夛田 彩乃さん

夛田 彩乃さん

1年生の時に台湾の国立台南大学に。2年生の時にはドイツHeidelberg大学とアメリカYale大学に留学する等、活動的な大学生活を送っている夛田 彩乃さん。

学域(学部)2年にして、世界で指折りの大学で研究留学を経験した彼女に、これまでの学生生活、そしてこれから挑戦してみたいことなどをたっぷりと聞かせてもらいました。

▼プロフィール
夛田 彩乃(ただ あやの)さん
工学域 物質化学系学類 マテリアル工学課程3年

2018年4月入学
2018年5月14日~6月13日  エンブリー・リドル航空大学(ERAU)来日プログラムのバディ
2018年8月10日~8月16日  国立台南大学(台湾)サマーキャンプに参加
2019年7月1日~7月19日  エンブリー・リドル航空大学(ERAU)来日プログラムのバディ
2019年8月11日~9月20日  中谷財団プログラムHeidelberg大学(ドイツ)
2019年12月2日〜12月9日  日露青年交流プログラム(ロシア)
2020年2月16日~3月25日  中谷財団アドバンストプログラムYale大学(アメリカ)

―大阪府立大学に入学してから様々なプログラムに参加されていますよね。特に国際的なことに興味があるように見えます。

在学中に絶対留学しようと決めていました。家族の仕事の影響で小さい頃に何度か海外に連れて行ってもらったこともあり、将来は国際的に活躍できる人になりたいと思っていました。

本当は今年の夏も海外の大学院へ見学に行きたいと思っていたのですが、新型コロナウイルスの影響で難しくなってしまいました。

―言葉の壁など、はじめての環境に挑戦することに不安はありませんでしたか?

言葉には苦労しました。1年生の夏に大阪府立大学のプログラムで台湾の国立台南大学に行ったのですが、英語が全然喋れなくてこれじゃダメだな…と。オンライン英会話や大学のEnglish Cafeを利用して、府大の留学生と知り合う機会を増やし、積極的に英語を話す環境を作りました。

台南大学のメンバーと先生との写真

台南大学のメンバーと先生との写真

―大阪府立大学のプログラムというと、2年連続でエンブリー・リドル航空大学(ERAU)来日プログラムのバディに参加されていますよね。こちらも国際交流だと思いますが、バディとはどんなことをされていたのですか?

〈参考リンク〉
エンブリー・リドル航空大学が大阪府立大学に来学!(2018年)

バディと大阪観光をした写真

大学のポータルに情報があがっていて、友人と一緒に参加しました。エンブリー・リドル航空大学(ERAU)の学生さんに日本の文化を伝える活動をしました。一緒に大学の授業に参加するだけではなくご飯を食べたり、週末は遊びに出かけて大阪観光を楽しんだりしました。

1年目の頃はあまり積極的に話しかけられなかったのですが、2年目になるとエンブリー・リドル航空大学(ERAU)の学生さんだけでなく府大の先輩方とも繋がりができたのがうれしかったです。また、2年目はコアバディのひとりとして、交流プログラムやイベントの企画をしました。

―バディを経験して、印象に残っていることはありますか?

勉強だけじゃなく美術や音楽など、様々な分野に興味を持っている人が多く、自分もそうなりたいなと思いました。私がバディを担当した学生さんはプログラミングもできて、絵もすごく上手で。
彼は、どこに行くにしてもスケッチブックを持ち歩いていました。美しい日本を描いたスケッチを見せてくれて、感動したことを覚えています。バディの経験を通して、自分も色々なことに挑戦しようと感じました。

―2年生になってからは海外での研究留学を2度経験されていますが、中谷財団のプログラムはどのような内容なのですか?

