大阪湾の魚っておいしいの?」です。

大塚耕司先生

 

「大阪湾」「魚」という身近な事柄がテーマということもあり、魚好き、釣り好き、大阪湾の問題自体に関心のある方など、会場には多くの参加者が集結。お話の合間に行われた魚にまつわるクイズを次々と正解する猛者もいらっしゃいました。

クイズにも積極的な参加者たち

皆さんは「大阪湾」と聞くと、どのようなイメージが浮かびますか? 高度経済成長時代、阪神や堺泉北の臨海工業地帯の開発で埋め立てがどんどん進み、生物の餌場として豊かな水産資源をもたらす干潟が減少。時代と共に、私たち人間の生活も多様化するなか、大阪湾でどのような問題が起こっているのか。

・生活排水などが大量に流れることにより過栄養になり、植物プランクトンが大量発生する“レッドタイド”(赤潮)

・海藻(大阪湾ではアオサ)が爆発的に増える“グリーンタイド”(緑潮)

・そして海底の有機物が腐敗する時に酸素を奪われた水塊が、強風によって海面に上昇して硫化水素を発生させる“ブルータイド”(青潮)

クイズを出題する大塚先生

大塚先生がおっしゃるところの、これら“三悪友”が大阪湾に起こす状況とは、酸素がなくなり、硫黄が大量発生することで、魚の居場所がなくなってしまうという恐ろしい事態。

海に程よく栄養が行き渡れば、餌が豊富になり魚にとっては好都合ですが、過栄養になれば“三悪友”が出てきて、海が汚くなり、魚が住めなくなる。「この三悪友は微妙なバランスによって成り立つ。“ええかげん”にならないと駄目なんです」と大塚先生。

そんな中、大阪湾はこの半世紀の間、排水規制や下水道整備によって環境は改善し、今では200種類もの魚介類が捕れる世界有数の漁場となりました。しかし、後継不在で廃業する漁師の増加や、“大阪湾の魚は食べられへん?”というイメージの定着などあらゆる社会的問題が重なり、大阪湾の漁業は低迷の危機に陥っています。

そこで大塚先生が中心となり立ち上げたのが『魚庭(なにわ)の海 再生プロジェクト』。舞台である阪南市には、1つの市で3つの漁協が存在。それぞれが特徴的な漁法を行い、少量多品種の魚介類が獲れることが特徴ですが、売ることが難しい。そこで、漁場が改善され、水揚げされた魚をうまく流通させて、それをちゃんと買ってくれる消費者を作り出す。この流れを循環させるのがプロジェクトの目的です。

大塚耕司先生

プロジェクトの一環として、漁場改善を筆頭に、魚食文化普及のためのイベント開催や新レシピ開発、オリジナルメニューの販売などを積極的に展開。サワラの鮮度評価実験を行い、おいしく生食できる期限を測定。大阪市中央市場でプロの仲買人相手に阪南の魚を販売したこともありました。

また消費者や飲食店、卸売業者などを結ぶ“サイバーマルシェ”というシステムを試験中。魚の旬の時期やおいしい食べ方、レシピなどのデータを発信。それを参考に購入者から直接注文が入る仕組みです。このような地道な活動により、阪南の魚を広めています。

「民間、漁村全体の活性化をして、消費者も増えてマーケット上でうまく循環する仕組みを作って好転しないと。それが社会を変えていく仕組みだと思っています。阪南モデルとしてパッケージ化し、他の地域へと広がっていく。そこまでつなげたいですね」。

最後に大阪府の取り組みを紹介します。大阪府漁業振興基金 栽培漁業センターでは、中高級魚種を中心に稚魚の生産・放流を行い、これまで数々の魚種を生産。現在生産中の魚種で、先生のおすすめは、美味な高級魚として知られるキジハタ(あこう)。調理法としては、特に湯引きがおいしいのだとか。スーパーなどで見かけたらぜひお試しを。

「大阪湾の魚はとてもおいしい魚がたくさんあるので、ぜひ見つけて食べて欲しいですね。大阪湾の魚を堪能してください!」。

集合写真

<先生のおすすめ本>
大阪湾 -環境の変遷と創造-(恒星社厚生閣/編:生態系工学研究会)

 

【取材日:2019年6月26日】※所属は取材当時