2020年11月13日(金)I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」でアカデミックカフェが開催されました。カタリストは大阪府立大学 教育福祉学類の伊藤嘉余子(いとうかよこ)教授。テーマは「親子になる・家族になる~色・イロ・いろんな親子のカタチ~」です。
子どもを産み育てるのは親の役割。しかし、虐待や育児放棄、親の入院、経済的理由などさまざまな事情によって、自分を生んだ親と一緒に生活できない子どもたちが全国に約45,000人います。こうした子どもたちを親に代わって、あるいは親と一緒に社会で育てる仕組みを「社会的養護」といいます。
その中で、近年「里親制度」や「養子縁組制度」が注目されています。血のつながらない子どもを家庭に迎え入れ、育てながら「親子・家族」になっていく里親制度や特別養子縁組制度。伊藤先生はご自身も里親として、家庭で実子と一緒に里子を養育しています。
講演では里親制度の概要に始まり、里親と特別養子縁組の違いについて解説されました。ひとことで「里親」といっても、さまざまな種類があります。委託児童の数や里親経験に応じた「養育里親」「専門里親」。将来的に里子を戸籍に入れることを視野に入れた「養子縁組里親」。3親等以内の親族が受け入れる「親族里親」。その他、週末だけ養育する「週末里親」もあります。里親になるには、自身の居住する地域を管轄する児童相談所に相談して、里親登録することが必要です。
里親養育に期待されているのは、安心・安全な家庭生活。私たちが「あたりまえ」だと思っていることも、施設で生活する子どもたちは知らずに育っています。「あたりまえの家庭生活」は、将来子どもたちが社会で生きていく力につながります。また、安心・信頼できる大人との出会い、ずっと人生に寄り添ってくれる人間関係の構築などが、里親養育には求められています。
これまで7人の子どもたちを養育してきた伊藤先生(現在は8人目の子どもを養育中)。里親をやっていて大変だったこと、良かったと思うことをお話しくださいました。その中で印象に残ったのが、実の子どもたちへの思い。子どもたちには、親を独占できない寂しさや、気軽に友だちを自宅に呼べないといった悩みがあるはずですが、「一緒に里子を養育することが、実子たちの優しさや自立心を引き出してくれた」と伊藤先生は振り返ります。里親養育において、実子へのフォローの大切さを強調されていました。
時折ユーモアを交え、わかりやすくお話くださった伊藤先生。子どもたちへの眼差しの温かさを感じた時間でした。今回の参加者には、過去に里親への登録を検討して断念した方や、これから里親になろうと考えている方もいらっしゃいました。「もっと早く先生の話を聴いておけば良かった!」と残念がった女性は「自分が取り組んでいることを、子どもたちに伝えたい」と意欲を見せました。
11月は厚生労働省が定めている「児童虐待防止推進月間」にあたります。今回の講演を通して、身近にそのような問題を抱えている子どもがいれば、気づいてあげることが私たち大人の使命。問題のある環境下にいる子どもたちを、社会全体で育てる必要性を改めて感じました。
<先生ご推薦の本>
『どうして私は養子になったの?』(明石書店/キャロル・リヴィングストン 著/庄司順一 訳)
https://www.akashi.co.jp/book/b64813.html
『ねぇねぇ、もういちどききたいな わたしがうまれたよるのこと』(偕成社/ジェイミー・リー カーティス 著/坂上香 訳)
https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784032025804
『ぶどうの木 10人の“わが子”とすごした、里親18年の記録』(幻冬舎文庫/坂本洋子 著)
https://www.gentosha.co.jp/book/b3209.html
『里親家庭で生活するあなたへ』(岩崎学術出版社/山本真知子 著)
http://www.iwasaki-ap.co.jp/book/b516071.html
※今回のアカデミックカフェは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮して、ソーシャルディスタンスを施した座席の配置を行い開催しました。参加者には、体調や生活に関するアンケート記入をお願いし、入口での検温、消毒など予防対策を徹底しました。
【取材日:2020年11月13日】※所属は取材当時