弁理士とは、知的財産に関する専門家のことです。新しい技術やアイディア、デザインや文章など私たちが生み出したものを適正に守った上で、新しい技術開発などの促進を主な仕事としています。

弁理士試験は日本国内でも有数の難易度を誇る国家試験です。年1回行われる弁理士試験の合格者はわずか8%(令和元年度)。公認会計士試験(10.7% 令和元年度)などと同様に難しいことで知られています。今回、弁理士試験に21歳という若さで見事合格を果たした大住知暉さんにお話を伺いました。

大住さん、写真〈プロフィール〉
氏名:大住知暉
所属:工学域 電気電子系学類 電子物理工学課程 3年生
出身高校:大阪府立北野高等学校

 

―高校生の時はどのように過ごしていましたか?

大住さん、写真高校時代は所属しているコーラス部で朝・昼の練習を、山岳部では部長として後輩の指導をしていました。山岳部では前回の出場から十数年ぶりとなるインターハイに出場でき、これが高校時代の思い出として特に印象に残っています。

―なぜ府大を受験したのですか?工学域を選んだ理由は?

高校時代、物理が好きだったので工学系の分野に進もうと前期日程に京都大学を受け、中期日程で大阪府立大学の工学域を受験しました。

高校を卒業すると、社会に出て働くこともできますが、大学では勉強をするぞ、という思いで入学しました。

―入学前と入学後では府大の印象って変わりましたか?

入学前まで大阪府立大学のことをあまり知らなかったので、入学してから環境の良さを感じています。先生との距離が近く、質問しやすいので、興味のあることについてしっかり学べる環境だと思います。

―弁理士に興味を持って、資格を取ろうと思ったきっかけや経緯を教えてください。

大住さん、写真1年生の夏休み直前、夏休みは学校もないし、アルバイトをしたいわけでもないし、何をしようかな、と悩んでいました。当時、履修していた梅澤憲司先生(高等教育推進機構、工学研究科・量子放射線系専攻 教授)の“物理学AⅠ”の授業の最終日に「夏休み中、何かおすすめの勉強はありませんか?」と先生に尋ねると、「弁理士試験の試験勉強はどうですか?」と提案していただきました。

弁理士は知的財産の特許取得をめざすことが主な仕事です。研究・技術開発が多くを占め、工学域に属している理系の自分にとって勉強して損のない分野だと思ったので、資格試験の勉強を始めました。

弁理士の試験は1次試験に短答式筆記試験、2次試験に論文式筆記試験、3次試験に口述試験があります。最後の口述試験の会場である東京では令和元年東日本台風の影響で新幹線が止まり、非常にナイーブになっていたのですが、その時も梅澤先生からメールでアドバイスをもらい、無事合格する事ができました。

―弁理士の試験は大変だったと思いますが、おすすめの勉強法などがあれば教えてください。

四法横断法文集、写真

弁理士試験に向けて使用していた四法横断法文集にはたくさんの付箋とメモが

法律に関する暗記の量が多かったのでその部分がとても大変でした。単純な暗記だけでなく、本質も理解していかないといけないのでその量に圧倒されました。

それでも梅澤先生と一緒に週3回ほど1対1で指導してもらったので、なんとかモチベーションを保ったまま2年間学び、合格できました。

―今後の目標や夢は?

弁理士の先輩方から「専門分野を持ってから弁理士として働いた方が良い」とアドバイスいただいているので、まずは大学院に進む予定です。

今の自分の知識では、弁理士に登録しても開発された技術を理解することができず「すごいですね」としか言えません。なので、基礎を築くためにも、大学院へ進み研究・開発に携わっていきたいと考えています。

―最後に、府大を目指している受験生にメッセージをお願いします!

府大は静かで、やりたいことができる環境が整っていますので、自分次第で大きく成長できる大学だと思います。基本を大切にして頑張ってください。

 

梅澤憲司先生のコメント

梅澤先生、写真知的財産を扱う弁理士資格を取得する年齢のボリュームゾーンは30代前後です。資格の性質上、社会人になってから取得する方が多い資格ですが、私は興味があってやる気があるのであれば大学生の間に受験することをおすすめしています。

それは、必要な勉強の量を考えると社会人になって仕事をしながら学ぶ、というのは時間確保の点で難しいからです。また、独学ではなかなか得られない法律の本質については、それを熟知している人に教えてもらわないと合格からさらに遠のいてしまう事に。

大住さんが弁理士試験に合格したのは、法律の本質への理解と、弁理士試験へのひたむきな姿勢が功を奏した結果だと思います。

今回の大住さんのように、大阪府立大学の学生の中で弁理士に興味がある方は、丁寧な受験指導をしますので、ぜひ私に声をかけてもらえたら嬉しいです。

梅澤先生と大住さん、写真

【取材日:2020年2月12日】
【取材:瓜生 比呂美(広報課)】※所属は取材当時