中百舌鳥キャンパスでの懇親会、写真2019年12月、中百舌鳥キャンパスにて、工学OGで現在アメリカ オレゴン州立大学機械工学分野で准教授として活躍されている川崎 恵さん(2002年卒業)から府大生向けに「留学」や「研究の道に進むこと」について懇親会がありました。

ここではその中の一部、川崎さんからお話いただいた府大生時代から研究職に進むまでの経歴をまとめています。

―川崎さんが留学をしたきっかけ

大学入学前から海外へ行きたい気持ちが強く、母親の勧めもあり、大学卒業後はキャビンアテンダントになることが夢でした。

大学入学後も、どこかのタイミングで海外に行きたいなと思っていたのですが、その当時、国際交流を推進する部門がなく、留学の方法が全く分からない状態。どうしたら留学できるか分からなかったのですが、当時工学部の教授だった東 健司 先生(現 大阪府立大学工業高等専門学校長)が授業で言った「旅行でもいいから若いうちに海外に出た方がいい。外から日本を見てみてください。その時に僕の言っていることがわかります」という言葉に背中を押され留学を決意。

母も留学には大賛成で、夏休みに1ヵ月間ボストンの語学学校に留学しました。

―ボストンの語学学校を経て感じたこと

親には大変申し訳ない話ですけど、当時の私の英語力があまりなかったことと、同じ語学学校に留学していた日本人に助けてもらいすぎたことが重なって、全く英語力が上がらなかったです。その時、「やっぱり留学に行くなら長期で行かないとダメだな」とひしひしと感じました。

川崎 恵さん、写真さらに当時、アメリカの大学で教鞭をとっていた親戚に留学について相談したところ、「大学の学部では来るな。大人になってから来ないと遊ぼうと思えばいくらでも遊べてしまう。日本人としての良識を兼ね備えてから来なさい。来るなら大学院からが良いだろう」とアドバイスをもらったのでやっぱり長期で大学院から行こう、と確信しました。

その後、東先生にどうしたらアメリカの大学院に行けるか相談すると、「僕の研究室に入ったら?」と言っていただき、留学することを前提にした研究課題を与えてもらい、さらには研究室で留学に必要な英語の勉強(GREとTOEFL)までさせてもらいました。

研究室に配属されたある日、神戸で開催される学会に東先生の知人の先生が南カリフォルニア大学から参加されることを知りました。東先生からは「1人で行くことができないのであれば留学なんて無理だよ」と言われ、メールでアポイントを取って神戸で会うことに。

―アポイントを取ったはいいものの英語はまだ話せない

英語はまだほとんど話せない状態でした。「でもここで熱意を伝えないとダメだ」と思ったので、新品のノートに今までの実験結果を日本語でまとめて、それを渡しました。日本語だけども相手は先生。きっと何が書いているか予想がつくだろうと思い、ノートを渡しました。

当時はあまりに緊張しすぎてお腹が痛くて、何を話したかほとんど覚えていません。(笑)

ですが、その実験ノートを認めてもらい、南カリフォルニア大学の先生から「僕の研究室においで。大学院に入学するためのエッセイと推薦状、GRE、TOEFLをそろえてきてね」と言っていただき、南カリフォルニア大学に進学することができました。

南カリフォルニア大学でのポスドク時代、写真

南カリフォルニア大学でのポスドク時代

博士課程後期2年目、担当教授のLangdon研究室グループ写真

博士課程後期2年目、担当教授のLangdon研究室

進学後は実験を1年間猛アピール。Ph.D.(博士後期課程)になりたいからリサーチアシスタントにしてほしい。とお願いしたところ、無事なることができ、課程修了までの5年間南カリフォルニア大学にいました。

Ph.D. 授与式(南カリフォルニア大学)左より、川崎さん、Langdon教授、写真

Ph.D. 授与式(左より、川崎さん、Langdon教授)

―Ph.D.(博士後期課程)のとき研究者になろうと決心した

南カリフォルニア大学に行ってからは民間企業への就職を全く考えることがなかったです。

それぐらい研究が楽しくて仕方がなかった。学部生の時は、「先生にはなりたくない」「モノを書く人にもなりたくない」と考えていたけれど、論文を読んでは書いて、添削してもらって、上手くいって、を繰り返しているうちに自分が書くことが大好きなことに気がつきました。

―今は留学を志す日本人学生、特に府大生を応援したい

今も自分の研究室のリサーチアシスタントの枠が空けば日本人学生、特に府大生になってもらいたいと思っています。それぐらい府大生には信頼を置いています。

以前、とある府大の先生に、アメリカの大学に留学したがっている学生さんはいますか、と聞いてみたところ、「僕の研究室にはいないです」と言われ残念でした。本当はいると思うのですが、なかなかその声が届いてこない。だからこそ、「留学したい!」と心から願っている人には是非、いろんなところでその気持ちを発信して欲しいです。

私の研究室じゃなくても、アメリカの、もしくはどの国の研究室でもぜひアタックし、チャレンジし続けてもらいたいです。

Kawasaki研究室(オレゴン州立大学)、写真

Kawasaki研究室(オレゴン州立大学)

【取材日:2019年12月26日】
【取材:瓜生 比呂美(広報課)】※所属は取材当時