オープンカレッジ(通称オプカレ)とは、日本で初めて1998年に大阪府立大学で開催された「知的障がいのある人の大学」から現在も続いている活動です。大学で学ぶ機会がほとんどない知的障がい者の教育の場として大学を開放することだけでなく、障がいの有無に関わらず誰もがもつ「学ぶ権利」「発達する権利」を保障しようという目的でスタートしています。

現在、全国の大学に広がりつつありますが、大阪府立大学のオプカレの特徴は設立以来、府大学生(現在は他大学からも参加)が運営、企画をこなし、さらにオプカレ学生(知的障がい者)への個別サポート全般(サポーター、スタッフと言います)まですべてボランティアで行なっていることです。大学の教育福祉センターはそのバックアップをしています。

オプカレは基本的に毎月1回の講義日がありますが、1日の流れは図の通りです。大学ですので90分授業をしっかりやっています。

時間割

授業の様子
授業の様子授業の様子2

 

 

 

 

 

講義の内容は、他には校外学習、修学旅行、府大白鷺祭参加、卒業年次のゼミ参加などさまざまな活動があります。写真は福祉ゼミ、英語ゼミ、美術ゼミ、音楽ゼミの様子です。

福祉ゼミの様子 英語ゼミの様子 美術ゼミの様子 音楽ゼミの様子

 

 

 

 

授業やゼミはオプカレの学生に向け、わかりやすく配慮されることが重要です。そのたスタッフは講師との事前事後のコミュニケーションを大事にしています。講師もバラエティに富み、府大の教員以外にも警察や消防士、気象予報士、舞踏家などその分野で活躍する講師もこれまで登壇し、「わかりやすく面白く」をモットーに講義をしていただいています。それに応えるように、オプカレ学生は質問をしたり、「そうなんだ!」と声を出して、新たな知識との出会いを柔軟に自分のものにしています。

オプカレの学生から「いつも府大に来るのを楽しみにしている」「大学生だからちゃんと勉強します」「スタッフさんに会えるのが嬉しい」など感想をいただきます。話すことが苦手な人も、机を叩いたり、ジャンプしたりして表現することもあります。授業中も自由に話したり、動いたりしますが、どの学生も授業に積極的に参加していることがしっかり伝わってきます。自分なりのスタイルでオプカレを楽しんでいるのです。

授業でもゼミでも、もっと学びたい、もっと自分のことを話したい、もっと誰かとつながりたい、という熱気が常にあふれていることからも、オプカレのような場がもっと社会にできて、多くの知的障がい者の才能や魅力が開花することが当たり前になることを望みます。

オプカレの活動は知的障がい者だけではなく、府大の学生にも多くの気づきを与えてくれています。現在、スタッフとして活動している2人の学生を紹介します。ぜひ興味のあるかたはスタッフに加わってみませんか?

  • 学生コメント

沼野井美咲さん沼野井美咲(地域保健学域 教育福祉学類 3年生)

教育福祉学類に入学したのは、高校時代から社会福祉士に興味があったからです。家族が入院時に医療ソーシャルワーカーにとても助けていただいたことがきっかけです。オプカレには友人の勧めもあり、1回生から参加していますが、もともと知的障が者に関わった経験がなく最初は不安でした。授業中、学生さんたちは皆さん個性的で、ずっと何かを書き続けていたり、突然動いたり、さまざまで最初はびっくりしました。でもそこで誰かが否定されたり、何かをさせることなく、そのまま認め合っている雰囲気がオプカレにはあると感じています。私はその雰囲気がとても好きであたたかいと思います。サポーターとして支援する側の私と、ただ支援される側の学生さんという関係ではない、別の新たな関係を体験し始めたとき、オプカレはとても楽しい場になっています。
将来は福祉か教育の現場で働きたいと思いますが、オプカレへの参加が私の視野や興味を広げてくれたことに感謝しています。

 

山崎菜々子さん

山崎菜々子(地域保健学域 教育福祉学類 4年生)

フィリピンでのスタディツアーで
高校時代から教員志望であったので、教育学部を中心に志望大学を探していたとき、教育福祉学類という府大のサイトに出会い、他にはないユニークな学びができるかもと思い、受験しました。入学後、オプカレの存在を知り、参加しようと思ったきかっけは、小学校まで支援学級があったので、よく交流をしていたのですが、中学になったらその人たちがいなくなってしまい「あれ?」と違和感を感じたことです。だから大学でまた出会えたらいいなと思い、スタッフになりました。

印象的なことは、たとえば私たち府大生は授業の際、大きな教室の後方から座る傾向がありますが、オプカレの場合は一番前の席から埋まっていきます。そしてオプカレ学生さんは授業中はどんどん質問したり、面白さを身体で表現したり、大きな声で感想を言ったりとそれぞれの方法で表現しています。すごいなあ、といつも感じています。その姿から学ぶことの楽しさをむしろ私たちスタッフが教えていただいています。これまでスタッフとして関わってきて言えることは「障がい者の自立」のためにオプカレは存在するのではなく、障がい者であってもなくても同じ人間として友だちになれることを体験できる場だということです。障がい者のために何かをしたい人ではなく、障がいのある人と関わってみたい、友だちになってみたい、一緒に楽しい時間を過ごしたい人に、オプカレスタッフになってほしいと願っています。

【寄稿日:2020年8月26日】※所属は寄稿当時