堀内 寛子さん(江崎グリコ株式会社 応用研究室) 2017年3月 大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士後期課程 修了 |
現在の企業名・職務内容
江崎グリコ株式会社 応用研究室に所属し、乳酸菌やビフィズス菌をはじめとした腸内細菌と健康との関わりについて研究を行っています。「BifiXヨーグルト」に配合されているビフィズス菌の機能性研究にも携わっています。
江崎グリコは「おいしさと健康」を企業理念として、事業を通じて社会に貢献することを事業目的として挙げています。食べ物は生きていく上で欠かせないものですが、人生を健康で豊かにしてくれるものでなければなりません。
お客様にとって江崎グリコの商品がそのような存在になれるように、当社の研究部門では様々な食品の健康機能について研究を行っています。
生命機能化学課程(研究室で)取り組んだこと
大学院では、大豆イソフラボン代謝物であるエクオールの抗糖尿病作用について研究していました。細胞株や動物を用いて、この機能性成分が血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する細胞に影響を与え、糖尿病を予防するかを検証しました。
博士前期課程在学中に就職活動を行いましたが、研究室の先生や先輩方が情熱をもって研究に取り組んでいる姿に憧れを感じ、博士後期課程に進学しました。研究室では、指導熱心な先生や頼れる仲間に恵まれ、研究に打ち込むことができました。
在学中に、日本学術振興会の特別研究員に採用され、アカデミックの世界で自分の研究テーマの将来性や実現可能性をアピールして研究助成金を獲得するということも経験できました。
研究以外では、専門分野の授業だけでなく、TOEIC対策の授業や企業研究者による講演会、インターンシップなどにも参加しました。どれも非常に有意義な経験だったと感じています。
また、「女子大学院生チームIRIS」のメンバーとして、小中学生を対象に科学実験教室を開催したり、高校生の進路相談を受けるなどの活動をしました。IRISの活動では、研究室とは違い、研究分野の異なる同世代のメンバーとイベントを企画したり、企業や大学で活躍する先輩方の話を聞く機会があったりと、自分の視野を広げる経験が出来ました。私が企業研究者として進路を決めたのも、IRISの活動を通して企業で活躍する研究員の方々を知ったことが影響していると思います。
学生時代の経験で、現在の仕事に生かされていること
学生時代は、「教科書や論文から知識を得て仮説を立てて検証する」ことをトレーニングする期間だったと思います。
今の業務では、学生時代に経験したことがない、ヒトを対象にした臨床試験やプログラミングを使ったビッグデータの解析などを行っています。知らないことや慣れないことがたくさんある中でも仕事ができるのは、知識をもとに仮説を立てそれを検証する経験や、実験のスケジューリングや手技、論文作成・研究発表などのスキルを大学時代に培ったからだと思います。
また、博士課程を修了してアカデミックの事情を多少なりとも知っていることで、共同研究先の先生とのコミュニケーションが円滑にできるところもあります。社外の研究者と協同することで異分野の研究や最先端の科学技術を学び、それを事業に活かすことができる楽しさがあります。
高校生へのメッセージ
私は高校生の時、ヒトの健康に貢献する研究や学問をしたいという思いから、実は薬学部を志望していました。農学部の前身の生命環境科学部生命機能化学科に入学してからは、ヒトの健康に貢献するには「薬で治す」ことだけでなく「食で予防する」ことも大事だと考えるようになり、大学院では食品の機能性を研究している研究室に入りました。
そして現在は食品メーカーの研究員として人々の「おいしさと健康」に貢献することを目標に働いています。高校生の皆さんは、今後の進路を不安に思ったり迷ったりすることもあると思います。ぜひ、周りの人に助けてもらいながら、他でもない自分の思いを大事にしてこれからの進路を考えてもらえたらと思います。
【寄稿:2021年3月】 ※所属は取材当時。