海外で活躍する研究者の育成を目的にしたリサーチインターシップです。ただの語学留学ではなく海外の大学の研究室で、研究の一連を経験できるのが大きな特徴です。日本全国の大学から理系の大学生12名が夏にドイツへ。さらに、その中から4名の学生が春にアメリカへ留学します。(年によって行く国が異なります。)

自分が探した中では学域生(学部生)で研究ができる留学は中谷財団しかなく、とても貴重な体験になりました。
財団には、旅費やビザなどのサポートをしていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

〈中谷財団 国際学生交流プログラム〉
中谷財団 国際学生交流プログラム QRコード
海外の大学への短期留学を通じて、最先端の研究と生活文化を体験するプログラムです。次のURLとQRコードから詳細を確認できます。

中谷財団 国際学生交流プログラム

―Heidelberg大学(ドイツ)での留学で、気付いたことや苦労したことなどを教えてください。

一番苦労したのは研究内容の理解です。マテリアル系の研究室に配属されたのですが、受け入れ先の研究室もわたしが何を学んで何ができるかといったことが分からないので、配属が決まったらできるだけ早くコンタクトを取り、研究の進め方について話し合っておけばよかったと思いました。

言葉も英語で、マテリアルの専門知識も乏しかったので、プログラムの最初のほうは理解できないことが多くて・・・かなり辛かったです。ラボのメンバーが本当に優しい方ばかりで。初歩的なことをたくさん質問しても親身になって答えてくれました。メンバーの優しいサポートのもと、徐々に研究内容を理解できるようになったときはとてもうれしかったです。大学院生だと責任や知識のアウトプットを求められるというプレッシャーもあると思うのですが、学部生だったこともあり楽しんで学ぶことができました。

滞在中は研究の他にビール工場の見学ツアーやBBQ、メンバーのお誕生日会にも誘ってもらったのですが、こういった交流会を定期的に設けて、他のラボとも親睦を深めているのも印象的でした。測定装置の貸し借りや共同研究をする際に連携が必要とのことで、研究をする上で他分野とも協力し合う重要性を学びました。

―Yale大学(アメリカ)での留学で、気付いたことや苦労したことなども教えてください。

合成したMOFの写真

合成したMOFの写真

Yale大学ではTHz分光法などを利用してMetal Organic Framework(MOF)の導電性や触媒活性を調べる研究をさせてもらいました。メンターが立てた仮説を一緒に検証する、研究補助のようなかたちで参加させていただきました。わたしが配属されたラボではみんながTHzに関連した研究を行っていたので、グループ全体で意見を出し合って研究を進めているようでした。

手取り足取り教えるというよりは個人に任せるスタイルで、問題があるとミーティングで解決法を探します。わたしのメンターも一連の流れを教えると「あとは頑張って!問題があったら呼んでね!」というスタイルだったので、自分なりに考えてやってみることも多かったです。任せてもらえることがうれしくて、日々成長していると感じました。

Charlie教授との写真

Charlie教授との写真

新型コロナウイルスの影響でラボが閉鎖となり、残念ながら予定より早い帰国になったのですが、帰国後もリモートでミーティングに参加し、プレゼンや進捗報告を行う機会を与えていただきました。

また、週末や夕方はYale大学内で開かれるクラシックコンサートやオペラ鑑賞を楽しむこともありました。
本格的な演劇学科や音楽学科があって、そこで学ぶ学生さんたちが定期的に発表会を開催しているんです。

滞在中はAirbnbで探したお家に住んでいました。ホストファミリーが朝食を作ってくれたり、友人やラボのメンバーが車を出してくれて買い出しに行ったり。色々なサポートをしていただき、たくさんの人と繋がりを持つことができました。

―ドイツとアメリカ、2度の留学を経験して得られたものは何でしょうか?

Yaleのシンボル時計台

Yaleのシンボル時計台

1つ目は、海外大学院への進学のハードルが下がったこと。
海外大学院は目標にはあったものの、これまで長期留学をしたことがありませんでした。中谷財団のプログラムを通して、海外でも生活できるかもしれないと思えたことは非常に大きな収穫になりました。また、実際に留学されている方から「海外進学を少しでも考えているのであれば情報収集や準備を早めに行うこと」、「興味のある研究室があれば教授にメールを送って、ラボの雰囲気を知っておくことも大切」、「学部生のうちに研究実績がある方がいい」などアドバイスをいただき、とても参考になりました。

2つ目は、自信がついたこと。
研究に大きく貢献できたわけではありませんが、学部2年生でラボのメンバーとして研究の一部を担ったことは大きな自信となりました。ドイツではまわりの優秀なメンバーと比較して「もっと頑張らなきゃ、しっかり結果を出さないと」と自分を追い込んで苦しんだこともありましたが、アメリカではいい意味で力を抜いて自分のペースで楽しんで学ぶことができたと思います。

3つ目は、優秀で志が高く、個性豊かな仲間との繋がりをたくさん作ることができたこと。
アパートで夜通し将来について語り合ったことはいい思い出です。プログラムが終わった今も連絡を取り合っている友人がいます。海外で学ぶ学生さんは普段から政治や環境問題、新型コロナウイルスなどに対して自分の考えを持っていて、発信するのが得意だなと感じました。わたし自身も自分が経験したことや感じたことをアウトプットする習慣を身につけて、伝えられるように努力をしようと思いました。

4つ目は、今の自分にどのような能力が足りていないのかを気付くことができたこと。
将来研究者になるのか、それとも他の道に進むのかまだはっきりと決めていませんが、サイエンスの基本的な知識や英語でのプレゼン能力、論文を読む力、幅広い教養などを身につけていきたいと感じました。

Heidelberg大学やYale大学のような世界でも指折りの環境の中で研究をさせてもらえたことは、今後の人生に繋がる貴重な経験となりました。いつか世界で活躍できるように、学部生の間に日本でしっかり学んでレベルアップしたいです。

―夛田さんの情報をキャッチアップする力と行動力は素晴らしいですよね。行動して「自分にはこれが足りないからもっと頑張ろう」とパワーに変えられるのはすごいことだと思います。

夛田 彩乃さん

留学や研究など、探してみると府大にはたくさんのチャンスがあり、サポートしていただける環境が整っていると思います。刺激し合える友人もたくさんいて、充実した学生生活を送ることができています。

―今後挑戦してみたいことや、夢はありますか?

ものづくりが好きなので、自分が研究したことを実用化するベンチャーに興味があります。あとは、医療系の研究にも興味がありますね。脊椎側弯症という病気で背中の手術をしていて、まっすぐにするため自分のからだにバイオマテリアルが入っているんです。生体親和性があり、耐久性に優れた、軽量なマテリアル。そういうバイオマテリアルの研究も面白そうだなと思っています。

―大阪府立大学での研究室配属は4年生からですが、どの研究室に入ろうか決めているのですか?


後期から大学に行く時間が増えるので、これから色々な先生の研究室に遊びに行くつもりです。希望としては、バイオマテリアルを追求する研究室や留学をさせてもらえる研究室に進学できたらいいなと思っています。

―学生だけでなく教授とコミュニケーションをとる姿勢や学ぶ姿勢がやはり素敵ですよね。高校生の頃からそうだったのですか?

高校生のときは学校の授業以外のことに挑戦してみようと思わないタイプでした。ですので、大学生になったらいろいろな人と話をして、いろいろなことに挑戦しないといけないなと思っていたんです。

この数年間を振り返ってみて、特に留学は早ければ早い方がいいと感じています。国立台南大学のサマーキャンプが自分にとってはじめての留学になったのですが、中谷財団プログラムに採用された学生は、帰国子女や留学経験者がほとんどでした。海外旅行も悪くないけど、自分ひとりで海外に行ってみるという経験が大事だと実感しました。

中谷財団のみなさまや留学先で関わったみなさまへの感謝をいつまでも忘れず、わたし自身これからも様々なことに挑戦して失敗しながらも成長していきたいと思っています。

【取材日:2020年8月11日】
【取材:株式会社エヌ・アイ・プランニング 合田紗規(大阪府立大学人間社会学部OG】※所属等は取材当時